機動戦士ガンダム BB戦士 SD戦国伝 ノベライズ 〜コミックワールド武者から大将軍へ!〜 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
天宮(アメノミヤ)の国。燃え上がる夕日に染まり、血のような朱色に輝く「赤土の断崖」。
急ぎ足で戦地へ向かう荒烈駆主(アレックス)たちの前に、空を割り、一筋の不吉にして美しい紅い閃光が舞い降りた。
「……光の玉に選ばれし小僧どもか。この私を素通りできると思うなよ」
深い紅の重装甲を纏い、背中には大鎌のような獲物を背負った巨躯。
武者漣飛威(ムシャサザビー)。
新生闇軍団において、小細工を一切排した「堂々の武」を体現する最強の猛将である。彼は、荒烈駆主たちに蹴散らされ地に伏す配下たちを一瞥もせず、ただ静かに愛刀『雷電丸』を抜き放った。その刀身からは、微かに紫色の電光が漏れ出している。
「その構え……殺気……。ただの闇軍団の刺客とは、根本から何かが違う!」
荒烈駆主が二刀を構え、全身の毛羽立つような警戒を強める。漣飛威から放たれる気配は、凍てつくほど冷たく、それでいて火山の如き熱量を内包していた。
「私は漣飛威。新生闇軍団の遺志を継ぐ者ではあるが……無策に命を散らす雑兵(ぞうひょう)や、影に潜んで毒を盛る卑怯者と一緒にせぬことだ。私は、この魂を震わせる強き者と刃を交えるためにのみ、ここにいる」
次の瞬間、漣飛威の巨体が爆発的な踏み込みで掻き消えた。
キィィィィィィン!
断崖を震撼させる激しい金属音が響き渡る。荒烈駆主の必死の二刀流を、漣飛威は片手の太刀一本で、微動だにせず完璧に受け止めていた。
「速い……! だが、なんだ、この重さは! 山を背負っているのか!?」
「驚くには早いぞ、若造。私の武は、一振りの剣に留まらぬ!」
漣飛威の肩部装甲に納められた六基の宝珠――『飛龍(ひりゅう)の弩(いしゆみ)』が、主の法力に呼応して一斉に射出された。
意思を持つかのように宙を自在に舞う小型の自動砲台。それは多方向から荒烈駆主の死角を突く。天宮の古の法術と、最新の絡繰技術を極めた漣飛威にしか成し得ぬ絶技であった。
「ぐわっ……!」
全方位からの弾幕に回避が追いつかず、荒烈駆主の白き鎧から激しい火花が散る。しかし、漣飛威は追撃の手を緩めない。今度は背中の巨大な『大鎌(グレート・サイス)』を抜き放ち、一閃した。
「貴様の守る『正義』とやらを、力で証明してみせろ! 口先だけの理想ならば、その首……今ここで私が貰い受ける!」
大鎌が断崖の岩肌を溶岩ごと斬り裂き、逃げ場を奪う。
彼は卑怯な暗殺も、数に物を言わせた包囲も好まない。己の圧倒的な武力で正面から敵を叩き潰し、その魂までも屈服させること。それこそが彼の流儀であり、誇りであった。
荒烈駆主は、巻き上がる土煙の中で膝をつきながらも、再び立ち上がった。
この男は、これまでの敵とは違う。闇に身を置きながらも、武士としての芯だけは一点の汚れもなく輝いている。
「……武者漣飛威! あんたが掲げるその誇り、俺が全力で受けて立つ! 行くぞッ!!」
夕闇が迫る中、赤き猛将と白き若武者が放つ火花が、天宮の夜を赤々と、そして激しく照らし出した。
それは宿敵(ライバル)としての、奇妙な敬意が混じり合う激闘の始まりであった。