機動戦士ガンダム BB戦士 SD戦国伝 ノベライズ 〜コミックワールド武者から大将軍へ!〜 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
天宮(アメノミヤ)の国に夜が訪れる。だが、その夜の暗闇よりも深い場所に、彼は潜んでいる。
影忍者射殺駆(シャザク)。
闇軍団の重鎮、殺駆三兄弟の従者でありながら、その実態は闇皇帝直属の暗殺部隊「殺駆頭(ザクト)」の秘蔵っ子である。
彼は武者たちのように「正々堂々」という言葉を知らない。
彼にとっての戦いとは、標的が気づかぬうちにその命を刈り取ること。ただそれだけだ。
「……ククク、見えたぞ。平和ボケした頑駄無の村が」
射殺駆は、巨大な松の枝に逆さまにぶら下がりながら、愛用の『影種子島(カゲタネガシマ)』の照準を覗き込んでいた。
彼の鎧は、闇に溶け込む黒と深緑。そして、その特徴的なモノアイは、獲物を捉えた瞬間に血のような赤色に輝く。
今回の任務は、頑駄無軍団へ食糧を運ぶ村の若き名主の暗殺。
射殺駆は、風速、湿度、そして標的の歩調を計算する。その指先は、冷たい鋼のようであった。
「死ね」
ボシュッ!
放たれたのは、毒を塗った特殊な弾丸。
しかし、その弾丸が名主の喉元を貫く直前、金属を叩く鋭い音が響いた。
「なに……!? 弾かれただと?」
射殺駆のモノアイが激しく左右に動く。
名主の影から、音もなく這い出してきたのは、先ほどまで戦場にいたはずの武者影頑駄無であった。
「闇の影が、光の影に勝てると思ったか。射殺駆」
「ちっ……頑駄無軍団の掃除屋か。邪魔立てするなら、貴様ごとあの世へ送ってやるわ!」
射殺駆は枝を蹴り、空中へと舞った。
彼は懐から、無数の暗器――『手裏剣』と『くない』を同時に放つ。
さらに、空中で身体を捻りながら、二挺の短筒を乱射する。その姿は、まるで黒き針を撒き散らす蜘蛛のようであった。
「これぞ殺駆流、暗殺奥義……百鬼夜行(ひゃっきやこう)!」
だが、影頑駄無は翻るマントでそれらをことごとく叩き落とし、再び影へと沈む。
射殺駆は着地した瞬間に、背後から立ち昇る殺気を感じ取った。
「終わりだ」
「……ククク、そうかな?」
影頑駄無の刀が射殺駆の首を撥ねる寸前、射殺駆の身体がボフンと煙に巻かれた。
現れたのは、爆薬を詰め込んだ藁人形。
「さらばだ、頑駄無! 次に会う時は、貴様の心臓を直接貫いてやる!」
大爆発の炎に紛れ、射殺駆はすでに闇の向こうへと消えていた。
彼には誇りなどという足枷はない。目的を果たせずとも、生き延びて次を狙う。その執念こそが、影忍者射殺駆という男の真骨頂であった。
暗闇に戻った射殺駆は、手近な岩に腰掛け、ライフルの汚れを拭った。
「影頑駄無か……面白い。闇の住人にどちらが相応しいか、じっくり教えてやるわい」
モノアイが再び赤く灯る。
天宮の夜はまだ長く、影たちの戦いは歴史の表舞台に一度も出ることなく加速していくのだった。