機動戦士ガンダム BB戦士 SD戦国伝 ノベライズ 〜コミックワールド武者から大将軍へ!〜 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
天宮(アメノミヤ)の国を南北に分かつ大河「泥濘(ぬかるみ)の川」。
五人衆の集結を急ぐ若き武者・江須(エス)がその濁流を渡ろうとした瞬間、霧の中から巨大な岩石が浮き上がったかのような錯覚を覚えるほどの、圧倒的な威圧感が立ち塞がった。
「カカカ……。力自慢の駄舞留精太の弟子、江須とやら。その『力の玉』……この璽悪が美味しく頂戴して、新生闇皇帝様への供物にさせてもらおうかのう」
武者璽悪(ムシャジオ)。
新生闇軍団の僧兵部隊を束ねる怪僧である。鈍色に鈍く光る重厚すぎるほどの鎧、そして不気味に左右へ蠢く単眼(モノアイ)。その手には、邪悪な法力を帯びた巨大な『地獄(ヘル)の槍』が握られていた。
「あいつが噂に聞く璽悪……! 逃げはしないぞ、師匠(駄舞留精太)の名にかけて。僕の力、思い知らせてやる!」
江須が愛機・雷神を呼び寄せ、空中合体! 猛烈な勢いで『雷鳴爆轟砲』をチャージし、渾身の一撃を叩き込む。
しかし、璽悪はその巨体を揺らし、嘲笑うかのように事も無げに槍の柄で攻撃の軌道を逸らした。
「甘いわ。その程度の小賢しい怪力、我が肉厚の装甲を貫くには至らん。赤子の遊戯よ」
「だったら、こいつはどうだ! 加減なしの至近距離射撃だッ!」
江須が泥を蹴り、璽悪の懐へ飛び込む。大目牙砲の銃口をその腹部に押し当てようとした、その瞬間――。
ガキンッ!
江須の両腕を、予期せぬ死角から伸びた「第三、第四の腕」が鉄万力のような力で掴み取った。
璽悪の腰部装甲(フロントスカート)の裏側に隠されていた、暗殺用の『隠し腕(サブ・アーム)』だ。
「なっ!? 腕が……増えた!? どこから……!」
「驚くのはあの世へ行ってからにするがいい。……死ねィ、若造!」
璽悪は隠し腕で江須の動きを完全に封じたまま、本体の剛腕で巨大な『暗黒剣』を頭上から振り下ろす。
江須は間一髪、自爆覚悟で雷神を強制分離させ、その衝撃で後ろへ飛び退いた。一歩間違えれば、その首は泥濘の中に転がっていただろう。
「卑怯だぞ、そんな隠し武器なんて! 正面から戦えよ!」
「カカカ! 勝てばよかろうなのだ。戦とは、相手の裏をかき、絶望の淵に突き落とす芸術よ。武士道などという甘っちょろい言葉、我が四本の腕で握り潰してくれよう!」
璽悪は不気味にモノアイを赤く光らせ、背中に装備した巨大な重火器『大型散弾銃』を乱射し始めた。
ただの力押しではない。四つの腕を自在に操り、近接武器で防御しながら遠距離攻撃を同時に仕掛けてくるその戦闘スタイルは、まさに戦場に現れた異形の阿修羅。
「おのれ……。だが、裏があるのはあんただけじゃないんだ! 僕だって、師匠から『戦術』も叩き込まれてるんだからな!」
江須は泥濘の中に身を隠し、反撃の機会を虎視眈々と伺う。
新生五人衆の若き純粋な力と、闇軍団の底知れぬ狡猾な牙。
泥臭くも激しい「剛」と「智」の攻防が、静寂の川辺を熱く、激しく焦がしていく。