機動戦士ガンダム BB戦士 SD戦国伝 ノベライズ 〜コミックワールド武者から大将軍へ!〜 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
天宮(アメノミヤ)の深奥、光さえも届かぬほどに樹木が密集する「迷いの森」。
かつて七人衆の一人として名を馳せた武者摩亜屈は、今、その森の守護神となっていた。
静寂を切り裂いたのは、下卑た笑い声と、重機が木々をなぎ倒す不快な金属音であった。
「ヒッヒッヒ、この森の霊脈を断ち切れば、頑駄無軍団の法力も弱まるはずだ。さっさと杭を打ち込め!」
新生闇軍団の工作部隊が、森の神聖な結界を破壊せんと、不浄な魔力を込めた杭を運び込んでいたのだ。
闇の兵が杭を振り下ろそうとしたその瞬間――。
頭上の巨木の隙間から、一条の鋭い「緑の閃光」が音もなく降り注いだ。
「林のごとく静かに。……そして、獲物は確実に仕留める」
密林の摩亜屈(ミツリンノマークツー)。
伝説の『林の鎧』を継承し、天宮を守護する四天王の一人となった姿である。その背には、巨大な翼と鋭い爪を持つ守護獣『武鳥(ブバード)』が装着され、深緑色の装甲は完全に周囲の闇と一体化していた。
「な、何奴だ! 姿を見せろッ!」
狼狽える闇の兵。だが、摩亜屈は答えない。ただ静かに印を結ぶのみ。
呼応するように背中の武鳥が分離し、一切の羽音を立てることなく空中を旋回し始めた。武鳥の瞳から放たれる『林の光束』が、逃げ惑う敵の足元を正確に射抜き、影を地面に縫い付ける。
「逃がさん。この森を汚す者は、森そのものに裁かれるのだ」
闇の兵が絶望に顔を歪めて振り向いた時、すでに摩亜屈は目の前にいた。
腰に差した二本の至宝――『虎徹(コテツ)』と『正宗(マサムネ)』が鞘から抜かれる。その動作には露ほどの迷いもなく、まるで風に揺れる枝葉のように自然であった。
一歩踏み出すごとに大地から森の法力を吸い上げ、加速するその一撃。
それは巨岩をも豆腐のように両断する重さと、空気さえも斬り裂く鋭さを秘めていた。
「必殺! 木っ端微塵斬(こっぱみじんざん)!!」
目にも止まらぬ速さで刻まれた十文字の斬撃。
工作部隊がなす術もなく崩れ落ちるのと同時に、摩亜屈は再び森の奥へとその姿を消した。残されたのは、真っ二つに裂かれた闇軍団の不吉な旗印と、何事もなかったかのように静かに降り積もる木の葉だけであった。
摩亜屈は森の奥深く、かつての弟子……今は闇の走兵となった砕虎摩亜屈の気配を遠くに感じていた。
「……若き百士鬼改よ。お前の『体』の動き、まだ少し硬いな。力に頼れば風に逆らい、音を生む。見ていろ、これが真の『静』の戦いだ」
彼は黄金の弟子の成長を願いつつ、再び深い瞑想へと戻っていった。
四天王の一角、密林の摩亜屈。
その鋭き刃は、天宮を脅かす闇を、森の吐息と共に音もなく刈り取っていく。