機動戦士ガンダム BB戦士 SD戦国伝 ノベライズ 〜コミックワールド武者から大将軍へ!〜 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
天宮(アーク)の国、その険しい山嶺を縫うように走る影があった。
武者頑駄無摩亜屈(ムシャガンダムマークツー)。
白と濃紺の、どこか冷徹ささえ感じさせる鎧を纏った男だ。
彼は武者頑駄無や精太のような華やかさよりも、質実剛健な実利を重んじる。
今、摩亜屈は深い霧に包まれた森の中で、静かに気配を殺していた。
彼の頭上には、一羽の巨鳥――守護獣「武者イーグル」が旋回し、鋭い眼光で地上の動向を監視している。
「……来たか。地の底を這いずる者たちが」
摩亜屈が呟くと同時に、周囲の藪がざわめき、闇軍団の工作兵たちが現れた。
彼らは「影」から生まれた忍の軍勢だ。
「摩亜屈、見つけたぞ。貴様の二刀流、ここで封じてくれる!」
忍たちが一斉に手裏剣を放つ。だが、摩亜屈は微動だにしない。
キィィィィィィン!
上空から急降下した武者イーグルが、その鋭い翼で手裏剣をすべて弾き飛ばした。
「礼を言うぞ、イーグル。……さて、これ以上私の森を汚すなら、容赦はせん」
摩亜屈は、腰に差した二本の太刀「双鷹丸(そうようまる)」に手をかけた。
そう、彼は天宮でも珍しい二刀流の使い手。
一振りで敵を断ち、もう一振りで己を守る。
その隙のない構えは、森の王者そのものだった。
「覚悟!」
摩亜屈が地を蹴る。
その速さは精太のような疾走ではなく、一瞬で間合いを詰める「瞬身」の歩法だ。
右の太刀が敵の武器を弾き、左の太刀がその隙を突く。
「ぎゃあああ!」
忍たちの叫びが森に響く。摩亜屈の剣筋は正確無比で、無駄な動きが一切ない。
まるで獲物を解体する狩人のように、彼は淡々と、かつ冷酷に敵を無力化していく。
だが、森の奥から不気味な妖気が漂ってきた。
「ククク……噂通りの腕前だ。だが、この『闇の術』からは逃れられまい!」
敵の術師が呪文を唱え、周囲の霧が生き物のように摩亜屈の足に絡みつく。
「小細工を……!」
動きを封じられた摩亜屈に、工作兵たちが一斉に飛びかかる。
絶体絶命。しかし、摩亜屈の瞳に光る冷徹な意志は揺るがない。
「イーグル! 力を貸せ!」
摩亜屈の叫びに呼応し、武者イーグルが彼の背中へと舞い降りた。
カチリ、と硬質な音が響く。
イーグルが鎧の一部となり、摩亜屈の背に巨大な翼を形成したのだ。
「飛行形態、参る!」
重力を無視した急上昇。絡みつく霧を引きちぎり、摩亜屈は天空へと逃れた。
空中で旋回し、急降下。
加速を乗せた二刀流が、術師の陣を文字通り粉砕した。
「必殺、二刀流・稲妻斬り!」
爆炎が上がり、森を覆っていた不気味な霧が霧散していく。
着地した摩亜屈は、再び静かに納刀した。
肩に舞い戻ったイーグルが、誇らしげに翼を鳴らす。
「……これで三か」
摩亜屈は懐から、武者頑駄無からの招集に応じるための印を取り出した。
彼は群れることを好まない。
だが、一人で守れるものには限界があることも、この戦いを通じて痛感していた。
「武者、そして精太か。……あまり足を引っ張ってくれるなよ」
ぶっきらぼうな独り言を残し、摩亜屈は再び森の深淵へと消えていった。
その背中には、天宮の平和を背負う、孤独な狩人の矜持が刻まれていた。