さて、ヘイローのない大人…先生とやらと
邂逅できたのは良かったが、結局依頼は未達となって報酬もパーになってしまった。
一応あの場に残り報酬を受け取れた奴らもいたようだがその大半がヘイロー持ちの生徒崩れ共だったため、
ロボット共や俺は不満タラタラだ。
しかし弾丸数発でくたばる俺たちがワカモに抗議なんざ出来る訳もないし、
何より、インカムを渡された時説明を受けた上で仕事を引き受けたのは俺たちだ、今回の報酬は諦めるしかない。
…もしかしたら、ワカモはこれを狙って報酬を高めに設定していたのかもしれないな。
本気で人員が欲しいならロボット共や獣人なんかはなから募集の対象から外した方がいい、確実にヘイロー持ち共よりか弱いからな…いやーやっちまったな。
先生というイレギュラーがあったのを考慮に入れても、
今回はかなり考え無しで仕事を受けてしまった。
俺もヤキがまわったかね…。
まあいい、悔やんでも一円にもならない。
それよりも、目下の問題を解決しなくてはならない。
そう、金だ。
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「なぁ、なんかいい仕事ねぇのかよ。」
『職安』に来てそうそう俺は開口一番に受付嬢にそう聞きに行った。
「そうですね…アシヤ様好みの依頼はないですね。」
そう言って受付嬢はにっこりと笑顔を浮かべながら
仕事の依頼の一覧を見せてきた。
…ああーマジか…見事に戦闘系ばっかだな…。
ブラックマーケットの仕事は本当に色々な種類の仕事がある。
運び屋、殴り屋、殺し屋に、モノ探しや護衛に傭兵。
情報屋の手伝いなんてのものまで。
俺は基本的に運び屋を中心に戦闘系以外の仕事をやっている。
アシヤ、なんて偽名もそこから来てたりするんだが…。
なんとそんな俺の受けていた仕事が姿を消し戦闘系ばかりになっているではないか。
…いや、実の所そうなるだろうと言う予測は付いていたのだ。
ここ最近必死に金を集めようとしていたのは治安の悪化を察知したからだ。
治安が悪化すると企業共や個人からの戦闘系の依頼が増えてその他の仕事は減少する。
だからさっさと乗り切るための資金を稼いでおきたかったんだが…そうか、手遅れか…。
「仕方ない…戦闘アリでいいのはあるかい?」
「それでしたら、依頼主様から、アシヤ様へ是非という依頼がございます。」
渡された依頼書には依頼人としてカイザーPMC名前が記されていた。
なるほど…カイザーからか…。
カイザー、ことブラックマーケットにおいて最もよく見る名前の大企業だろう。
カイザーからは悪事の実行役、足のつかない人員としてブラックマーケットに多くの仕事が回される。
俺も含めてブラックマーケットに住んでるやつなら一度くらいはカイザーからの依頼を受けたことがあるはずだ。
もちろん、相手は大人だ。契約書をよく読み、仕事を見極めなければ直ぐにカモにされる。
ただ、基本的にそこら辺をしっかりしている…ブラックマーケットに長く住んでるようなやつらは、油断はできないが、仕事を多く回してくれる依頼人として向こうさんとビジネスライクな関係を保っている。
かくいう俺もカイザーという企業は割と接触が多い。
というのも、俺は逃げ足を自慢にするだけあって車の運転にもかなり覚えがある。
そこでカイザーからたまに運転手として運び屋の依頼を受けるのだ。
あくまで運ぶだけで受け取り、受け渡しなんかはあっちの企業のやつがやるから何運んでんだか知らないが、アビドス砂漠の中を素早く運転出来るやつが少ないらしく、
向こうの担当者が不調の時に代打という形でアビドスからブラックマーケットまでの運搬の依頼が来る。
もちろん他にも色々受けてはいるのだが…やはり定期的に受けるカイザーPMCとの関係がいちばん深いだろうな。
さてそんなお得意様のカイザーPMCからの仕事な訳だが…。
運転スキルがあることが必須でかつ戦闘の可能性が高いこと以外詳しい仕事内容は書かれていない。
この依頼書だけじゃ、まだ受けるかどうかすら決められんな。
…そこまで信頼のできない相手という訳でもないしな。
こちらから出向いて話を伺った方がいいだろう。
そういうわけで、俺は依頼書に「興味のあるものはここへ」と言う言葉と共に書かれていた住所へと向かった。
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ブラックマーケットの一角。
カイザーコーポレーションの持つ多数の警備を置いた目立たないがそこそこの大きさをしたコンクリート製のビル。
大量の私兵を抱えるカイザーに対して喧嘩売るようなバカはブラックマーケットといえどもそうそういないが、用心深いのかマーケットガードの巡回ルート近辺に構えられている。
そんな建物の1部屋に俺はいた。
「…ふむ、よく来てくれたな。」
尊大で傲慢な様子、しかし隙のない態度。
最新型の機体を携えた見覚えのあるロボット。
カイザーPMC理事その人だ。
「ああどうも…いつもお世話になっております。」
上手いとは言えないができる限り敬語でいく、
こういう場じゃそうしないと舐められるからな。
「いやなに。アビドスでのドライバーの件はこちらとしても助かっているのでな、今後もよろしく頼むよ。」
「いえいえこちらこそ、どうぞご贔屓に…。」
そんな軽い挨拶もそこそこに本題に入る。
「さて、今回の依頼についての説明だったな、まずは報酬からだが…」
「50万でどうだ、不満があれば応じよう。」
50万!?戦闘があるとはいえさすがに多すぎる…
まず間違いなく訳ありだろうな、大丈夫か?これ。
「不満…という訳では無いのですが…少々私としては貰いすぎではないかな…と…。」
「いやいやいや、我々はそれだけ君のことを買っているのだよ、砂嵐による視界不良や治安の悪さが目立つアビドス砂漠からの長距離の輸送作業をただの1度を失敗しなかった君の腕はそれだけの価値がある、もっと自信を持つといい。」
……うーんどうもおべっかっぽいが一旦乗っかるか。
「ありがとうございます、そう言っていただけて大変光栄です。」
俺がそういうと理事はファイルを取り出す。
世辞は程々に仕事の話に行きたいようだ。
「ああ…それで仕事の内容なんだが……」
「アビドスでちょっとしたモノの運搬をやってもらいたい、もちろんドライバーとして。」
モノの運搬ねぇ…まあドライバーとしての腕を求められてるのは確かだろうが…どうも怪しいな。
「なるほど…それで、その…依頼書にあった戦闘というのは…?」
理事のアイアンマスクがかすかに動いた気がする。
「いやなに、大したことでは無いのだがね、運搬中にモノが暴れるかもしれない…という程度のことで…
君もブラックマーケットに居て長いなら、分かるだろう?」
ああ…誘拐か。
しかし、ブラックマーケットでは割と見かけるが
アビドス…生徒の管理下にある自治区でやるのはなかなかの勇者だな。一応大企業だろうに大丈夫なのか?
いや、大丈夫じゃないから俺達に下手人を任せるのかだろうが…。
…しかしいくらアビドス自治区での誘拐とはいえそれでもまだ報酬が高すぎる。
わざわざ理事が出っ張って来てるのも怪しいしな…。
…もしや、これ誘拐するのって生徒か…?
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キヴォトスにおいて、大人であっても手出しができない存在がいる。
そう、生徒だ。彼女らはそもそもの肉体がヘイローのおかげでとんでもなく強力だ。
また、彼女らはそれぞれの自治区の学園に守られており、彼女らに対する誘拐や殺害といった行為はその自治区全体を敵に回しかねない非常にリスクの高い行為になる。
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…こいつマジか…勇者がすぎるぜまったく。
さっきまで俺を持ち上げてたのはいい気にさせてそのままこれを引き受けさせようとしてたからか…。
というかこれ理事は本当に平気なのか…?
俺が驚愕と脂汗を浮かべながら理事の方を見ると
気づいたかと言わんばかりの顔でこちらを見ていた。
「あの…理事…これは、純粋な心配から申し上げるのですが…本当に…大丈夫なんですか…?」
「…ふん、明日も知れんブラックマーケットの住人がこの私に対して大丈夫か、だと?不愉快極まりないな。」
「説明はこれ以上しない、受けるのか、受けないのか、さっさと決めろ!」
態度を一変させた理事は焦りを見せながら俺に迫ってくる。
まぁこんなリスキーなことやらないといけないくらいに向こうも大変なのかもしれんな、少なくとも俺の知るいつもの理事ならこんなリスクに塗れた行為に手を染めはしない。
「…私の考えが正しければ、失敗する可能性もリスクも高い。そうなると成功報酬が50万というのは厳しいですね…。」
「成功で、100万。失敗しても攫った時点で50万なら引き受けます。」
学園の生徒の誘拐、いかに住まいがブラックマーケットの俺といえどそれなりにリスクが伴う。
相場としても口止め料も含めて成功報酬50万は安すぎる。
もちろん理事もブラックマーケットで長く商売をやっているわけだからそんなことはわかっている、あの焦り様だ、時間もないだろうし恐らくは…。
「……チッ。お前は他の馬鹿どもと違って目ざといのが面倒だ。いいだろう、どうせはした金だ、払ってやろうじゃないか。」
「ありがとうございます。」
やはり呑んだ。
理事は条件について詳細に記した契約書を印刷し始める。
「その代わり仕事はきっちりしてもらう!お前の他にヘルメット団の連中にも声をかけている。現場では上手く連携をとって仕事に取り組め!」
「了解しました。ご期待に添えるよう尽力致します。」
…リスクは高いが運転が中心なら威力の弱いリボルバーしか持っていない俺でも何とかなりそうだし、報酬も最低で50万もある、割といい仕事だろう。
ちなみにだが、基本的に、仕事内容や報酬が少し怪しかったとしてもあまり突っ込まない方がいい。
なんせブラックマーケットなんざ戸籍も身元もないやつらの集まりだ、欲や正義感で突っかかって消されることなんて珍しくない。あとは正当な報酬として一人だけ大金を貰っちまうと他の奴らから襲われたりすることも多々ある。
ここで長生きするコツは疑問を持たずに出る杭にならず、愚直にバカになって仕事をすることだ。
今回は個室だったし、向こうも俺に対していちいち、気にかけていられるような状況では無さそうだった…というか妙に焦っていたから少し抑え目に報酬をあげさせてもらったがね。
それでも金に困っていなければやっていなかっただろう。
それにしても、まさかあの理事が
失脚も近いかもしれない。
まあその時はブラックマーケットの仲間として迎え入れてやるとするかな…。
アンケートのご協力ありがとうございました。
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