機動戦士ガンダム BB戦士 SD戦国伝 ノベライズ 〜コミックワールド武者から大将軍へ!〜   作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった

34 / 50
隠密副将軍、月下に現る(66 隠密副将軍)

 新生闇軍団が張り巡らせた、重層的な包囲網。

 若き五人衆は、その物量と狡猾な戦術によって、かつてない絶体絶命の窮地に立たされていた。荒烈駆主(アレックス)の愛刀は激戦の果てに折れ、法力も尽きようとしたその瞬間――戦場を支配していた不気味な静寂を、月光を切り裂く無数の銀光が突き抜けた。

 

「……光の玉に選ばれし若武者たちよ。これしきの闇に呑まれてもらっては、先代たちが築いた礎が泣くというものだ」

 

 空から音もなく舞い降りたのは、洗練された銀色の鎧を纏い、面頬(メンホオ)の奥に鋭い眼光を湛えた高貴なる武者。

 

 隠密副将軍(オンミツフクショウグン)。

 

 かつての農丸頑駄無(ノーマルガンダム)が、二代目大将軍亡き後の天宮を守護し、若き次世代を影から支え、導くために冠った「もう一つの名」である。

 

「お、お前は……! 誰なんだ! 頑駄無軍団に、まだこれほどの武者がいたというのか!」

 荒烈駆主の驚愕の問いに、彼は一切答えず、ただ指先で流麗な印を結んだ。

 

「人忍一体(じんじんいったい)!!」

 

 彼の傍らに控えていた守護獣、黄金の獅子『スピリット』が法力によって分解・再構成され、巨大な翼――『武者飛翔(むしゃひしょう)』へと姿を変えて彼の背に合体する。

 一瞬にして重力を無視した加速で戦場を俯瞰する高さまで舞い上がると、彼は腰に差した究極の忍刀『雷頑(ライガン)』を抜き放った。その刀身からは、青白いプラズマが漏れ出している。

 

「闇の者共よ。私が『影』であることを捨て、こうして表舞台に姿を現したということは……貴様らの命運、ここで尽きたということだ」

 

 隠密副将軍が宙を駆ける。

 その神速は「疾風の仁宇(ニュー)」に比肩し、その狙撃の正確さは「密林の摩亜屈(マークツー)」を凌駕する。背負った『大目牙(オメガ)連爆砲』が、正確に闇の幹部たちの拠点を次々と撃ち抜いていく。

 

「必殺! 忍法・月影乱れ斬り(つきかげみだれぎり)!!」

 

 月光を反射した無数の残像が、まるで実体を持っているかのように敵軍を切り刻む。農丸にとって、この力は誇示するためのものではない。亡き兄や友が命を懸けて守り抜いたこの天宮を、二度と闇に汚させないための「掃除」に過ぎないのだ。

 

 激しい爆煙が晴れた時、数千の敵軍は跡形もなく壊滅していた。

 隠密副将軍は兜の獅子の飾りを鳴らし、呆然と立ち尽くす荒烈駆主たちの前に降り立つ。

 

「……行くが良い、荒烈駆主。お前たちが進むべき道、その障害となる『影』は、私が既に拓いておいた」

 

 多くを語らず、名乗ることもなく、ただ背中で語る副将軍。彼は再び周囲の闇に溶け込むように、一瞬にしてその姿を消した。

 天宮の平和は、この歴史の表舞台には決して名を残さぬ「最強の影」によって支えられているのである。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。