機動戦士ガンダム BB戦士 SD戦国伝 ノベライズ 〜コミックワールド武者から大将軍へ!〜 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
天宮(アーク)の国でも指折りの名家。
その血筋を引く武者精太頑駄無(ムシャゼータガンダム)は、荒野を駆ける一陣の風だった。
彼の背後には、闇軍団の執拗な追跡が迫っている。
だが、精太の表情に焦りはない。むしろ、その涼しげな目元には不敵な笑みさえ浮かんでいた。
「緒羅四恩(オラシオン)、聞こえるか。奴ら、少しは骨がありそうだ」
彼の呼びかけに応えるように、愛馬・緒羅四恩がいななき、さらに速度を上げる。
精太の纏う鎧は、武者頑駄無のそれとは対照的な、洗練された蒼と白。
背負った「覚醒(ビーム)ライフル」と、腰の「名刀・光る丸」は、彼の高貴な立ち振る舞いをより一層際立たせていた。
追撃してくるのは、闇軍団の機動部隊。
「逃がさんぞ、精太! お前の首は、殺駆頭(ザクト)様への最高の手土産だ!」
雑魚兵たちが騎馬を飛ばし、精太を取り囲む。四方から放たれる矢。
だが、精太は手綱を引くことさえしない。
「無粋だな。私の速さに、ついてこられると思っているのか?」
精太は瞬時に「覚醒ライフル」を抜き放つ。
それはライフルでありながら、精太の神速の剣技と組み合わされることで、一撃必殺の狙撃へと変わる。
放たれた光条が、先頭を走る雑魚の足元を正確に貫く。
崩れ落ちる敵を置き去りにし、精太はさらに加速した。
だが、闇軍団もさるもの。行く手に立ち塞がったのは、巨大な岩壁――そして、それを背にした闇の伏兵たちだった。
「袋の鼠だ、精太! ここで終わりだ!」
前方は崖、後方は追手。絶体絶命の窮地。
しかし、精太は静かに目を閉じた。
彼の心は、愛馬・緒羅四恩の鼓動と完全に同調していた。
「……終わるのは、貴様たちの方だ。緒羅四恩、行くぞ。我ら一族に伝わる、真の姿を見せてやろう!」
その時、奇跡が起きた。
精太の鎧が光を放ち、変形を始める。
肩の装甲が、胸の飾りが、そして緒羅四恩の身体が、精太の意思と一つに溶け合っていく。
「人馬一体――ケンタウロス形態、見参!」
そこには、半人半馬の姿となった精太がいた。
重厚な武者の防御力と、駿馬の機動力。それらが完全に融合した特殊形態。
雑魚兵たちが目を見張る中、精太は大地を蹴った。
その跳躍は、もはや馬のそれではない。天空を舞う龍のごとき鋭さだ。
「はあああぁぁっ!」
空中から放たれる、名刀・光る丸の斬撃。
一閃、二閃。
闇軍団の陣形は、わずか数秒の間にズタズタに切り裂かれた。
人馬一体となった精太の前では、数による包囲網など何の意味もなさなかった。
着地した精太は、ゆっくりと元の姿に戻り、刀を鞘に収める。
背後で爆散する敵の気配を感じながら、彼は再び北の空を見上げた。
「……ふう。少し、汗をかいてしまったな」
懐から取り出したのは、一枚の古びた地図と、武者頑駄無からの伝言。
天宮の国に迫る危機。自分一人で解決できるほど、今回の闇は浅くない。
精太はそのことを、誰よりも理解していた。
「武者、待っていろ。この精太、遅れは取らん。あの男の無骨な戦いには、私の華麗な加勢が必要だろうからな」
精太は緒羅四恩の首筋を優しく撫でると、再び地平線の先へと駆け出した。
蒼き疾風が通り過ぎた後には、ただ静寂と、切り裂かれた闇の残骸だけが残されていた。
二人目の宿命が動き出す。
運命の糸は、着実に一箇所へと集まり始めていた。