機動戦士ガンダム BB戦士 SD戦国伝 ノベライズ 〜コミックワールド武者から大将軍へ!〜 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
その日、天宮(アメノミヤ)の空から色が消えた。
不気味な紫の雲が太陽を覆い隠し、大地には死んだ魚の腹のような、濁った光だけが降り注いでいた。
頑駄無軍団の本拠地を目前にした荒野。そこに、かつてない重圧――「殺気」を通り越した「虚無」が立ち込める。
「……来た。ついに、現れたか」
武者頑駄無のその声は、かすかに震えていた。
地平線の向こうから、黒い霧をたなびかせて歩いてくる影がある。
全身を刺々しい漆黒の鎧――『暗黒のかけら』で固め、背中には巨大な砲を背負った魔人。
闇将軍。
一歩、彼が足を進めるごとに、周囲の草木は一瞬で枯れ果て、大地は腐ったように黒ずんでいく。
「頑駄無よ……。貴様らの信じる『光』など、この深淵の前では瞬きほどの価値もない」
闇将軍が口を開くと、それは声というよりも、数千の亡霊が同時に啜り泣くような不快な響きとなって空気を震わせた。
彼は手にした巨大な『暗黒剣』を、無造作に、しかし絶対的な重さで振り下ろした。
ズドォォォォォンッ!!
ただの一振り。それだけで、頑駄無軍団の最前列を固めていた頑丈な盾が、紙細工のように粉砕された。爆発さえ起きない。ただ、闇に呑み込まれるようにして、物質が消滅していくのだ。
「馬鹿な……。これが、闇の力だというのか!」
精太の叫び。摩亜屈の射撃。
だが、放たれた矢も弾丸も、闇将軍の周囲に展開するどす黒いオーラに触れた瞬間、力を失って地面に転がった。
「無駄だ。我は闇、我は虚無。実体なき者に、鉄の礫(つぶて)は届かぬ」
闇将軍が背中の『大目牙暗黒砲(オメガあんこくほう)』をせり出させる。
銃口に凝縮されるのは、この世の光をすべて吸い取ったかのような、禍々しい紫の光球。
「消えよ。光の残滓(ざんし)と共に」
放たれた暗黒の一撃。
それは直撃せずとも、掠めただけで武者たちの鎧を侵食し、体力を奪っていく。七人衆が総出で立ち向かってもなお、闇将軍という巨大な壁は揺らぎさえしなかった。
だが、武者頑駄無は見た。
激しい戦いの中で、闇将軍の兜の奥に光るモノアイが、一瞬だけ悲しげに揺れたのを。
その鎧の奥に潜むのは、本当に邪悪な意思だけなのか。
「闇将軍……いや、殺駆頭(ザクト)! 貴様の魂まで闇に売ったわけではあるまい!」
「……黙れ。我が名は闇将軍。天宮を支配し、永遠の闇を統べる者なり!」
闇将軍の咆哮と共に、さらに深い闇が戦場を覆い尽くす。
圧倒的な絶望。
しかし、その中心で武者たちの闘志はまだ消えてはいなかった。
最凶の敵を前に、七人衆の絆がかつてないほどに強く、白く輝き始める。
天宮の命運を懸けた、本当の戦いが幕を開けた。