機動戦士ガンダム BB戦士 SD戦国伝 ノベライズ 〜コミックワールド武者から大将軍へ!〜 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
かつて、父・百士貴と母・玖辺麗が戦乱の中で愛を誓い、共に歩んだと伝えられる「百花繚乱の丘」。
春の陽光を反射して輝く桜の絨毯の中、父よりもさらに鋭利で、洗練された黄金の鎧を纏った若武者が、一人静かに空を見つめていた。
武者百士鬼改(ムシャヒャクシキカイ)。
「父上は言いました。真の武士の戦いは、常に美しく、潔くなければならないと。……ですが母上は、その裏側を教えてくれました。本当に大切なものを守る時は、美しささえ捨てて『鬼』になれ、と」
彼は懐の『体の玉』をそっと撫でる。その翡翠色の輝きは、彼の強靭な肉体と法力を繋ぎ、常に研ぎ澄まされた感覚を彼に与えていた。
その時、美しき丘の静寂を、耳を劈くような金属音と新生闇軍団の飛行部隊が切り裂いた。
「ヒャッハー! 黄金の若造を見つけたぞ! その煌びやかな鎧、一枚残らず剥ぎ取って、新生闇皇帝様への献上品にしてやるぜ!」
空を覆うのは、無数の黒い影。闇軍団の飛行軽装兵たちが、死肉を漁る鴉のように降下してくる。
「……私の静寂、そしてこの丘の美しさを邪魔するとは。何よりも、その魂の形が『美しくない』な」
百士鬼改が背中の大型バックパック――「天昇翼」を大きく広げ、法力を注入する。彼は父のように地上を駆けて伊達を競うのではなく、母のように空を舞い、敵を翻弄することを選んだ。
「百士鬼改、飛翔!」
バックパックのスラスターが黄金の火を噴き、彼は垂直に上昇。闇の飛行部隊が慌てて後を追うが、百士鬼改の超抜的な機動力はその遥か上を行く。空中でコマのように鋭く反転し、二挺の『対雷威振(ツインライフル)』を流れるような動作で構えた。
「撃ち抜く。……光の速さで」
バババババッ! と、黄金の閃光が空を縦横無尽に埋め尽くした。
一発一発が正確無比に敵の動力源や急所を貫き、黒い影が次々と黒煙を上げて墜落していく。その無駄のない、冷徹なまでの射撃精度は、まさに空の「鬼」そのもの。
「おのれ、空がダメならこれでも喰らえ!」
敵の生き残りが放った巨大な鎖手裏剣を、彼は抜刀することなく、天昇翼を盾にして軽やかに弾き飛ばした。
「母上の教え……そして『体の玉』が告げている。お前たちの動きは、あまりに不格好で、止まって見えるのだ」
百士鬼改は空中で静止し、背中の大筒『破嵐(バラン)法術砲』を前方へ展開した。黄金の法力が砲身に集約され、火花が散る。
「必殺! 乱れ撃ち・黄金百雷連発(おうごんひゃくらいれんぱつ)!!」
丘全体を包み込むような、圧倒的な光の雨。
闇軍団の兵たちは断末魔を上げる間もなく浄化され、桜の花びらと共に消滅していった。丘には再び、静かな風に吹かれた花びらが舞い始める。
「……少し、熱くなりすぎたな。これでは父上に『品がない』と笑われてしまう」
彼は優雅に地上に降り立つと、激しい機動でわずかに乱れた前立てを、細い指先でそっと直した。
父の伊達な気概と、母の冷徹な戦闘術。二つの偉大な血を継ぐ黄金の継承者は、新生武者五人衆の「華」として、そして「鬼」として、天宮を守る覚悟を新たにするのだった。