機動戦士ガンダム BB戦士 SD戦国伝 ノベライズ 〜コミックワールド武者から大将軍へ!〜   作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった

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静かなる轟雷、影の工廠(32 武者影駄舞留精太)

 天宮(アメノミヤ)の空を切り裂くような轟音が、闇軍団の拠点「黒鋼要塞」を揺らしていた。

 正面正門。そこでは、本家・武者駄舞留精太が自慢の戦車「武者戦車(ムシャタンク)」を駆り、全砲門を解放してド派手な花火を打ち上げている。

「ハハハハ! 全弾発射だッ! 闇の連中、まとめて消し飛べッ!」

 その豪快な笑い声は、数里先まで響き渡るほどであった。

 

 だが、その喧騒の真下。

 要塞の最深部へと続く通気ダクトの中に、一つの「影」が音もなく滑り込んだ。

 

 武者影駄舞留精太。

 

 本家のような重厚な巨体ではない。隠密性に特化したソリッドな装甲は、闇に溶け込むマットな漆黒。背負った象徴的な武器『影大目牙砲(カゲオメガキャノン)』には、法力の波形を減衰させる消音機(サイレンサー)が施された特殊仕様だ。

 

「……計算通りだ。本家が注意を八割引きつけている。この隙に心臓部を掌握すれば、要塞の防衛機能は三割低下、陥落速度は予定より四百分早まる」

 

 彼は懐から、自作のカラクリ偵察機『影戦車(カゲタンク)』を放った。手のひらサイズのそれは、ネズミのような機敏さで配管を伝い、要塞の構造を三次元的に走査していく。影駄舞留精太のゴーグルには、リアルタイムで要塞の弱点――法力の流れが滞る「構造的欠陥」が青く浮かび上がった。

 

「本家は破壊を楽しむが、私は無力化を好む。美しくないからな、無駄な瓦礫を積み上げるのは」

 

 彼が目指すのは、要塞の全機能を司る中央火薬庫、および法力炉。そこへ至る回廊で、運悪く巡回中の重装兵・怒武(ドム)の一団と鉢合わせた。

 

「何奴だ! 侵入者か!」

 怒武が重い槍を構える。だが、影駄舞留精太の動きは、彼らの重装甲では捉えきれないほどに速かった。

 

「騒ぐな。耳障りだ」

 

 彼は抜刀せず、背中の影大目牙砲の照準を指先一つで合わせた。

 ボシュッ――。

 放たれたのは、爆発音を抑えた高圧縮の法力弾。それは怒武の胸当てを貫くのではなく、装甲の継ぎ目、動力源が露出するわずかな隙間に寸分の狂いなく着弾した。

 法力の逆流。

 声も上げられず、人形のように崩れ落ちる怒武。内部の駆動回路だけを完璧に焼き切り、外装には傷一つつけない。まさに「外科手術」のごとき精密攻撃であった。

 

「……無駄な殺生は効率を下げる」

 

 ついに火薬庫に到達した彼は、主支柱に小型の法力爆弾をセットした。これもただの爆弾ではない。特定の周波数で振動し、構造計算に基づいた「共振」を引き起こして、一箇所を壊すだけで全体をドミノ倒しのように崩壊させる精密機器だ。

 

 作業を終えた彼が、影戦車を回収して撤退しようとしたその時、遠く地上から凄まじい振動が伝わってきた。

「ハハハ! 仕上げだ、ハイパー大目牙砲……撃てェッ!!」

 本家の、耳をつんざくような咆哮。

 

「……ふん。相変わらず、計算という言葉を知らない男だ」

 

 影駄舞留精太は、本家の爆発の衝撃波が要塞を揺らしたその「一瞬」を待った。

 外部からの衝撃と、内部からの共振。それが重なる最短のタイミング。

 

「今だ」

 

 彼が起爆スイッチを押すと、ズゥゥゥン……という重低音が響いた。

 地表では本家がド派手な一撃で城門を消し飛ばしているが、同時に地下では、影駄舞留精太の仕掛けにより、要塞の基盤が音もなく沈下を始めていた。支えを失った防壁が、内側からボロボロと崩れ落ちる。

 

(これで本家も、これ以上の深追いで死なずに済むだろう。あのお節介焼きの兄貴分には、余計な心配をさせたくないからな)

 

 脱出した影駄舞留精太は、崖の上から月明かりに照らされた要塞を見下ろした。

 本家が「俺の火力が凄すぎて土台から崩れたぜ!」と部下たちに自慢している声が聞こえる。

 彼は手元の算盤(そろばん)をパチリと弾き、予定通りの戦果を確認して、薄い笑みを浮かべた。

 

 本家の輝かしい戦果の半分以上は、この男が事前に「お膳立て」した結果であることを、知る者は誰もいない。

 それでいい。影の工学士は、ただ完璧な仕事の結果だけに満足し、再び闇へと消えていった。

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