現実の人物とは一切関係がありません。
翌日。
たんぽぽぞうは、自分の部屋の隅で体育座りをしていた。
スマホは伏せて置かれ、通知音を切っている。
それでも、頭の中では昨夜のコメント欄が何度も再生されていた。
(なんでだ……)
(バズったのに……)
(数字は正義じゃ、なかったのか……)
彼の中で信じてきた価値観が、音を立てて崩れ始めていた。
その時だった。
ピンポーン。
家中に響く、やけに澄んだチャイムの音。
「っ……!」
たんぽぽぞうの肩がびくりと跳ねる。
(来た……)
(誰かは知らないが、絶対に来た……)
逃げ場はない。
震える手で、彼は玄関へ向かった。
恐る恐る、ドアを開ける。
そこに立っていたのは――
見覚えのある制服姿。
「……やあ」
警官は、にやりと笑った。
「お前、またやったな」
「ぶ、ぶだばらうゆ……!」
かつて一度、意味不明な理屈で許してくれた警官。
その再登場は、最悪の形だった。
「話は署で聞く」
有無を言わさぬ口調で、たんぽぽぞうは連れて行かれた。
⸻
警察署。
無機質な廊下を歩かされ、取調室の前で止められる。
ドアが開いた瞬間、たんぽぽぞうは息をのんだ。
「……ほ、ほり?」
そこには、すでに塾ほりが座っていた。
「やっほー」
まるでカフェにでも来たかのような軽い声。
「お前も……連れてこられたのか……」
「そだよー」
緊張感の欠片もない。
「……会話をするな」
ぶだばらうゆが、低い声で遮る。
その圧に、たんぽぽぞうは思わず背筋を伸ばした。
(ああ……)
(今回は、前と違う……)
胸の奥が、じわりと冷える。
「俺たちの……」
たんぽぽぞうは、かすれた声でつぶやく。
「俺たちの夢は……ここで終わりなのか……」
その言葉に、塾ほりは少しだけ考える素振りを見せた。
そして、ぽん、と手を打つ。
「ねえ、たんぞう」
「な、なんだ……?」
「提案があるんだけど」
嫌な予感がした。
「たんぞうはさ、私の奴隷じゃん?」
「……うん」
「じゃあさ」
塾ほりは、にこっと笑った。
「私の罪、全部被ってくれるよね?」
一瞬、時間が止まった。
(え?)
(それって……)
「え、も、もちろん……」
口が、勝手に動いていた。
(俺は……)
(奴隷だから……)
それが、当たり前になっていた。
ぶだばらうゆは、静かにうなずく。
「決まりだな」
その一言で、全てが終わった。
⸻
こうして、たんぽぽぞうは再び逮捕された。
連行される背中を、塾ほりは手を振って見送っていた。
「ありがとね、たんぞう❤️」
その声は、やけに明るかった。
⸻
その頃。
遠く離れた場所で、一人の少年がスマホを握りしめていた。
山凸秋鬼だ。
画面に映るニュース、噂、名前。
「……ふざけるな」
拳が震える。
「たんぽぽぞうが……
あいつが、全部被った……?」
怒りは、彼の中で限界を超えた。
「もう……いい」
その瞬間、世界が揺れた。
詳細を語る者はいない。
ただ一つ確かなのは――
山凸秋鬼が本気で怒った結果、世界は破壊されたという事実だけだった。
⸻
そして、物語はこう締めくくられる。
happy end
……と、誰かが言った。
本当にハッピーだったのかどうかは、
誰にも分からないまま。
――最終話・完。
明日には新シリーズハンドグリッパーズが始まります。
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