街作ってたら国出来て防衛戦争始まった~その者がもつ力の名はTheoTown~ 作:luckytown
今日という日は素晴らしい日だ。
いつだって良い日ではあるが、少し方向性が違う。
なにせ街に名前が付くのだ!
最初の村、というか町も海岸に新たに作った街もちゃんとした名前がなかった。テオタウンという名はあるがこれは僕達の街の全てを表す名称だ。言ってみれば日本でいう県のようなものか?とにかくそういう感じだ。
というわけで、今は最初の町の命名式典の最中である。
この瞬間、僕がこの町の名前を宣言する。
ファーストビレッジタウン
これがこの町の名前になった。
とても安直な名前かもしれないが、文字で見るとそんなに陳腐には見えないし、始まりの町として良い名前だろう、住民も喜んでいる様だし大丈夫そうだ。
そうしてこの町が出来てからの4週間を振り返るビデオが再生され、式典は終了し、住民はパンとビールを飲んでワイワイしだした。
市長はまだ仕事があるのでビールは飲めなかった。さて次は海岸の新たな街の命名をしに行く、完成した電車を使って。
電車、これも初めて運行する為、記念式典がある。
先頭の1号車を市長と職員が貸し切り、新聞やラジオなどのメディアがそれを囲んで記録に残す努力をしている。
テープカットなんかしちゃって電車に一番に入り込む。
後方の車両には市民が乗り込んでいく。
1号車に居るのは僕とウィリアムさん達や春風さん……
「あれ?なんでいるんですか?春風さん!?」
「えぇ〜と、なんでって言われても〜、私もよく分かんなくてぇ〜」
「市長の友人ですし、一緒にこの素晴らしい日を共にするのがいいと思いまして、私の独断です」
春風さんも僕も状況をつかめていない中、ウィリアムさんが犯行声明を宣言した。
「聞いてないよ!」
「はい、先ほど駅で春風さんを見かけまして、そこで思いついた事ですので」
「即断独断先行が過ぎるよ!」
「私としては良い案だと思ったのですが、すみません」
びっくりしてまだ考えがまとまらない、そんな事を思っている間に電車のドアは閉まり発車していく。
恐らく新聞の記者だろうか?カメラを持ってこちらを写している。写真撮られたわこれ、え?新聞に載るの?
「し、新聞に撮られましたよ?写真!」
「ご心配ありません、私がメディアに彼女が市長の友人と正しく説明致しますので、翌日の新聞が祝福で満たされることはありません」
「祝福って言っちゃってるよ!?僕が心配してることめっちゃ理解してるじゃん!」
「落ち着いてよ市長〜、私もちゃんと友人だって言うし皆分かってくれるよ!」
春風さんに言われて僕は少し落ち着いた。考えをまとめずにウィリアムさんに聞き過ぎた、落ち着いて考えを伝えよう。
「分かりました、ウィリアムさんもう少し詳しく説明して頂けませんか?」
「はい、先ほど私は春風さんを見かけて咄嗟に行動したと言いましたが、そう動く理由は前からあったのです」
「それは何なんですか?」
「市長は知らないと思われますが、市民の中では市長がどうやらキャンピングカーに住んでいるという事、そして女性が何度か訪れて長い間滞在しているという情報が広がっていたんです」
「……」
僕は言葉が出なかった、確かに隣人と挨拶はすれど、深い交流は忙しくて出来ていなかった、その状態でその光景を見ればそう思ってしまうものだろう。
「町の規模もそれほど大きくないので、噂が事実だと浸透するまでに時間は掛かりませんでした。今、市長には"仲の良い女性"がいるという事は周知の事実です」
「え、えーとつまり私は市長の彼女って皆に思われてるの!?」
「…そうでしょうね」
「ありゃ〜そういえばお店に結構お客さんが来ると思ったら、もしかしてそういう事〜?」
このまま誤解されるのはまずい!ウィリアムさんの行動のおかげでそう誤解されるかと思ったけど、その前からしっかり誤解されてるとは!
「ど、どうにかできないですか!?」
「ですから市長、お任せください私が春風さんが市長の友人だと言うことを説明します」
「そ、それなら良いんですが…」
まだ心配は拭えないが、自分では良い方法が思いつかない、ここはウィリアムさんを信じて任せてみよう。
でも、もし失敗しても市長だし問題ないか~、……引きずり降ろされたりしないよね?市長の座から、
いやいや僕は市長としての役目を全うして皆が幸せに生活できるように頑張るんだし、その上で認められなかったらしょうがないだけだ。そう、僕としてはそう誤解されたところで止まりはしない、ただ春風さんが大丈夫かが心配なんだ。
「まあ~ここはウィリアムさんに任せようよ!市長!」
「春風さん、誤解されるのは迷惑じゃないですか?」
「全然大丈夫だよ、お店のお客さんも増えてるし勘違いのおかげならそれはそれで良いかなって思う。それより見てよこの景色~」
「景色?」
春風さんがそう言って向いたのは電車の外に見える草原だった。
ファーストビレッジタウンから海岸の都市に向かう線路の道中にはまだ何もない、あるといっても線路の西側にある道路だけ、彼女が見ているのは東側だった。
そこに見えるは広い、ただ広い草原。日に照らされた緑と曇に遮られた薄暗い緑のコントラストがとても美しく見えた。
「綺麗ですね」
「でしょ〜?きっと皆この景色に釘付けになるよ!」
「そうですね、すごくいい景色ですから、きっとそうなります」
ウィリアムさん達も外の景色を楽しんでいる様に見える。後方車両に乗っている乗客もそうだろう。
僕は改めてここに来てから初めて実際に見る壮大な景色の凄さを感じた、前の世界でいつも見る風景とは全く違う、テレビの中にしか見たことがなかったような世界。
ここで僕は思った事がある、今見ているこの場所もいずれはいつも見る街の風景に変わる、例えば住宅の郊外とかだろう。つまりこの景色はいつか終わる有限のものだということだ。
「春風さん、写真でも撮りませんか?」
「え?」
「いつかはここも市街地になったりしてしまうでしょうし、この景色は今だけのものです。あとで振り返れるように今の景色を記録しておきましょう」
「そ、そうだね~良いと思うよ!」
少し間があった気がするけど、賛同してもらえたようだ。よし、自分のスマホでこの景色を撮ろう!
そうしてパシャっと音がして、電子に分解された景色は01に変わり保存された。学校でちょっと習ったけど、不思議だな~という思いは今も消えない。そんなに頻繁に写真を撮ることも今までなかったので、そう感慨深く思っているとウィリアムさんに呼ばれた。
「市長、こちらを向いて下さい」
そう言うウィリアムさんの横には両手にカメラを持った人がいた。文化課の
つまり初対面という事で、僕が一番にするべきことは質問ではなく挨拶だ。
「初めまして古木さん、写真を撮ってくれるんですか?」
「はい市長、この街の歴史を記録し後世に残すためにここで是非撮らせてください」
「市長、スマホは個人用としては良いですが、市の歴史としての写真を撮るならカメラにしましょう」
ウィリアムさんが後付けでそう言う、ぐうの音も出ない意見だ。流石だと思う、スマホに撮ったものは個人用にしておこう。
「それじゃあ行きますよ!ほら春風さんも寄ってよって!」
「ん?」
「はい、チーズ!…バッチリ撮れましたよ、お二人ともいい表情です!」
「あれ?私だけじゃないんですか!?」
僕と後ろの草原を撮るものだと思っていたが、隣に春風さんが居る状態で撮るとは予想外だった、それ市の記録に残していいの?
「市長だけの公式写真は今から撮ります、春風さんすみませんがこっち側に移って頂いて…ありがとうございます」
「写真どんな感じか見せてもらえますか?」
「良いですよ、こちらです」
そう言って古木さんの方に回った春風さんは写真を見せてもらった。その瞬間の口角の上がり方はとても印象的に見えた。
「凄い良い写真〜!市長も私も顔バッチリ!」
「さて、市長だけの写真を撮ったあとは他の職員も入ってくださいね」
言われるがままに写真を撮った後は電車が着くまで自由時間、ウィリアムさんやノーズさん達が遠くで事務的な話しをしている。
僕は春風さんと流れる景色を眺めていた。
「街が見えてきたね市長」
「そうですね」
「この街の名前は何ていうの?」
「到着してから発表しますから楽しみにしといてください」
「え〜こっそり教えてくれない?」
一瞬大丈夫かなと心配したが春風さんだし問題ないと思い耳元でこっそり伝えた。
聞いた春風さんはいい名前だねと小声で言ってくれた。
一晩考えた甲斐があったとその時思ったのだ。
海岸の街に到着し、会場で一人では思い付けそうにない演説をしたのち、街の名前を発表し幕を閉じた。
ビーチオブホープ
それがこの街の名前、希望の浜辺という意味だ。
すんません遅れました、ごめんちゃい