たんぽぽと塾のストーキング恋愛❤️   作:伝説のファミチキ

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この物語はフィクションです。
現実の人物とは一切関係がありません。


第五話「炎上」

「く、くそ……どうしてこんなことになったんだ……」

 

薄暗い場所で、たんぽぽぞうは肩で息をしながらつぶやいた。

隣には塾ほり。

二人とも、さっきまでの勢いが嘘のように黙り込んでいる。

 

「俺たちは……ここで終わりなのか……」

 

――なぜ、こんな状況になってしまったのか。

時は、五時間前にさかのぼる。

 

 

たんぽぽぞうは、その日も“バズり”を信じて疑っていなかった。

 

(流行ってる=正解)

(正解をなぞれば、必ず結果は出る)

 

それが彼の中の、揺るがない理論だった。

 

「見えたぞ!」

 

前方を指さし、声を上げる。

 

「あそこが今日の撮影場所――十蘭だ!」

 

看板を見上げながら、塾ほりは腕を組んだ。

 

「へー。

私の撮影場所としては、ちょっと地味じゃない?」

 

「逆だ」

 

たんぽぽぞうは得意げに言う。

 

「地味な場所でやるから、目立つんだ」

 

「なるほどね」

 

塾ほりはすぐ納得した。

 

「じゃ、行こっか」

 

こうして二人は、何の疑問も持たずに店へ入った。

 

 

店内に入って最初に目に入ったのは、券売機だった。

 

「もちろん」

 

たんぽぽぞうは、なぜか胸を張る。

 

「何も頼まずに帰るのはマナー違反だからな」

 

「ちゃんとラーメンと餃子は頼むぞ」

 

「へー、意外と常識あるじゃん」

 

塾ほりはにやっと笑い、すぐ続ける。

 

「でもさー」

 

「たんぞう、奴隷なんだから奢ってよ〜」

 

「く、くそ……」

 

一瞬ためらったが、たんぽぽぞうは観念した。

 

「……まあ、奴隷だから仕方ないかー」

 

こうして彼は券売機に手を伸ばし、食券を購入した。

 

(プロデュースのための必要経費だ)

そう自分に言い聞かせながら。

 

 

席に着き、食券を渡す。

店内は普通に混んでいて、誰も二人に注目していない。

 

「思ったより落ち着くね」

 

「だろ?」

 

たんぽぽぞうはうなずいた。

 

「ここで“非日常”を入れるから意味がある」

 

完全に分かったつもりだった。

 

しばらくして、ラーメンが運ばれてくる。

 

「よし」

 

たんぽぽぞうはスマホを構えた。

 

「軽く食べ進めてから、撮るぞ」

 

二人は、何事もない顔で準備を進める。

周囲の視線や空気に、違和感を覚えることはなかった。

 

 

「……3、2、1」

 

撮影開始。

 

塾ほりは、いつものようにカメラに向かって笑顔を作る。

 

「今日はねー、いつもと違う動画にしていくよ!」

 

テンションは最高潮だった。

 

「他の人がやってて、めっちゃバズってたから、

私もやってみることにしたの!」

 

何をするかの説明も、本人の中では“普通の流行紹介”だった。

 

「……はい、今日はここまで!」

 

撮影は、あっけなく終わった。

 

「よし、完璧!」

 

塾ほりは満足そうにうなずき、その場で投稿する。

 

 

数分後。

 

「……ねえ、たんぞう」

 

「ん?」

 

「ちょっと見て」

 

スマホの画面には、信じられない速度で増えていく再生数が表示されていた。

 

「す、すご……」

 

「ほら!

たんぞうの言う通りじゃん!」

 

塾ほりは笑顔を弾けさせる。

 

「本当にバズってる!

奴隷にしてよかった❤️」

 

「だろ?」

 

たんぽぽぞうも、思わず胸を張った。

 

「俺の評価、爆上がりだな」

 

二人の中では、完全に成功だった。

 

――その、数分後までは。

 

 

「……あれ?」

 

塾ほりが、首をかしげる。

 

「コメント……」

 

画面をスクロールするたび、空気が変わっていく。

 

「……え?」

 

「……あれ?」

 

好意的な言葉は、ほとんど見当たらなかった。

 

そこにあったのは、

怒り、呆れ、非難、そして通報を促す声。

 

「……なんで?」

 

塾ほりは、理解できないという顔をした。

 

たんぽぽぞうも、スマホを覗き込む。

 

「……炎上、してる?」

 

その言葉が、ようやく現実として落ちてきた。

 

――そして、冒頭の場面へ。

 

「く、くそ……」

 

たんぽぽぞうは歯を食いしばる。

 

「バズったのに……

なんで、こうなるんだよ……」

 

塾ほりは、スマホを強く握りしめたまま黙っていた。

 

二人はまだ気づいていない。

なぜ炎上したのかを。

 

ただ一つ分かっているのは――

“バズり”の先には、

想像していなかった世界が待っていた、ということだけだった。

 

――第五話・完。

 

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