機動戦士ガンダム BB戦士 SD戦国伝 ノベライズ 〜コミックワールド武者から大将軍へ!〜 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
かつて天宮(アメノミヤ)を恐怖のどん底に陥れた闇軍団の本拠地――「時隠(ジオン)の国」。
荒廃し、冷たい風が吹き抜ける城郭の頂で、一人の若き武者が、父がかつて振るったとされる巨大な名刀を手に、静かに月を見上げていた。
「……父上。貴方の高潔な魂を汚し、意のままに操ったあの『闇』を……私は決して許しはしない。この身が朽ちようとも」
若殺駆頭(ワカザクト)。
殺駆頭の嫡子であり、新生闇軍団の実質的な若大将である。しかし、彼は漣飛威(サザビー)たちのような忠誠心や、璽悪(ジオ)のような野心とは一線を画していた。自らの意志で「闇」を支配下に置き、一族の誇りを再興することのみを願う、孤高のリアリストであった。
そこへ、足元の影から這い出すように、不気味で湿った声が響き渡る。
「クカカ……。若造よ、その憎しみ……その冷徹な怒りこそが闇の最上の糧。さあ、私を受け入れ、父以上の『破壊の王』となるのだ……」
「黙れ、名もなき影よ! 私は貴様の傀儡(くぐつ)にはならん。闇は支配するもの。溺れるものではない!」
若殺駆頭が鋭く印を結ぶと、背後に控えていた漆黒の守護獣『暗黒獅子』が、天を衝く咆哮を上げた。
父・殺駆頭が闇皇帝に操られ、闇将軍へと堕ちたあの悲劇を繰り返さぬため、彼は自らの強大な法力で闇の力を「鎧」として制御する、一族秘伝の禁術を身につけていたのだ。
「暗黒装着(あんこくそうちゃく)ッ!!」
暗黒獅子が法力によって分解し、若殺駆頭の身体に重厚な漆黒の装甲となって吸着していく。
背中には一撃で軍勢を消し飛ばす『大目牙(オメガ)大筒』。その威圧的な姿は、かつての闇将軍を彷彿とさせながらも、面頬(メンホオ)の奥の瞳には、冷徹で理性的、かつ気高い光が宿っていた。
「殺駆一族に伝わる真の武、そして支配者の矜持……今こそ光の末裔どもに見せてくれよう!」
若殺駆頭は、父から受け継いだ銘刀『雷光丸』を抜き放った。
彼は荒烈駆主(アレックス)たちの前に、圧倒的な壁として立ち塞がる。それは侵略や殺戮のためではない。己の強さを証明し、闇の呪縛を自らの手で断ち切るための、過酷な試練であった。
「必殺! 雷光暗黒斬(らいこうあんこくざん)!!」
漆黒の法力を纏い、空間そのものを断ち割るような絶大な一撃が、夜の闇を切り裂く。
荒烈駆主と若殺駆頭。光の玉に選ばれた運命の子と、闇の宿命を自らの力で捻じ伏せようとする覇者。
二人の若きリーダーが激突する時、天宮の地平に、憎しみを超えた新しい歴史の火花が散った。
「……荒烈駆主よ。貴様が真に天宮を照らす光ならば、私のこの深き闇を……超えてみせよ!」
それは、時代に翻弄された一族の叫びであり、対等な「宿敵(ライバル)」を求める魂の咆咆であった。