現実の人物とは一切関係ありません。
「とりあえず……検索するかー」
たんぽぽぞうはスマホを持ちながら、真剣な顔で画面を見つめていた。
奴隷という立場ではあるが、なぜか本人の中では「プロデューサーとしての責任感」が芽生えている。
(プロデュースするからには、流行を知らないとダメだよな)
問題はひとつ。
彼はTikTokに詳しくない。
「最近の流行……っと」
検索結果を眺めながら、たんぽぽぞうはうなずいたり、首をかしげたりを繰り返す。
「ふむふむ……」
「……?」
スクロールしていると、やたら再生数が多い動画が目に入った。
「……なんだこれ」
画面の中では、意味の分からない行動が映っていた。
コメント欄は荒れているが、数字だけは異様に伸びている。
たんぽぽぞうは目を輝かせた。
「こ、これは……!」
「なんて面白いんだ!」
彼の頭の中では、
「迷惑」「非常識」「アウト」という言葉は一切浮かばなかった。
あるのはただ一つ。
(バズってる=正解)
それだけだった。
⸻
十五分後。
「ねえ、たんぞう」
塾ほりが腕を組みながら聞く。
「投稿ジャンル、どう変えるのー?」
「決めたぞ」
たんぽぽぞうは自信満々だった。
「流行りを完全に取り入れる!」
「おお?」
「みんながやってることは、
つまり“ウケる”ってことだ!」
塾ほりは少し考えてから、にっこり笑った。
「なるほどね」
「私がやれば、もっとウケるよね?」
「それな!」
二人の中で、話はすでにまとまっていた。
「じゃあ、外でやろっか❤️」
「よし!」
この時点で、
「それをやる場所は適切か」
「周りの人はどう思うか」
という発想は、完全に欠落していた。
⸻
道を歩きながら、塾ほりは楽しそうに言う。
「なんかさー」
「私たち、最先端じゃない?」
「分かる」
たんぽぽぞうはうなずく。
「理解できないやつが多いだけで、
これは“新しい表現”なんだよ」
完全に勘違いである。
周囲の視線が冷たいことにも、二人は気づかない。
(見られてる=注目されてる)
そう解釈していた。
「ねえ、たんぞう」
「ん?」
「これ伸びたら、
次もっとすごいことしよ❤️」
「おう!」
その言葉に、たんぽぽぞうは少しだけ胸が高鳴った。
(奴隷だけど……)
(普通に一緒に考えて、出かけて……)
(これ、デートみたいじゃね?)
塾ほりはそんなこと知らず、カメラの角度を確認している。
「可愛い私が映ってれば、だいたいOKでしょ」
「まあ、それはそう」
こうして二人は、
自分たちが迷惑をかけているという自覚ゼロのまま、
“バズり”を信じて突き進んでいくのだった。
その先に、
どんな反応が待っているかも知らずに。
――第四話・完。
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