機動戦士ガンダム BB戦士 SD戦国伝 ノベライズ 〜コミックワールド武者から大将軍へ!〜 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
鳳凰の里へと急ぐ一行の前に、突如として激しい砂塵が舞い上がった。
逆光の中、砂を蹴立てて現れたのは、一人の武者。その姿は、天宮(アメノミヤ)で一般的に見られる鎧の様式とは明らかに一線を画していた。
どこか大陸の、あるいはそれよりもさらに遠き異国の薫りを感じさせる、重厚にして洗練された意匠。その背には、まるで生きているかのように鋭い眼光を放つ鋼鉄の守護獣が鎮座していた。
「……拙者は武神頑駄無(ブジンガンダム)。天の導き、そしてこの胸に宿る珠の共鳴に従い、鳳凰殿に加勢いたす」
その落ち着いた、しかし芯の通った声を聞いた瞬間、新荒烈駆主は雷に打たれたような衝撃を受けた。
「(あの姿……あの独特な兜の飾り……間違いない。俺が未来の世界で、自らの身を守るために纏っていた『武神の鎧』の……オリジナルの持ち主なのか!?)」
新荒烈駆主にとって、その鎧は単なる装備ではなかった。幾多の死線を共にした、いわば戦友のような存在。その「真の主」が目の前に立っているという事実に、時空を超えた運命の奇妙さを覚えずにはいられなかった。
驚愕に浸る間もなく、周囲の影が不自然に伸び、湿った笑い声が響く。
「ヒッヒッヒ……鳳凰の首首(しるし)、ここで貰い受ける!」
現れたのは闇軍団の暗殺部隊。彼らは影から無数の鎖鎌を放ち、変幻自在の軌道で鳳凰たちの退路を断ち、その手足を絡め取らんと迫りくる。
「フン、小癪な。拙者の前で影に潜み、不意を突くなど、百年早いわ!」
武神頑駄無が静かに、しかし深く腰を落として印を結ぶ。その刹那、背中の守護獣が主の咆哮に呼応するように輝きを放った。
「武神変幻(ぶじんへんげん)ッ!!」
背負っていた鋼鉄鳥『阿修羅(アシュラ)』が法力によって一瞬で展開。武神の肩部装甲と複雑に噛み合いながら合体していく。
驚くべきはそこからだ。合体した装甲の隙間から、法力によって物質化された二本の「義腕」が突き出し、計四本の腕がそれぞれに異なる銘を持つ鋭き銘刀を、一点の迷いもなく引き抜いた。
四刀流。
それは武神のみが到達した、全方位死角なき「円」の剣舞。
「必殺! 四連激突砕(しれんげきとつさい)!!」
空気を切り裂くシュシュシュシュッ! という鋭い音が、戦場を支配した。
鎖鎌が武神の身体に触れるよりも早く、四振りの刀が縦横無尽に閃く。襲い来る暗殺部隊は、自分が何をされたのかを理解する暇さえ与えられず、その不浄な鎧を塵も残さず細切れにされ、虚空へと散っていった。
まさに「武の神」の名にふさわしい圧倒的な技の冴え。
戦いが終わると、武神は四本の刀を流れるような動作で同時に納太刀した。そして、新荒烈駆主を見つめ、静かに、優しく微笑む。
「……不思議な少年よ。貴殿からは、拙者の鎧が持つ『志』と同じ匂いがする。どうやら、運命というものは、拙者の想像以上に深く、そして強固に繋がっているようだな」
武神頑駄無から新荒烈駆主へ。
時代を超えて、血よりも濃く受け継がれる「鎧」と「魂」の宿命。その最初の持ち主である武神は、その背中で若き荒烈駆主に語りかけていた。
闇を払うために必要なのは、光り輝く法力だけではない。それを最後まで守り抜き、貫き通すための、鋭き『技』と『心』が必要なのだと。
「鳳凰殿、共に行こう。この武神、貴殿の掲げる大義に、拙者の剣を捧げようぞ!」
新たな仲間、武神を加え、頑駄無軍団の戦力はこれ以上なく強固なものとなった。
一行は、伝説の始まりの場所――鳳凰の里へと、再び走り出したのである。