機動戦士ガンダム BB戦士 SD戦国伝 ノベライズ 〜コミックワールド武者から大将軍へ!〜 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
地響きが、天宮(アメノミヤ)の平原を波打たせていた。
それは怒武(ドム)のホバー音とも、怒雷仙(ドライセン)の突進とも違う。一歩踏み出すごとに、大地の骨が軋むような、絶対的な質量の足音であった。
「……ム……ムム…………ガ……アア……ッ!!」
霧の向こうから現れたその姿に、頑駄無軍団の斥候たちは息を呑んだ。
武者斎胡頑駄無(ムシャサイコガンダム)。
かつては七人衆の一人として、その怪力を平和のために振るっていた巨漢。だが今、彼の顔面には、禍々しい角が生えた「洗脳の面」が深く食い込んでいる。
瞳からは理性が消え、ただ破壊衝動に突き動かされる「生ける要塞」と化していた。
「斎胡! 貴様、本当に我らを忘れたのか!」
駆けつけたのは、武者頑駄無と駄舞留精太だ。
だが、斎胡は答えない。ただ、背負った巨大な棍棒『金剛棍(こんごうこん)』を無造作に振り回した。
ブンッ! と空気を引き裂く音が響いた直後、頑駄無たちがいた地面がクレーターのように陥没する。
「危ないところだった……。おい武者、こいつは本気だぞ! 手を加減してたらこっちの命がいくつあっても足りん!」
駄舞留精太が叫びながら、大目牙砲(おおめがほう)を構える。
しかし、斎胡の脅威は怪力だけではなかった。
「……ム……行け……!」
斎胡が唸ると、彼の傍らから小型の武者たちが飛び出した。
彼の相棒であり、偵察・工作を担う守護獣『武者バイソン』。そして、それと合体・分離する特殊なカラクリ軍団だ。
巨体でありながら、緻密な連携。
斎胡は金剛棍を大地に突き立てると、肩の『地対地ミサイル』を一斉に発射した。
ドォォォォォンッ!!
「ぐわっ! 嘘だろ、あの弾幕……俺の火力より上かよ!」
爆煙に巻かれる駄舞留精太。
斎胡は止まらない。彼はさらに巨大な力を解放しようとしていた。
「武者要塞(フォートレス)、変形……ッ!」
ガガガガッ! と重苦しい金属音が響き、斎胡の巨体がさらに横へと広がる。
手足が収納され、全身が火器の塊となった移動要塞。
この姿になった斎胡は、もはや一個の軍隊に匹敵する。平原の村々を、その主砲一撃で地図から消し去らんとする構えだ。
「……目を覚ませ、斎胡!」
武者頑駄無が、爆風を突き抜けて斎胡の懐に飛び込む。
刀は抜かない。彼は鞘のまま、斎胡の洗脳マスクを叩き割ろうと跳躍した。
「お前は闇に屈するような漢ではないはずだ! 思い出せ、我らと共に天宮を駆けた日々を!」
斎胡の赤いモノアイが、一瞬だけ激しく明滅した。
「……ム…………ガ……ムシャ……?」
動きが止まる。
だが、マスクから放たれた闇の電流が、再び彼の思考を塗りつぶしていく。
「アガガアアアァァァッ!!」
咆哮と共に放たれた衝撃波が、武者を弾き飛ばした。
斎胡は再び、重い足音を立てて闇軍団の陣へと引き返していく。その巨大な背中は、かつてよりもずっと寂しく、重苦しく見えた。
「斎胡……」
土煙の中で立ち上がった武者頑駄無は、握りしめた拳を震わせた。
「待っていろ。必ず、その仮面を叩き壊してやる。お前を再び、七人衆の列に戻してみせる!」
巨人の咆哮が、遠く夜の闇に消えていく。
仲間を救うための、最も哀しく、最も熱い戦いが始まろうとしていた。