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Side story of ULTRAMAN
Extra edition of ULTRAMAN80
ULTRAWOMAN YULLIAN
-She is incarnation of Maiteya Bodhisattva-
ウルトラマン物語
「光の国の女戦士ユリアン-弥勒菩薩の化身-」ウルトラマン80外伝
「大丈夫?新井隊員!」
爆風で吹き飛ばされ、目を閉じたまま、俺は意識を失いそうになった。UGM見習い隊員としての初の実戦にこのざまだ。そこへ涼やかな女の声がしたのだ。
俺の腕を掴んで起こしてくれたのは、オレンジ色のUGMユニフォームが真新しい星涼子隊員だ。目を開いたとき、彼女の右腕の制服の色と右手首のクリスタル状の宝石が埋め込まれたブレスレッドが視界に入り、彼女と確信した。ブレスレッドはなんでも母親の形見らしい。少し古風だが美人な星涼子は、俺の方を見てくれているのかと思いきや、怪獣のほうを見あげていた。古代怪獣ゴモラによく似た、まだコードネームが付いていないあの怪獣を睨んでいたのだ。
彼女の横顔は美しかったが、いつもの慈悲に満ちた菩薩のような表情ではなく、仏法に敵対する者を力尽くでやめさせる不動明王のように見えた。円らな瞳に高い鼻、潤んだ唇、黒いくせ毛のある短めの髪、よく日焼けした肌、そんな美しい顔は街を破壊し続ける怪獣を許さないという決意に満ちていたのだ。
「許さない。新井君、ここはお願いね」
そう言うと、星涼子隊員、おれの憧れの女(ひと)は走り出した。優しく慈しみの表情で俺をいつも見てくれる。勇気もあって賢いが、反面、一般常識にはうといところがあり、よく周囲を笑わせている。星涼子が走る先は鉄製のフェンスだ。ここは高さ三十メートル、八階建てのビルの屋上、彼女はどこへ向かうと言うのだろう。
「たあああああああ!」
そう叫びながら星涼子は走り出した。
「星隊い・・わあああああああ」
俺が星隊員を呼ぼうとした時、頭上でUGMの戦闘機スカイハイヤーが撃墜されたようで、その破片が落ちてきた。(後で分かったことだが、その戦闘機のパイロットは脱出に成功したらしい)
俺は両手で後頭部を守りつつ、無数に落ちてくる破片から身を守ろうとした。その時、女性の叫び声、(おそらく星涼子だろう、ゆー何とかと聞こえたので、許せないとでも言ったのか、今となっては分からない)が聞こえた刹那、雷のような激しい光と凄まじい音がビルの屋上を包んだ。うつ伏せになった俺が感じたくらいだから余程の光と音響だろう。
俺が頭を上げると、ビルの横に立っていたのは銀色のボディに真紅のラインをまとった巨人だ。
「う、ウルトラマン?・・・」
その巨人の横顔を、おれはまじまじと見た。ボディ同様顔の正面は銀色だ。額には仏像の白毫(びゃくごう)のような丸いランプがあり、黄色い複眼のような両目の間には高い鼻がある。その下には他のウルトラ戦士同様、形だけで動かない口があった。頭頂部にはトサカのような突起があって、それは後頭部まで続いている。トサカと耳とその下のイヤリング状のもの、それらは顔の正面と違い、真紅の色だ。ボディラインに流れる色と同じでもある。その顔の造形は仏像、とくに弥勒菩薩像のように見えた。
黄色く光る眼は怪獣を睨んでいるようで、慈しんでいるようにも見える。俺はビルの屋上を走った。フェンスは大人の女性が一人通れるくらいの穴が開いていたで、俺はそこを通った。
そのウルトラマンの右腕は天に伸び、その右手首にはクリスタル状の宝玉が埋め込まれたブレスレットがあった。どこかで見たようなブレスレット左腕は胸の前で構えている。そう、胸と言えば、ウルトラマンでありながら、両の胸は人間の女性のように膨らみ、その先端は突起状になっていた。
見下ろすとバストラインから続く腰は括れ、ヒップラインはふくらみ、太ももはふっくらとし、さらに脹脛(ふくらはぎ)は絞り込まれている。そう、彼は、いや彼女はウルトラマンとは言っても男ではなく、女のウルトラ戦士なのだ。
「ウルトラウーマン、ユリアンだ!」
俺は叫んだ。そうユリアンだ。彼女は弥勒菩薩(みろくぼさつ)、天界で何千年も生き、何十億年かの未来に人々を救済する弥勒菩薩の化身だ。
プラズマとマイナズマの二頭の怪獣との戦いで、地球の平和を守っていたウルトラマン80(エイティ)は倒され、偶然だが同時にUGMの矢的猛隊員は行方不明となった。見習い隊員だった星涼子が正式な隊員に昇格し、俺新井正人が見習い隊員となった。
そう、ユリアンだ。80が倒された後、一人の女性のウルトラ戦士が現れた。彼女はプラズマとマイナズマに一度は破れたものの、UGMの支援を得て奴らを倒すことができたのだ。地球防衛軍UGMは彼女がおそらく新たに光の国から派遣されたウルトラ戦士だろうと推測し、ウルトラウーマン81と名付けられることになった。だが、星涼子隊員はこう言った。
「エイティワン?それより、ユリアン、ユリアンでどうでしょう?ウルトラウーマンユリアン!」
UGM隊長の大山は星涼子をじっと見つめ、彼女の提案をしばらく考えていたが、やがて言った。
「いいだろう、ユリアンと命名しよう」
そのユリアンは次に右手を右肩の前で構え、左の手刀を腹の前で構えると、
「タアアアアアアア!」
と叫びながらユリアンは走り出した。どこかで聞いたことのあるような声だと思いつつ、俺はユリアンを応援した。
片側二車線の道路を地響きを上げて走ったユリアンは、ジャンプをして怪獣の腹を右足でキックしようとしたが、怪獣は長く太い尻尾を振りまわし、女ウルトラマンを建設中の高さ六十メートル位の高層ビルに叩きつけた。
「アァウウウ!」
ビルの中に全身四十メートル台後半くらいのユリアンの全身がすっぽり埋まった。痛みからか、もがいても身体が自由にならないからか、巨人女の呻きが街に響いた。そこへゴモラ似怪獣が突進してくる。
「シェヤ!」
そう叫ぶとユリアンの額のランプからビームが発射された。だがその光は弱々しく怪獣は少しも痛がらず、突進を続け、ビルごとユリアンを地面へと押し倒したのだ。
激しい地響きと砂煙が街を覆った。
「グオオオオオ!ギャオオオオオオ!」
「ウウウ、イヤァウ!アウウ!タアアアアア!」
怪獣の叫びとユリアンの悲鳴とも叫びともつかない甲高い声が煙の向こうから聞こえてくる。居てもたってもいられなくなった俺は階段へと走った。何とかしてユリアンを助けるためだ。階段室のドアノブに手をかけた時、俺は後ろを振り返った。
「そうだ!星隊員は?」
一瞬躊躇した俺だったが、破れたフェンスの方向に寺か神社でお祈りするように手を合わせると、階段を駆け下りていった。
「いまは、ユリアンを、ウルトラウーマンを助けなくては!彼女は命がけで地球の為に戦ってくれている!星隊員許してください!」
一方、土煙のなかではゴモラに似た怪獣に押し倒されたユリアンがなんとか逃れようともがいていた。
「シュウアァアアアア!アウ!」
だが、怪獣は重く動かない。額のビームランプが点滅を始め、光を帯びた両目もその光度を落とし始めていた。
果たしてユリアンは勝てるのだろうか。
立て!ウルトラウーマンユリアン!ウルトラマン80がいなくなった今、地球の平和は君の肩にかかっているのだ。立ち上がれ!
「新井隊員!新井!応答せよ!」
階段室を八階まで駆け下りたところで、通信機が鳴り、UGM本部司令室にいる兵器開発部部長の梶洋一の声がした。俺、新井正人は八階と七階の間の階段の踊り場で足を止めた。
「こ、こちら、ハアハア、あ、新井です!ハアハア・・」
「新井隊員!星隊員はどうした?それと例の新兵器は!」
例の新兵器と梶から聞いた俺は、自分の浅はかさを責めた。この十階建てのビルの屋上にいたのは、梶が開発した新兵器「携帯用光子プラズマミサイル」をゴモラ似の怪獣に使用する為だったのをすっかり忘れていたのだ。
「怪獣はシン・ゴモラと命名された。そのシン・ゴモラに例の新兵器・・」
怪獣の名前などどうでも良かったが、俺はこのタイミングで通信をくれた梶に心の中で感謝した。さすがTAC以来の対怪獣兵器の開発者にして歴戦の勇士だ。
「星隊員は行方不明です。ですが、やります!星隊員の分まで!感謝します!梶部長!」
「お、おい、待て!新井、その新兵器は・・」
俺は梶の言葉を最後まで聞くことなく通信を切った。きっと、危険だ、逃げろと言うつもりだろうが、そんなことは百も承知だ。俺は下りてきた階段を再び二段飛ばしで駆け上がって行った。
後に資料赤外線映像を見て知ったのだが、その頃ウルトラウーマンユリアンは身長六十メートル、体重二万五千トンのシン・ゴモラに押し倒されていたが、なんとか逃れ、さらに自分よりも大きい怪獣を投げ飛ばしていたのだ。華奢そうに見えるユリアンのどこにそんな力があるのだろう。そう言えば星涼子も運動神経がオリンピック選手並みに良いだけでなく、力持ちだった。
ユリアンとシン・ゴモラの重みで倒壊し、破壊された建設途上のビルの粉塵で街は視界がゼロに近く、地球防衛軍の隊員、警察、消防の人員、逃げ遅れた人々を咳き込ませ、苦しめていた。ユリアンは三日月型の角と太く長い尻尾が特徴のシン・ゴモラを投げ飛ばした後、両腕を胸の前でX字状に交差させると「シェアッ!ヤァ!」と叫んで全身を光らせ、粉塵を光の力でたちまち除去してしまった。
俺が屋上に戻ったのはそんな時だった。ユリアンが立ち上がっていて、シン・ゴモラが三百メートルほど西にいて起き上がろうとしていたのだ。
「ユリアン!頑張っているな!」
俺は屋上の真ん中に走って行った。そこには星涼子とともにここに運んだ、バズーカー砲のような全長150センチ余りの新兵器「携帯用光子プラズマミサイル」がコンクリートの床の上に横たわっていたのだ。俺がそれを肩に担ごうとしたとき、轟音と地響きがした。
ユリアンが内股にしていた長い脚を開き、両手を振って走り出したのだ。二百メートル程走ったウルトラウーマンは百五十メートルほどジャンプをすると、右足を前に向け、立ち上がったシン・ゴモラの背中にキックを見舞った。
「ガゥオオオオオン!」
咆哮をあげて倒れかけたシン・ゴモラは着地したユリアンにその巨体の向きを変えようとした。そこへユリアンは右手でチョップを放ち、続けて怪獣の腹部に左右の拳を連打した。
その顔は慈悲に満ちた弥勒菩薩ではなく、悪をゆるさない正義の戦士のものだった。
「ユリアン、やるじゃないか!俺だって負けていられない!」
遠くの星から来た女が、何の縁もないこの地球の人々のために戦ってくれているのだ。見習いとはいえ地球防衛軍UGM隊員のプライドにかけて、俺は新兵器を使い、怪獣シン・ゴモラを倒す決意をした。
俺がミサイルを右肩に担いで立ち上がった時だ。足元にUGM仕様の白いヘルメットが転がってきた。
「星隊員のものだ!」
おそらく、星涼子は命を落としたに違いない。新人、と言うよりも見習い隊員である俺を優しく導いてくれた涼子。二十一歳の俺よりも年上だとはおもうが、時には年下の女子高校生に見えるときもあった。そう言えば一度、司令部でコーヒーを飲みながら彼女に年齢を聞いたことがある。
「私?七千八百歳よ」
美しい星涼子は真面目な顔をして答えた。涼子はキョトンとしていただろう俺の顔を見るや右手で口を隠しつつ言った。
「も、勿論冗談よ。私は、って、レディに年齢を聞くのはこの星では失礼にあたるのではないの?」
「この星?」
「あ、そ、それは、この星涼子に年齢を聞かないでという意味よ!」
意味不明なことを言う涼子に俺が言い返そうとしたとき、大山隊長が彼女を呼び、会話は終わった。もう、彼女とたわいのない会話をすることはないのだ。俺が涼子を殺したシン・ゴモラを許せないと改めて思ったその時だ。
「アァウゥウウウ!」
甲高い悲鳴が空に響いた。シン・ゴモラの長い尻尾がユリアンを空に投げ飛ばしたのだ。
そして光の女戦士は俺がいるビルのすぐに近くに落下した。ドーンという音と砂煙が起こった。シン・ゴモラはユリアン以上の轟音と地響きを伴いながら彼女に駆け寄り、太い脚で何度も踏みつけた。
ビルの屋上の縁に駆け寄った俺は、括れた腰のあたりを何度も踏みつけられ、右手を長く伸ばしつつ立ち上がろうとするも、果たせないユリアンの苦しみ顔が見えた。右手首のブレスレットが何度か日光の反射で輝いた。額の白毫がまたも激しく点滅をし、複眼のような両目の光も力を失ってきているように見えたのだ。ウルトラマン80ら歴代のウルトラ戦士は地球上での活動時間は三分と聞いたことがある俺は、すでにユリアンが出現してから三分どころか、五分は経っていることに気が付いた。
「もう、時間がない!」
「くらええええええええ!」
俺は叫びつつ引き金を引いた。UGMの新兵器光子プラズマミサイルは怪獣シン・ゴモラの右わき腹に命中した。その直後、怪獣はユリアンを踏みつけていた足を止め、顔を振り回し、小さな両手を震わせ、長い尻尾を上下に揺らせて苦しみだした。さらに上半身を中心としてカメラのストロボのようにあちこちが輝きだしている。
「やったぞ!ユリアン、立ち上がるんだ」
俺の声が聞こえたのかどうかはわからないが、ユリアンはふらふらと立ち上がるとこちらを見降ろし、コクリと頷いたように見えた。そしてユリアンは後ろに二百メートル程ジャンプすると左腕を上に、右腕を横に伸ばしてL字型に組んだ。ウルトラマン80の必殺技サクシウム光線と同じポーズだ。ユリアンは光線でシン・ゴモラにとどめを刺すのだろう。
とその時、再び通信機が鳴り、俺はバズーカーを下ろして応答した。
「こちら新井です!」
「梶だ!新井隊員、何故応答しなかった!」
「そんなことより梶部長の新兵器、命中させましたよ!」
「命中?だ、誰が、何故?」
「誰って俺に決まっています。何故ってあなたが星隊員に託したじゃないですか。それに今、ユリアンがとどめをさそうと!」
「ユ、ユリアン、ウルトラウーマンユリアンがとどめを、まさかサクシウム光線?」
「た、たぶん・・」
「馬鹿、その新兵器は欠陥があると分かったので使用を禁ずると言おうとしたのにお前は通信を切って・・」
「欠陥?」
「光子プラズマは怪獣の体内で爆発せず、そのエネルギーを著しく増幅させることがわかったんだ。そのパワーはざっと計算したところ・・」
「計算なんてどうでもいい!どうなるんです?」
「怪獣シン・ゴモラがさらに巨大化する可能性がある。それにユリアンの光線がウルトラマン80と同じサクシウムなら、命中すれば、反作用を興して東京が、関東平野が、いや、地球の北半球が消滅するかもしれない!」
「な、なんだって、そ、そんな!」
見上げると腰をかがめたユリアンの左腕が光り始めていた。光の女戦士はサクシウム光線を発しようとしているのだ。
「だ、だめだー!ユリアン、光線を撃ったら大変なことになるうううう!」
俺の声が聞こえたのか、ユリアンは腰を伸ばし、腕を下ろしてシン・ゴモラをの方を見た。
気のせいか少し大きくなったような気がする。
ユリアンは小走りでシン・ゴモラに向かっていった。苦しむ怪獣は少しずつ大きくなりながら地上に倒れこんだ。すでに体高は八十メートルにはなっており、体重は三万トンを超えているだろう。そんなシン・ゴモラをユリアンはなんとゆっくりではあるが、両手で持ち上げたのだ。
「ユリアン、どうするつもりだ!」
苦しみ暴れる怪獣シン・ゴモラを持ち上げたユリアン。長い脚、弓なりの背中が美しい。そう言えば初めて俺がユリアンを対プラズマ・マイナズマ戦で見た時も彼女の弓なりの美しい背中と腰の括れ、ヒップラインを見て思わず「綺麗だ」とつぶやいたものだ。
ユリアンのポニーテールのような赤いトサカの後ろが動いた。彼女はこちらに振り向いて頷いたように見えた。
「シェアアアアアアアァ!」
そう叫んだウルトラウーマンユリアンは空高く飛び立った。やがてその姿は豆粒のように小さくなり、やがて青空に眩い光点が浮かんだ。
後に地球防衛軍月面基地が撮影した画像で分かったのだが、ユリアンはシン・ゴモラを掴んで地球の成層圏を飛び出すと月軌道上を越えたところで、新ゴモラを放出した。すでに隊長百二十メートルほどになっていた怪獣に向けて、ユリアンはゆっくりと胸前で腕をL字状に組むとサクシウム光線を放ち、シン・ゴモラを消滅させたのだった。
少しずつ小さくなっていく光を見上げながら俺は言った。
「ありがとう、ウルトラ―ウーマンユリアン、そして星隊員、いや涼子さん、あなたの仇は俺とユリアンで取りましたよ!」
憧れの女性の仇をとったこと、東京壊滅の危機を救ったことでホッとしたのか、俺は気を失ってその場で倒れこんだ。
上も下もない空間の中で俺は浮いていた。目の前には巨人サイズではなく等身大のユリアンがいたのだ。菩薩像のように銀色の神々しい顔と肢体に思わず見入った俺だった。地球を怪獣や異星人から守ってきた歴代のウルトラ戦士に似た特徴のボディだが、胸の膨らみとくびれた腰から続くヒップライン、内股になった長い脚が女性であることを示している。
そんなユリアンの口は開かないが、彼女は静かに頷き、黄色い眼が一瞬大きく光り、一見無表情だが優しく微笑んでいるように見えた。そんな彼女に手を伸ばすと、彼女は身体の向きを変え、弓なりの美しい背中を見せつけた後、どこへともなく飛び立っていった。
(おれはユリアンと一緒に戦ったのだ。あの遠くの星から来た光の女戦士と俺は、何かわかりあえたのかもしれない)
そう思った時、俺を呼ぶ声が聞こえて来た気がした。憧れの女性の声だ。もし、彼女とユリアン、どちらか選べと言われたら、おれは迷ってしまうだろう。
「大丈夫?新井隊員!」
意識を失っていたらしい俺は、涼やかな女の声で我に返った。俺の腕を掴んで起こしてくれたのは、オレンジ色のUGMユニフォームが真新しい星涼子隊員だ。目を開いたとき、彼女の右腕の制服の色と右手首のクリスタル状の宝石が埋め込まれたブレスレッドが視界に入り、彼女と確信した。ブレスレッドはなんでも母親の形見らしい。少し古風だが美人な星涼子は、円らな瞳を大きく開けて俺の方をじっと見てくれていた。
彼女は美しく、いつもの慈悲に満ちた菩薩のような表情だった。
「りょ、いや、星隊員、生きていたのですか?」
「ええ、この通りよ。それにありがとう。あなたのおかげであの怪獣を倒すことができた。あなたの助けがなければ、私は倒されていた・・・」
一瞬、涼子の表情がユリアンに重なって見えた。全然違う顔なのにまるで同一人物にさえ見えたのだ。でも、彼女が言う事に少し違和感を覚えた俺は言った。
「って、シン・ゴモラを、あの怪獣を倒したのはユリアンですよ」
「あ、そ、そうね、そうよね。い、いや、ユリアンならきっとそう言うかもって思ったのよ」
おれは身体を起し、右手で口を押えて何か慌てていた涼子の両肩を掴んだ。
「星隊員、無事でよかったです」
俺が言うと涼子はコクリと頷いてくれた。デジャブを覚えた俺も頷き返した。
そして二人は同時に立ち上がった。倒壊したビル群を見た後、空を見上げた俺は怪獣を倒したユリアンは無事だろうかと思った。思っただけで口には出していない。
「きっと、ユリアンは無事よ。あなたに感謝して、見守ってくれているわ」
そう言った涼子の横顔を俺はジッと見つめた。彼女はテレパスなのか?俺は不思議に思ったが、なんとなく納得もした。
(いつの日か、いやすぐにでも正式な隊員となり、俺は涼子に思いを打ち明けようと。そのためにも俺は地球の平和を守っていくぞ!)
「その意気よ!」
そう言った涼子は悪戯っぽく微笑むと、階段室へ向かって歩いて行った。
(まさか、俺の気持ちに気づかれたかな?ま、いいか)
「待ってください、涼子隊員!」
そう叫んだ俺は、憧れの女性を追いかけた。ユニフォームに隠されてはいるが、弓なりの背中とくびれた腰つきが綺麗だった。
おわり
「おまけストーリー」
「ユリアン!」
暗い部屋が小さく響いた声とともに明るくなった。ここは地球防衛軍UGM隊員星涼子が住む神奈川県厚木市の小田急電鉄小田原線愛甲石田駅近くにある五階建てのマンションだ。涼子が、クリスタル状の宝石を中央部に埋め込んだブライトブレスレット、それをつけた右手首を胸の前にかざして発声すると彼女の身体は眩く発光し、ベッドの上でウルトラウーマンユリアンに変身した。ブレスレッドは星涼子がユリアンに変身、いや元の姿に戻るためにアイテムではあるが、彼女がM78星雲のウルトラの星、光の国の王族である証でもある。
地球人のDNAはウルトラ一族のものに書き換えられ、星涼子としての遺伝子情報はブレスレットに記録される。
等身大身長168センチのユリアンはベランダに出、周囲に人の気配がないことを確かめた。最終電車の警笛が聞こえた後、ユリアンは星が輝く空へと飛び立った。
「厚木市上空に飛行物体、人間位の大きさですが、あっ大きくなりました!およそ五十メートル!」
UGMの司令部ではレーダー監視員が当直の大山隊長に報告した。大山はにやりと微笑むと飲んでいたコーヒーのカップをテーブルに置いた。
「ユリアン、八番目のウルトラマン、いや最初のウルトラウーマンだな」
四十七メートルに巨大化したユリアンはあっという間に大気圏外に飛び出した。その映像は衛星軌道上の地球防衛軍監視衛星に捉えられた。
銀色のボディに赤いライン、今までこの地球を守ってきたウルトラ戦士たち、光の国の宇宙警備隊員たちと似ているが、胸の膨らみ、括れた腰つき、内股の足など、その特徴は女性のものだった。ウルトラ戦士たちにも男女の差があることが改めて確認されたのだ。
地球に怪獣や異星人の脅威にさらされるようになってから、地球の平和はウルトラの戦士たちによって守られてきた。ウルトラマン80は七番目の戦士だったがプラズマとマイナズマによって倒されてしまった。80の体は宇宙警備隊銀十字軍に収容され、故国へと送られたのである。その後、地球の平和はユリアンが守ることとなったのだが、それはあくまで暫定的なものであるはずだった。
程なく、ユリアンは月面静かの海の近くに降り立ち、宇宙を見上げたその視線の先、三百万光年先には彼女の故郷M78星雲光の国がある。80が収容された後、後任の宇宙警備隊員がすぐにでも派遣されてくるだろうとユリアンは思っていたが、何故か光の国と交信ができなくなり、その後も現れる怪獣たちをユリアンが相手にすることとなったのである
ユリアンの脳裏にウルトラマン80と彼の地球での仮の姿、矢的猛の顔が映った。ユリアンが愛する男だ。彼女が地球に来たきっかけは80を守るためだった。彼の代わりの戦士がやってくるまで、ユリアンは光の国の王女の名に懸けて地球の平和を守ることを月面にて改めて誓った。
ユリアンは青い星を見上げた。そこに何故か映ったのは80でも矢的猛でもなく、UGMの見習い隊員である新井正人だ。ユリアンは胸に両手を置き、首を振った。何故か彼女はあの地球人を弟のように思ってしまうのだ。いや、弟とは違うかもしれない。
彼はユリアンの地球での仮の姿である星涼子に好意を持っている、そのことは痛いほどに分かる。だが、地球人の寿命は悲しいほど短い。80のことがあろうとなかろうと彼の想いを受け入れることはできないだろう。それと彼は地球防衛の志を持ち、UGM正規隊員を目指して頑張っている。
ユリアンは足を屈伸させ、月を飛び立った。想いを受け入れることはできずとも、彼を奮起させることはできるはずだ、とユリアンは思った。彼のUGM正規隊員となりたいという思いを応援したいのだ。明日、新井とともに対怪獣戦の訓練を受ける。先輩隊員として彼を思い切り鍛えてやろうとユリアンは決意した。
ユリアンの緩んだような表情を監視衛星がとらえた後、彼女の身体は日本上空の衛星軌道上で消えた。
月の上に残されたユリアンの足跡、そこに何者かの巨大な影が映った。影は座り込むと「手」を伸ばし、ウルトラの王女の足跡をいやらしい「手つき」で撫でまわすのだった。
Side story of ULTRAMAN
Extra edition of ULTRAMAN80
ULTRAWOMAN YULLIAN
-She is incarnation of Maiteya Bodhisattva-
END
ウルトラマン物語
「光の国の女戦士ユリアン-弥勒菩薩の化身-」ウルトラマン80外伝
おわり