機動戦士ガンダム BB戦士 SD戦国伝 ノベライズ 〜コミックワールド武者から大将軍へ!〜 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
天宮(アーク)の国を横断する大河、その河畔。
本家・武者精太が緒羅四恩(オラシオン)と共に闇軍団の軍勢を正面から引き付け、華麗な槍さばきで翻弄している。その光景は、遠目に見れば英雄の凱旋のように眩い。
だが、その喧騒から遠く離れた対岸の茂み。
水面に映る月を乱すことさえなく、一人の武者が潜んでいた。
武者影精太。
本家と同じ白銀の鎧を纏っているが、その瞳に宿るのは戦いの高揚ではなく、冷徹なまでの計算であった。
「……本家は相変わらず派手だな。だが、少しばかり詰めが甘い」
影精太は低く呟き、背中の『影武士(カゲビーム)ライフル』を構えた。
彼の役割は、精太が引き付けた敵陣の中に潜む、真の脅威を排除すること。精太の華々しい立ち回りの死角を埋める「盾」であり「矛」なのだ。
照準器(スコープ)が、乱戦の奥に潜む闇軍団の術師を捉える。
術師は精太が接近する瞬間に合わせ、呪縛の術を発動させようと印を結んでいた。精太の機動力をもってしても、あの距離からの不意打ちは避けられない。
「逃がさん。貴様の因果、ここで断つ」
影精太は呼吸を止めた。
指が引き金に触れる。
カチリ、と小さな金属音が響く。それは、音もなき死の宣告であった。
シュッ……ドォォン!
消音化されたライフルの弾丸が、術師の杖を粉砕し、そのまま呪印を霧散させた。
何が起きたか理解できず、呆然とする術師。その首筋に、上空から飛来した影精太の相棒、影守護獣『影緒羅四恩(カゲオラシオン)』の爪が迫る。
「影緒羅四恩、深追いはするな。我々の仕事はあくまで『整理』だ」
影精太の声に応じ、偵察機としての機能も持つ影緒羅四恩が、音もなく主の元へ戻る。
彼は本家のように「人馬一体」を見せびらかすことはしない。だが、彼と影緒羅四恩が共有する視界は、半径数里の敵の動きを完全に網羅していた。
「……次の標的を確認。闇軍団・補給部隊か」
影精太は、本家の精太が敵を蹴散らして進むルートを先読みし、その先にある障害物を一つずつ排除していく。
地雷を埋める雑魚兵。待ち伏せする弓兵。
それらは、本家が現場に到着する頃には、すべて「原因不明の戦闘不能」に陥っているのだ。
「誰にも知られる必要はない。精太が勝利の美酒に酔うなら、私はその酒が毒されていないかを確認するだけだ」
戦いが終わり、精太が夕日に向かって勝ち名乗りを上げる。
その光景を遠くから見届け、影精太はひっそりと姿を消した。
彼が去った場所には、一発の薬莢さえ残されてはいない。
影は光を愛さない。だが、光を絶やすことは決して許さない。
それが、影精太という男が選んだ、誇り高き孤独であった。