街作ってたら国出来て防衛戦争始まった~その者がもつ力の名はTheoTown~ 作:luckytown
心地よいそよ風が吹いているのを肌で感じる。
顔に当たるこの暖かさは日差しだろうか?
目を開ける、青い空が広がっている。どうやら僕は仰向けに寝っ転がっているらしい。
起き上がって辺りを見渡す。日に照らされた緑が辺り一面を覆っている。
「草原だ」
遠くを眺めれば林があったり山が見える。人の気配は無く建物一つも無い自然の平地だった。
これが異世界、サンタさんに行く世界の事は聞いてなかったけど、物騒なところじゃなくて良かった。少なくともこの周辺は人の手が入っていないような感じがする。
純粋な自然の平地とか知らないけど、多分これがそうなんだろう。
人の手が入った街の中で過ごしてきた僕にはとても新鮮な景色だった。
うん、サンタさんの事も転生も全部ちゃんと覚えてる。
体も……大丈夫そうだ、僕は一度死んでるんだよな、だからこれはこの世界での新しい体。無理せずに元気に過ごそう!その為にもまずは、
サンタさんがくれた特別な力、TheoTownを試してみないとね。TheoTownのゲームについては毎日やっているから分かるけど、それがどんな力になっているか確かめなければ前に進まない。
えーっと、僕のスマホは…………あ……
ここに来て重大な事実に気付いてしまった。移動してきたのは魂だけ、スマホは病院で遺品になっている!!!
「あぁ~そんな〜〜〜、僕の今まで作ってきた都市がもう見れないなんて……」
かなりショックだ、体がそのままだから気付かなかった、しかしそれならばこそ確かめなければ!TheoTownの力を!!……スマホないけどどうやればいいんだろ…………
「あー、えーー、TheoT」
ゲーム名を言う必要があるのかと思って、声に出して言おうとしたら、視界に見慣れたUIが映り込んだ。それもデカデカと、ディスプレイのように空中に浮かんでいる。試しに、顔を振ってみるも、あんまり動かない、体の向きを変えたら追従して正面に来た。UIのない半透明な部分を手で触れようとしても通り過ぎた。
なるほどこんな感じか、と思いつつ資金が表示されている場所を見る、∞だった。これは凄い!まさか難易度がサンドボックスだなんて!赤字だろうが何でも建築し放題じゃないか!本来であれば、道路を建築する時も施設を建てる時も地区を制定する時だって資金を使うのに、資金が無限ならいくら建てても良いし、維持費も気にしなくて良い!サンドボックスは田舎を再現する時とかしか使って無かったけど、資金を気にしなくて良いのは本当に楽だ。
「……よし」
意を決してハンマーのアイコンの建築ボタンに手を伸ばす、ボタンが押されればより多くの項目がアイコンと文字を引っ提げ表れる。
地形、交通、地区、公共機関、供給、公共施設、ランドマーク、災害、機関、といったようにやや危なげな項目もあるがそれらが一列に並んでいる。その下には、地区名、建物を移動、スポイト、という項目の便利な機能がある。
この一列に並んでいる項目の中に建物があったり、より細かい項目があるのだ。
今の僕のお目当ては地区の項目にある。地区を選択し、
住宅、商業、工業、密集した住宅地区、密集した商業地区、密集した工業地区、農業、港、マニュアル
と表示される。これらの地区を制定してそれに相応した建物が自然に建っていくのだ。だが、僕が今選ぼうとしているのはそれのどれでもない一番最後にあるマニュアルだった。マニュアルを押せば、
住 建築物 Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ 商 建築物 Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ 工 建築物 Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ
と細かな項目が表示される。
僕はそれの商 建築物 Ⅰ に用がある。
住宅や商業、工業の建築物はどれも三段階のレベルに分けられている。分かりやすく住宅で例えると、貧しい住民、一般住民、金持ち住民という区別だ。
商 建築物 Ⅰ の項目の中に入れば、そこに表示されたのは様々な商業施設のドット絵だ。ここに来てようやく建築物を選ぶ所まできた。そう、マニュアルとは自分で指定した建築物を建てれる非常に便利な機能なのだ!
本来であれば、気まま勝手に建っていくが、同じ建物が乱立する事もしばしばある。その解決策としてマニュアル建築は妥当だろう。
「頼むからあってくれよ…………スマホ〜!」
マニュアル建築を開いた理由はこれにある。商業施設のレベル1にはスマホが売ってそうなドット絵の建物があるのだ。商業地区制定直後は、それが乱立することもあるのでよく覚えている。
そうして建てる場所を選び確定ボタンを押す。
ッパ!
そんな乾いた音と共に目の前に建造物が出現した。
その姿はさながら日本の豆腐建築のコンビニだ、それと違う場所があるとするならば、屋上にある青を基調とした大きな看板だろう。この店のことを表している標識なのだろう。有名なハンバーガー屋のマークと同じようなものだろう。
「実寸大で見ると凄い大きな看板だな、これは目立つぞ…そんでもってやっぱりこれが正解だったな」
看板のマークはドット絵の時とは違い、鮮明でなんのマークか直ぐに分かった。これでスマホが手に入る!
「いらっしゃいませ〜」
「……すいませんスマホを買いたくて」
「かしこまりました、こちらに展示されてる物をご自由にご覧ください」
僕は案内されたところに行きスマホを眺める。ここでスマホを眺めながら考えることといえば、どんな見た目の奴が良いかな〜?とか色はどうしよう?とかスペックはどれくらいで〜というような考えが頭を巡るのが妥当だろうが、今はとてもそれどころじゃなく、別の考えが頭を駆け巡っていた!
……え?店員さんいる………………えっ、店ごとスポーン!?
完全に予想外だ!!!確かにTheoTownでは外部の高速道路から住民が移住してくる方式じゃなくて、住宅が建つといつの間にかそこに居る感じだったけど、まさか人がいきなり現れるなんて!!
「お悩みの様でしたら私がお手伝い致しましょうか?」
「あ、いいですか?」
「いいですよ!それにとても考え込んでいるご様子でしたので」
「…そうですね、めっちゃ悩んでます」
「では私と一緒に相性抜群のものを選んでしまいましょう!まずは好きな色から!」
「色は…………」
なんかめっちゃフランクに話し掛けてくるじゃんこの店員、さっきまで考えてたこと吹っ飛んじゃったよ。
とにかく、スマホを選ぶ事に集中だ、考えるのはその後にしよう。
「色は白で〜ゲームをしたいからサイズは少し大きめ、スペックはどうする?」
「スペックは、容量が大きい方が良いですね」
「大きい容量ね、了解〜」
「あ!あと、落としても壊れにくい頑丈な奴が良いですねデータが吹き飛んだら困りますし」
「ふんふん、なるほどなるほど〜〜あっ!これとか如何ですか〜?少し大きめな代わりに容量が大きく、高耐久で白色!ぴったりじゃないですか!?」
「そうですね、これにします!」
「分かりました!それでは商品ご用意致しますので少々お待ちくださ〜い♪」
すっかり仲良くなってしまった、歳が近いからだろうか?恐らくそんなに変わらないと思うのだが……
それにしても…………人だ。
お人形とかそういうのじゃない、話してみて感じた、紛れもない人だ、それを…僕が…生み出した…………
TheoTown……サンタさんから貰ったこの力は想像以上だ…
安易に使って良いものなのだろうか??
そもそも僕はどういうふうに考えてたんだ!!街を作る力を授かって街を作っても、人が居ないとどうにもならないじゃないか!!異世界の現地の人に住んでもらおうとでも考えてたのか!?……考えが甘かった、いや全く考えてなかったと言ってもいい!
さっきまで親しく話していた店員さんを見ながら、自らがもつ力の凄さに恐れ慄いていた。でももう時計の針は動き出していて、この世界での僕の運命が止まることなく動き始めていた。