機動戦士ガンダム BB戦士 SD戦国伝 ノベライズ 〜コミックワールド武者から大将軍へ!〜 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
天宮(アメノミヤ)の国でも有数の険しさを誇り、常に溶岩の熱気が立ち込める「火龍山」。その険しき麓で、大地を揺らす凄まじい衝撃音が響き渡っていた。
それは落雷の音ではない。一人の若き武者が、己の肉体だけで巨大な岩石を砕き割る音であった。
武者江須(ムシャエス)。
彼は七人衆の知将「火炎の駄舞留精太(ダブルゼータ)」の唯一の弟子である。師匠譲りの緻密な機械工学への造詣と、それ以上に師匠をも驚愕させるほどの「天性の怪力」を併せ持つ、新生五人衆きっての力自慢だ。
「よいしょぉッ! ……ふぅ、これくらいの岩が動かせなくて、師匠のような重装甲を自在に使いこなせるわけないよな」
江須が額の汗を拭ったその時、足元が激しく、不自然に揺れ動いた。
地中を食い破り、ドリルや重機を装備した闇の尖兵たちが這い出してきたのだ。新生闇軍団の土木作業部隊――彼らは火龍山の霊的エネルギーを吸い上げ、天宮を支配するための巨大な闇の要塞を築こうと企んでいた。
「なんだ、このガキは。邪魔だ、工事の邪魔をする奴はまとめて地中に埋めてしまえ!」
闇軍団の重機武者たちが、巨大なショベルや鉄球、そして禍々しいドリルを振りかざして襲いかかる。
「ガキって言うな! 僕はこれでも、天宮の平和を守る……そして、師匠の誇りを継ぐ武者なんだぞ!」
江須が懐に忍ばせた『力の玉』を強く握りしめる。主の怒りに応えるように、玉は溶岩よりも激しい真紅の輝きを放ち、彼の法力と完全に共鳴した。
「来い、僕の最高の相棒! 雷神(ライジン)ッ!!」
空の彼方から、音速を超えた衝撃波を伴って鳥型の支援メカ「雷神」が飛来する。それは江須が師匠の教えを元に、自ら組み上げた傑作機であった。
江須は力強く跳躍し、空中で雷神と激突するように重なる。
「雷神着装(ライジンチャクソウ)ッ!!」
ガキン、ガキンと重厚な鋼の音が重なり合い、雷神が分解して江須の鎧へと換装されていく。
背中には巨大な『大目牙(オメガ)狙撃砲』がそびえ立ち、その姿は一人の武者という枠を超え、まさに「歩く火薬庫」とも呼ぶべき重武装形態へと変貌した。
「逃げるなら今だよ。僕の攻撃は、僕自身でも加減が難しいんだから……!」
江須は大目牙狙撃砲の照準を固定し、法力を全開でチャージする。エネルギーが充填されるにつれ、周囲の空間が熱で歪み、火龍山のマグマさえもがその圧力に共鳴して波打つ。
「必殺! 雷鳴爆轟砲(らいめいばくごうほう)!!」
放たれた一撃は、山さえも根こそぎ揺るがす未曾有の大爆発を引き起こした。闇軍団の重機たちは一瞬で分子レベルまで分解されて鉄屑へと変わり、彼らの企んでいた要塞計画は文字通り「粉砕」された。
「……あちゃー。またやりすぎちゃったかな。師匠に『無駄弾を使うな』って怒られるかも」
江須は煙を吐く砲身を冷ましながら、ポリポリと頭をかき、分離して元の鳥型に戻った雷神の頭を優しく撫でた。
破壊の限りを尽くせるほどの強大な力を持ちながら、江須の心はどこまでも純粋で温かい。力に溺れず、その力を誰のために使うべきかを知っている。
若き『力』の継承者は、一歩ずつ、しかし確実に、敬愛する師匠・駄舞留精太の大きく逞しい背中に近づいていた。