現実の人物とは一切関係がありません。
「……ぞう!目が覚めたか!」
誰かの声が聞こえた。
ぼんやりと重たいまぶたを開くと、見慣れた天井と白いカーテンが視界に入る。
「……ここ、どこだ?」
「保健室だよ、保健室!」
顔をのぞき込んできた人物を見て、たんぽぽぞうは目を見開いた。
「……山凸秋鬼!」
そこにいたのは、クラスメイトであり数少ない友達の一人、山凸秋鬼だった。
意識がはっきりしてくるにつれて、倒れたときの記憶が少しずつ戻ってくる。
廊下。塾ほり。
「だめよ」という即答。
そして、急に真っ暗になった視界。
「倒れたって聞いてさ、心配したんだぞ!」
秋鬼は腕を組み、少し怒ったような顔をしている。
「秋鬼……心配してくれてありがとな!」
たんぽぽぞうが素直に礼を言うと、秋鬼は急に視線をそらした。
「べ、別にし、心配して来たわけじゃないんだからね////」
(……あれ?)
たんぽぽぞうは首をかしげる。
「そうか?」
「そ、そうだよ!たまたまだ!」
秋鬼の態度はどこか不自然だった。
顔が赤いし、語尾も変だ。
(なんか……違和感あるな)
だが深く考える前に、保健室の先生から「もう大丈夫」と言われ、二人は教室へ戻った。
⸻
放課後。
たんぽぽぞうは校舎の廊下を歩きながら、考え込んでいた。
(このまま終わるのか?)
プロデュースを断られたまま。
倒れて終わり。
それは、なんだか納得がいかなかった。
(もう一回だけ……聞いてみるか)
そう決めると、足取りは自然と早くなった。
校門近くで、スマホをいじっている塾ほりを見つける。
「……塾ほり!」
「なに?」
「頼む!」
たんぽぽぞうは、ほぼ反射で頭を下げた。
「プロデュースさせてくれ!」
しばらくの沈黙。
塾ほりはたんぽぽぞうを上から下まで眺め、ニヤッと笑った。
「えー……」
「じゃあさ」
「私の奴隷になって❤️」
「……え?」
一瞬、耳を疑った。
「え!?
それだけでいいのか!?」
思ったより条件が軽い。
いや、軽いのかどうかは分からないが。
たんぽぽぞうは内心で考える。
(奴隷……?)
(でも俺、普段からパシリみたいなことしてるし……)
思い返せば、
飲み物を買いに行かされたり、
ノートを写させられたり、
雑用を押し付けられたり。
(……あれ?)
(今と、何も変わらなくね?)
「いいぞ!」
勢いよく答える。
「その条件でプロデュースできるなら、全然いい!」
塾ほりは満足そうにうなずいた。
「じゃあ決まりね❤️」
「今日から、奴隷としてよろしくね」
そう言って、距離を詰めてくる。
「たんぞう❤️」
「……たんぞう!?」
急にあだ名をつけられ、心臓が少し跳ねた。
(なんだ今の)
(呼び方……近くないか?)
塾ほりは楽しそうに笑っていた。
一方その頃。
少し離れた場所から、その様子を見ていた山凸秋鬼は、複雑な顔をしていた。
「……あいつ」
「本当に、バカだな……」
拳をぎゅっと握りしめる。
たんぽぽぞうは気づいていない。
この“奴隷契約”が、
ただのプロデュース以上に、
ややこしい関係の始まりだということを。
――第三話・完
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