たんぽぽぞうは、そのまま連行された。
パトカーの後部座席は狭く、シートは妙に硬かった。窓の外には夜の街が流れていく。
(……なんでこうなったんだろう)
頭の中で、さっきまでの出来事がぐるぐると回る。
窓が割れた音。塾ほりの驚いた顔。スマホを構えて笑っていた姿。
(俺、悪いことしたのか?)
(いや……プロデュースしようとしただけだよな?)
自分の行動を正当化しようとする気持ちと、少しの不安が入り混じっていた。
⸻
警察署に着くと、たんぽぽぞうは小さな部屋に通された。
「お前、なんであんなことしたんだよ!」
机を叩く音に、心臓が一瞬跳ねる。
だが、ここで弱気になったら終わりな気がした。
「は?
まずは名乗れよ。それが礼儀だろ!!!」
思った以上に声が大きくなったが、もう引けない。
怒鳴り返されると思った警官は、一瞬たじろいだあと、咳払いをした。
「……俺の名は、ぶだばらうゆだ。よろしくな」
「うゆ?
まあいいや。よろしくな。質問していいぞ!」
(よし、なぜか流れは悪くない)
「で、なんでクラスメイトの家に侵入した?」
たんぽぽぞうは少し考え、正直に答えることにした。
「TikTokがあまりにもキモすぎたから、
プロデュースしてあげようと思ったんですよ!」
言い切った瞬間、少しだけスッとした。
(悪気はなかった)
(むしろ親切心だ)
ぶだばらうゆは腕を組み、うなずく。
「なるほど……」
沈黙が続き、たんぽぽぞうは内心ドキドキしていた。
(ここで怒られたら終わりだな)
しかし、次の言葉は予想外だった。
「それは仕方ないな。
俺はお前を許す。もう行っていいぞ」
「……え?」
「やったー!嬉しい!」
拍子抜けしつつも、喜びが一気に込み上げた。
(この世界、案外優しいな)
⸻
警察署の前に出ると、冷たい夜風が顔に当たった。
「……ファミチキ、美味しかったぜ!」
なぜか心が落ち着いていた。
今日の出来事は最悪だったはずなのに、妙な達成感すらある。
(次は、ちゃんと話せるかな)
⸻
数日後。
学校の廊下。
たんぽぽぞうは、前から歩いてくる塾ほりを見つけ、足を止めた。
胸が少しだけドクンと鳴る。
「……よう」
「おぉ!釈放されたのね」
その軽い言い方に、少し安心する。
(嫌われては……ないのか?)
覚悟を決めて、たんぽぽぞうは口を開いた。
「なあ……」
「結局さ」
「プロデュース、していいのか?」
本当は答えが怖かった。
それでも聞かずにはいられなかった。
塾ほりは一瞬も迷わず言った。
「だめよ」
「そ、そんなー!」
胸の奥がズンと重くなる。
(やっぱり無理か)
(でも……完全に否定されたわけじゃ……ない?)
そんなことを考えているうちに、視界が揺れた。
「……あ」
そのまま、たんぽぽぞうは倒れた。
「え、ちょ、マジ!?」
気づいたときには、保健室のベッドだった。
一方、廊下に残された塾ほりは、倒れた方向を見つめながら思う。
(なんなの、あいつ)
(迷惑なのに……)
(……なんでちょっと気になるのよ)
――こうして、
プロデュースは拒否されたが、
気持ちは完全には終わらなかった。
第二話・完。
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