機動戦士ガンダム BB戦士 SD戦国伝 ノベライズ 〜コミックワールド武者から大将軍へ!〜   作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった

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深淵の主、闇皇帝の胎動(45 闇皇帝)

 闇将軍が倒れ、戦場に勝利の余韻が漂いかけたその時であった。

 静寂は、歓喜ではなく「凍り付くような恐怖」によってもたらされた。

 

 砕け散った『暗黒のかけら』が、意志を持つかのように蠢き、一点へと集束していく。大地は悲鳴を上げて割れ、空は毒々しい紫黒色の雷鳴と共に、まるで世界そのものが泣き叫んでいるかのようであった。

 

「……フフフ。光の増幅は、同時に闇の深度を深めるものよ」

 

 次元の裂け目から現れたのは、これまでの闇軍団の誰とも似ていない異形の怪物。

 闇皇帝。

 

 巨大な双角、不気味に蠢く蝙蝠のような翼、そして全身の隙間から立ち昇る、物質を腐食させ、見る者の精神を蝕む「黒い瘴気」。

 彼は武士でもなければ、兵でもない。天宮という世界、その理(ことわり)そのものを喰らい尽くし、永遠の静寂へと塗り潰すために現れた、虚無の権化であった。

 

「貴様が……すべての黒幕か! 殺生石を操り、天宮を血に染めた元凶め!」

 二代目大将軍が、鳳凰の翼を大きく広げ、日輪の兜を輝かせて叫ぶ。その背後に控える五人衆たちも、疲弊した身体に鞭打ち、武器を構えた。

 

 しかし、闇皇帝は嘲笑うかのように、その背中の巨大な触手を蠢かせた。

「黒幕……? 矮小なる言葉よ。私は闇。光あるところに常に潜み、すべての熱が消え果て、静止する刻(とき)を待つ者なり。大将軍よ、お前の輝きが強ければ強いほど、私の腹は空くのだ」

 

 闇皇帝がその両腕――暗黒の魔器『黒星迫(ブラックスター)』を突き出す。

 放たれたのは、熱量さえ奪い去る絶対零度の衝撃。大将軍の放つ聖なる太陽の炎と激突し、辺り一帯は白と黒のエネルギーがせめぎ合う、現世(うつしよ)とは思えぬ地獄絵図と化した。

 

「グッ……なんという力だ! これまでの闇将軍や幹部どもとは、存在の格が違いすぎる!」

 精太が、摩亜屈が、仲間たちが必死に援護の攻撃を叩き込む。だが、闇皇帝の鎧には傷一つ付かない。それどころか、彼は受けた攻撃の法力を自らの糧にするかのように、さらに禍々しく巨大化していく。

 

「見せてやろう。貴様らの希望を、一瞬で絶望へ塗り替える真の姿をな」

 

 ――闇皇帝・真の姿(モンスターモード)!!

 

 ガガガガッ! と肉と鋼が軋み、骨が組み変わる不吉な音が戦場に響き渡る。

 闇皇帝の身体が大きく反り返り、人型を捨て、巨大な四本脚の魔獣へと変貌していく。首は蛇のように伸び、翼は天を覆う帆となって広がった。そして、その胸部が裂けるように開き、巨大な「暗黒の目」が剥き出しになる。

 その瞳に映ったのは、天宮の命運。そして、震える武者たちの姿であった。

 

「天宮の民よ、光を捨てよ。苦しみも、喜びも、争いもない……安らかなる無へと還るのだ」

 

 闇皇帝の口から放たれた『黒星砲』が、大将軍の盾を真っ赤に熱し、周囲の空間を物理的に歪ませる。

 パキィィィィィンッ!

 大将軍の白い鎧に、初めて深い亀裂が走った。衝撃波だけで、周囲の山々が砂のように崩れ去っていく。

 

「負けるわけには……いかない! 私の後ろには、明日の太陽を待つ民がいる! 信じ合う仲間が、この命を支えているんだ!」

 

 絶望的な力の差。抗うことすら許されぬほどの虚無。

 しかし、大将軍の瞳には、まだ消えぬ黄金の光が宿っていた。

 闇皇帝という絶対的な「死」を前にして、七人衆の絆は今、限界を超えた「奇跡」を呼び起こそうとしていた。

 

 天宮の存亡を懸けた、最後の、そして本当の戦い。

 光が闇を貫くか、闇が光を飲み込むか――。

 伝説の幕引きは、今まさに始まろうとしていた。

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