ご都合主義があるかもしれませんが、その点はご了承ください。
「う…ぐぅぅ…」
傷だらけとなった黒い肌の大男が祭壇の前に倒れている。
彼が登場していたと思われるDホイールは砕け散っている。
周囲にはハチドリ、巨人、蜘蛛、コンドルなどの地上絵が描かれていて、祭壇はまだ新しいのか、傷や欠けが少なく、7体のとある竜の彫刻も風化していない。
「ハハハ…これが地縛神、冥界の力が秘められた最強のカード」
祭壇の頂上にある竜の石像は砕け、3人の男がいることは確認できる。
しかし明りのない真夜中であるため、顔を見ることができない。
「このカードさえあれば…私はあの男に復讐が…ハハハハ」
男の手には8枚のカードが握られている。
「よせ…そのカードを解放してはならない…!!」
ここで場所が大きく変わる。
数多くのビルが立ち並ぶ街の港に一隻のフェリーが到着する。
そのフェリーから数多くの車両が降りる中、1台のDホイールが降りてくる。
名前はストライクチェイサー。
黒と赤と金を基調とし、型は過去にネオ童実野シティのセキュリティが使用していたDホイール『チェイサー』と似ているが、かなりの改造が施されたために性能は段違いに高い。
そして、そのDホイールに乗っているのは…。
「ようやくついたか…。アレクサンドリア」
ヒイロ・リオニス。
過去に遊星たちと共に戦った元シグナー。
戦いから5年の年月が過ぎているものの、服装は大して変わっていない。
そして、彼の世界を巡る旅はまだ続いている。
もうすでにヒイロが発言しているが、彼が到着した町はアレクサンドリア。
かつてが古代エジプト最後の王朝、プトレマイオス朝の都であり、世界の結び目とも言われていた場所。
現在はエジプトとアラブ屈指の工業都市として、過去と変わらぬ輝きを見せている。
「寝る場所を探すか…」
入国手続きを済ませ、街から離れる。
そして、海沿いでかつ人の少ない場所を見つけるとすぐにテントを張った。
「クリクリー…」
「マスター、これで2週間連続での野宿だ。たまにはきちんとしたベッドで…」
「俺は野宿の方が向いている」
《プチクリボー》と《EMウィンドナイト》が心配そうに見つめるが、気にも留めない。
そしてキャンプ用のコンロを使って湯をわかし、キャンプ食品のエビピラフをそれでもどして食べる。
「更にまたインスタント…体に悪い」
「簡単に死にはしない。腹に入ればどれも同じだ」
「しかし…はぁ」
何を言っても無駄だと分かっている以上、ため息をつくしかない。
「もう5年か…ネオ童実野シティを出て」
かつて、共に戦った仲間たちのことを思い出す。
遊星、ジャック、クロウ、アキ、ブルーノ、龍亜、そして龍可。
彼らとまともに連絡を取ったことは旅に出てからあまりない。
「今度、電話だけかけておくか」
食べ終わり、ゴミを袋にしまうとテントに入れる。
そしていつものように着替えずに寝袋の中に入り、眠りについた。
「ヒイロ…ヒイロ…」
「…」
「ヒイロ・リオニス。目を覚ましてください」
「…」
暗闇の中男の声がするが、ヒイロは目を覚まさない。
「ふふ…。どうやら私はあなたにとって嫌いな人間に分類するようですね」
「…当たり前だ。レクス・ゴドウィン」
「では、目を開けないまま聞いてください。実は…」
「地縛神が復活しそうなのだ」
「兄さん…」
ゴドウィンの横に、ルドガーが現れる。
「お前たちが地縛神ってオチは無いだろうな?というより、疫病神か」
「きつい冗談ですね…。はい。とある邪悪な3人が」
「かつてダークシグナーだった男を破り、地縛神のカードを手に入れた」
「そして、その1枚が…《地縛神スカーレッド・ノヴァ》」
「《スカーレッド・ノヴァ》…」
ヒイロの脳裏にジャックの《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》が浮かぶ。
「だが、奴はジャックのバーニング・ソウルで失われたはずだ」
「ええ…。しかし、バーニング・ソウルは《地縛神スカーレッド・ノヴァ》の力を奪ったにすぎません」
「…本体は倒せていないということか…」
「そういうことだ。あの地縛神は1万年の眠りで力を呼び覚ました。だが…」
「人々の魂を生贄にすると、それだけ早く力を取り戻してしまう」
最悪な事態を想定し、冷や汗を浮かべる2人に対してヒイロは表情1つ変えず、目を閉じたままだ。
「私達はジャックが《スカーレッド・ノヴァ》の力を奪ったおかげで、奴を完全消滅させるまであと一歩というところまでいきました。しかし…」
「そのバカな3人組がカードを奪ったことで失敗した…か?」
「はい…。すでに現世に肉体のない私たちはこうしてあなたに頼むしかありません」
「その3人組は今、エジプトにいる」
「ちっ…」
舌打ちと共にヒイロは目を覚ます。
しかしそこにはレクス達はいない。
そして、いるのは…。
「オラァ!!」
斧を持った黒マントの大男だった。
「くっ!」
ヒイロめがけて振り下ろされる斧をなんとか転がって回避すると、寝袋に入ったままその男に足払いをする。
「ぐわぁ!!」
転倒したのを見計らうと、わずかな時間で寝袋を取り、必要最低限の荷物が入ったかばんを手に取る。
そして、それから拳銃を取り出し、立ち上がった男に向ける。
その銃はアメリカで旅をする際に護身用で購入したもので、ライセンスもとっている。
「じゅ…銃…?」
「斧を捨てて出ていけ」
「へっ…」
「!?」
大男がにやっと笑うのと同時にテントにDホイールが突っ込んでくる。
「今度は何だ!?いや…これは…」
すんでのところで避け、Dホイールを見る。
そのDホイールはかつてダークシグナーになった鬼柳が乗っていたものと同じで、乗っているのは大男と同じマントをつけた優男だ。
「暗殺者か…」
暗殺者を思い浮かべるにはわけがある。
アルカディア・ムーブメントのメンバーとしてさまざまな仕事をしていた過去があるためだ。
しかし、簡単にやられるわけにはいかない。
ヒイロはすぐにストライクチェイサーに乗り、逃走を試みる。
「くそっ…!!」
舌打ちをした大男は斧を投げ捨て、あの優男と同じDホイールに乗ってヒイロを追跡する。
(何のつもりだ、奴らは…。本気で俺を殺そうとしていた)
背後から銃声が鳴り、銃弾がヒイロの左ほおをかすめる。
「何でもありか…」
銃弾を避けるため、ブレーキをかけずに不規則に動き始める。
「フフフ…いいですよ。彼を始末し、《マリンフォース・ドラゴン》を手に入れれば…我が主の復活が早まる」
遠くからその光景を見つめるあの2人と同じマントをつけた男は真っ黒なカードを見る。
その男の白めの部分は黒く染まっていて、右頬には赤い縦のラインが一本刻まれている。
(…おかしい…)
町に入ってしまったヒイロは不審に感じ始める。
腕時計を見ると時刻は午前8時。
しかし、走っても走っても人影がない。
まるで、ダークシグナーによって占領されてしまった旧サテライトのようだ。
「(地縛神のせいか!?)…!!」
追いかける2人の男がデッキからカードをドローし、モンスターカードをディスクにセットする。
すると紫色で4本足の、牛のような角のある獰猛な獣と《C・ドラゴン》が現れ、実体化する。
「《百獣王ベヒーモス》と《C・ドラゴン》だと…!?」
実体化した2体のモンスターがヒイロに襲い掛かる。
「…。《マリンフォース・ドラゴン》!!」
「任せて!」
《マリンフォース・ドラゴン》のカードをセットすると同時に、胸ポケットに入れていた命の石が光り、《マリンフォース・ドラゴン》が実体化する。
そして、水のブレスによって2体のモンスターを押し流した。
命の石のおかげで、ヒイロは《プチクリボー》と《マリンフォース・ドラゴン》、《EMウィンドナイト》のみだが一時的な精霊の実体化が可能になっている。
(我が傀儡よ…我を器から解放せよ)
「はい…我が神よ」
ビルの上にいる男が真っ黒なカードをデュエルディスクにセットする。
すると、街が大きく揺れ始める。
「揺れだと…?」
「魂の炎宿りし紅蓮の悪魔よ、惰生むさぼりし魂を喰らい尽くせ!《地縛神スカーレッド・ノヴァ》!!」
彼の目の前の道路に地割れが発生する。
地割れと揺れにより、路上に置かれていた車両が落ちていく。
そして、そこから巨大な火柱が上がり、その中から体中に溶岩と同じ熱を発する赤い蛇を宿し、縦長の長方形のような頭の巨人が現れる。
その大きさは東京タワーの半分程度だ。
「赤い…だがこの気配は!?」
その巨人から感じる気配。
忘れもしない、それは人々の魂を糧とする地縛神のそれだ。
「ということは…奴が《地縛神スカーレッド・ノヴァ》!」
「グオオオオオオオ!!!!!」
《地縛神スカーレッド・ノヴァ》の蛇、そして頭部の口から赤い光線が放たれる。
光線に触れたビルや車両、道路が一瞬で溶けてしまう。
「ちっ…奴の攻撃を受けたらひとたまりもない!!」
光線を避けながら、街への被害を避けるために外へ出ようとする。
しかし、光線を受けたビルが揺れと共に倒壊を始め、巨大な瓦礫が降ってくる。
「…!!」
ヒイロの姿は瓦礫の中に消えて行った。
(まだだ…まだ力が足りない)
「しかし、我が神よ。奴の死体から《マリンフォース・ドラゴン》を回収しなければ…」
(そのようなもの、どうでもよい。我が傀儡よ。主はただ魂を我にささげよ!!すべては主が力を得るために…)
「はい…我が神」
赤いオーラを宿した男が一部が廃墟と化した街の路上へゆっくり降りていく。
そして、瓦礫に押しつぶされている2人の男を見る。
(この傀儡どもはまだ使える…)
黒いカードから赤い光が発し、それと同時に2人が赤いオーラに包まれる。
そして自ら瓦礫をどかし、ゆっくり立ち上がる。
それと同時に3人のフードが取れた。
大男は黒い肌で長い髭を生やした禿頭で、もう1人は少し日焼けした皺のある肌で薄紫の髪をしている。
そして、《地縛神スカーレッド・ノヴァ》のカードを持つ男は白い肌で黒い七三分けの髪、そして醜い傷跡が生々しく残った顔をしている。
3人の前にDホイールが現れる。
それは先ほど2人が乗っていたものとは違い、青い部分の塗料が赤に変わっている。
3人はそれに乗り、アレクサンドリアから離れて行った。
「う…うう…」
暗闇の中、痛みで動けずにいるヒイロ。
内臓にも傷があるためか、少し動こうとしただけで激痛が走る。
(ヒイロ…)
「龍可…?」
愛する少女の自分を呼ぶ声が聞こえる。
(ヒイロ…)
「龍可!!」
彼女の名を呼ぶと同時に目を覚ます。
「お目覚め?」
目を覚ますとそこはテントの中。
そばにいるのは金髪で白いライディングスーツを身に着けた女性。
ヒイロの体は包帯で包まれている。
「残念。私は龍可ちゃんじゃないわよ?」
「シェリー…ルブラン…」
かつて、自身の両親ともう1度暮らしたいという一心で道を踏み外しかけた女性。
今はジャックとクロウからのメールでヨーロッパのプロリーグに出場していると聞かされていた。
「ヨーロッパにいるんじゃなかったのか…?」
「今はシーズンオフ。ミゾグチと一緒にアレキサンドリアへ旅行していたら、このザマよ」
「ミゾグチは…?」
「外で見張っているわ。後でお礼を言っておきなさい。あなたを助けたのはミゾグチと…」
シェリーの言葉を遮るように、ゆっくりとテントの戸が開き、白い髪と紫色の瞳、黒い肌、そして全身を黒いコートで包んでいる中年男性が入ってくる。
「この人よ。それと、あなたのデッキとDホイールも大丈夫。あとは傷が治るまで休んでいなさい」
そういうとゆっくり立ち上がり、テントの外へ出ていく。
そして、男性がヒイロのそばへ行く。
「あんたは…?」
「僕は…マリク。マリク・イシュタール」
「マリク…イシュタール…?」
「ああ。そして、今回の事件の原因かもしれない男だ」
「何…?」
訳の分からない発言をしたマリクに不信感を覚えるヒイロ。
それを気にすることなく、彼は言葉を並べる。
「彼らはネオ・グールズ。闇社会でレアカードを密造、および強奪を行う組織だ。リーダーは奇術師パンドラだ」
「奇術師…パンドラ?」
「そう。彼の目的はただ1つ。僕への復讐だ」
「復讐…」
「僕は…僕自身の心の弱さと思い違いでもう1つの人格を生んでしまって、多くの人を傷つけてしまった。パンドラはその1人」
ゆっくりと言葉を並べるマリク。
その顔には大きな罪悪感を宿している。
ヒイロは黙ってただ聞くだけだ。
彼は多重人格に関する知識はなく、心のダメージで生まれるということ程度だ。
「僕の一族は昔、とある人物から与えられた使命を果たすために闇の中で不自由に生きることを余儀なくされた。そして、僕はその人物を憎み、抹殺するためにグールズという組織を作った」
「グールズ…ということは、ネオ・グールズは」
「そう。僕はその中でもう1つの人格に支配されてしまった。けど、名も無きファラオによって僕は救われ、グールズは解体した。贖罪のために、あらゆる手を尽くしているけど…」
「簡単に憎しみは消えなかった…そういうことか」
ヒイロの言葉にマリクはただうなずく。
「特にパンドラは…。僕は彼をあまりにもひどく利用してしまった。憎まれて当然だ。彼は僕を殺すための力を求めるあまり地縛神の力に手を出してしまった」
「待て…なぜお前が地縛神について知っている?」
「君が眠っている間に君の携帯を使って、シェリーさんの協力で情報を集めた。そして、アレクサンドリアにいる人たちは…地縛神に取り込まれてしまった」
「やはりか…」
そうであればアレクサンドリアに人がいなかった理由が説明できる。
携帯を他人に見られるのはいい気分ではないが、今回は仕方がないと自身を納得させる。
「僕は今朝アレクサンドリアについたから難を逃れることができた。問題は…パンドラの目的が復讐から力への渇望に変わってしまった」
「力への渇望…?」
「そう。彼は《地縛神スカーレッド・ノヴァ》による呪縛と力を得る快感で変わっていった。今では地縛神の人々の魂をささげるだけの操り人形だ」
「…。なるほどな」
包帯を強引にとったヒイロが立ち上がる。
時計を見ると、もう1日過ぎていて、時刻は午後の3時。
そして、命の石が機能したためか傷は完全に癒えている。
「ヒイロ、これは僕が収束させないといけないことなんだ。だから…」
「黙っていろ」
ヒイロが服を着ると、テントから出ようとする。
「ヒイロ!!」
「お前の都合など知らない。俺はただ《地縛神スカーレッド・ノヴァ》を止めるだけだ。償いたいというのなら勝手にしろ」
テントから出ると、ストライクチェイサーが止まっている。
そして、ミゾグチとシェリーが外で見張っている。
「行くのですね…ヒイロ」
「ああ。俺が眠っている間に起こったことはないか」
「実は…8時間前に国際ニュースでカイロの人々が消えてしまったと…。そして、3時間前にはエルサレムで同様の事態が…」
「カイロとイスラエルだな…。分かった」
地図を表示し、次にネオ・グールズが出現しそうな地域を洗い出す。
「けれどヒイロ。大丈夫なの?今のあなたにはシグナーの力は…」
「命の石がある程度俺を守ってくれる。問題ない」
命の石を見つめるヒイロ。
そんな中、ミゾグチのDホイールから音声が発せられる。
(臨時ニュースです!!イスタンブールにて、人々が集団で失踪する事件が発生しました!!これでアレキサンドリア、カイロ、エルサレムに続いて4件目です!!人だけでなく動物までもが失踪するこの事態に、専門家も首をかしげ、政府要人までもが失踪したことで一部では混乱が…)
「イスタンブールだと…」
「急がないと、次々と被害が拡大するわ」
「しかし、ここからイスタンブールへは…」
「その心配はないよ」
テントから出てきたマリクが発言する。
「マリク・イシュタール…」
「もうすぐ飛行機が到着する」
「飛行機…?」
疑問に思っていると、東南方面から飛行機がこちらへ向けて飛んできている。
エジプトの国旗が刻まれ、砂漠での着陸と離陸も可能になっているそれはネオ童実野シティからの無償技術援助で手にしたモーメントをエネルギーとしている。
着陸した飛行機から、顔の左側に石版のような模様が刻まれた黒い肌の大男が降りてくる。
「マリク様。遅くなり、申し訳ありません」
「こんな事態だ。飛行機を手配してくれてありがとう、リシド。この飛行機なら、地中海を越えられる。紹介するよ。彼は僕の義兄、リシド・イシュタール」
マリクに紹介されたリシドがヒイロ達に頭を下げる。
「いきましょう。イスタンブールへ…」
「…。この様子だと、お前たちまで来るような雰囲気だな」
その言葉にシェリーたちがうなずく。
「私は自分のためだけに大勢の人を犠牲にしようとした。せめて、誰かを助けることでその罪を償いたいの」
「ご主人様からのご命令はお嬢様をお守りすること…」
「ネオ・グールズを止め、僕自身の罪と向き合うために」
「マリク様は私の家族、何があってもお守りせねば…」
4人ともここに残るつもりはない様子で、ヒイロはため息をつく。
「俺一人で充分だろう…?これは…」
「しかし、味方は多いほうがいい。それに、彼らの想いを無碍にすることはできない。そうでしょう、マスター」
「クリクリー!」
2体の精霊もシェリー達に味方する。
「…。行くぞ、死んでも骨は拾ってやれないぞ」
ヒイロ達はそれぞれのDホイールを飛行機に乗せ、そのまま搭乗する。
そしてリシドの操縦の元、飛行機はイスタンブールへと進んでいった。
ボスフォラス海峡によって、東西に分かれた2つの文化の交差点である都市イスタンブール。
トルコにとって、政治的な首都はアンカラであるが、経済と文化、金融、そしてメディアの中心はいまだにこの都市であり、アジアとヨーロッパの文明が融合したことで生まれたこの地の文化は多くの人々を引き付ける魅力となっている。
日が沈み、人々が家路につく時間であるにもかかわらず、路上には誰もおらず、ビルの中にも人がいない。
(うまい…ここの地の魂も美味であったぞ。主もだいぶ我の力になじんできたようだ…)
「我が神よ、次はどこへ…どの地の魂をあなた様に…」
(いや待て…。どうやら我らの元へ客が来るようだ…)
「そうでございますね…ハハハハ」
南の方向に目を向けるパンドラ。
その眼にはエジプト国旗が刻まれた飛行機がイスタンブールに向けて進んでいる。
「鷹栖、ルキーニ。あの飛行機を破壊するのです!!」
鷹栖と呼ばれた大男とルキーニと呼ばれた優男が《C・ドラゴン》と《モザイク・マンティコア》というライオンの体と蝙蝠の羽、そしてサソリの尾を持つ合成生物が現れ、飛行機に向けて炎を放つ。
炎は飛行機に見事に命中し、それを火だるまに変える。
「ハハハハ!!あっけないですねぇ…。…!?」
火だるまになった飛行機が爆発する。
しかし、イスタンブールの路上には4台のDホイールが走っている。
3台はヒイロ、シェリー、ミゾグチの登場しているもので、1台は黒い大型オートバイでマリクが運転し、リシドがサイドカーに乗っている。
(ヒイロ・リオニス…生きていたか。我が傀儡よ、あの者らの魂を我に!)
「「「はい、我が神よ」」」
3人はにやりと笑いながらそう言うと、Dホイールに乗ってヒイロ達の元へ向かう。
「人がいない…」
「けれど、ヒイロの言葉が正しければ、地縛神を倒すことで人々を解放することができる」
「来るぞ…」
ヒイロが言うのと同時に、鷹栖、ルキーニ、パンドラが乗る3台のDホイールが現れる。
3人とも赤いオーラを纏っているが、パンドラのオーラが放つプレッシャーは段違いだ。
「パンドラは俺がやる。お前らは残り2人を倒せ」
「ええ…」
「御武運を!」
シェリーとミゾグチが鷹栖に狙いを定める。
「なら、彼は僕たちが相手する!」
「墓守の名のもとに、お前たちを冥界へ送ろう!」
マリクとリシドはルキーニとデュエルを始める。
6人はそのまま別れ、別の路上でデュエルをする中、ヒイロとパンドラはDホイールを止め、対峙する。
「まずは自己紹介。私はネオ・グールズのリーダー、パンドラ」
「なぜ地縛神を解放した?力を得るなら、もっと別の方法があるだろう?」
「夢の中で我が神がささやきかけてきたのです。私に力を与えてくれると…。そして、同じく我が神に選ばれし2人を従え…」
「良くわかった。お前らはただのマリオネットだってことだな」
「その通り!!我々は我が神の傀儡!!すべては我が神、《地縛神スカーレッド・ノヴァ》のために!!」
「人形がしゃべるな…。お前を見ていると嫌でも思い出す」
ヒイロの脳裏に浮かぶ苦い思い出。
幼少期にルカスを殺害したギャングたちを殺害し、そして記憶を奪われてアルカディア・ムーブメントの工作員になっていた時は敵対勢力や計画を妨害する人々を傷つけ、時には殺害してしまった。
「(俺は血でぬれている…この罪は永遠に消えない。なら最期まで背負うだけだ)来い、パンドラ。お前を倒し、地縛神を殺す!」
「我が神を殺すと…なんという大逆!!なんという背教行為!!神と共に私が君を殺して差し上げましょう!!」
「「《スピード・ワールド3》セット!!」」
《スピード・ワールド3》は1年前に新たに使われるようになったフィールドで、《スピード・ワールド》と《スピード・ワールド2》の融合したものとなっている。
無人のイスタンブールがスピードの世界と化す。
観客のいないこのフィールドに歓声が上がることはない。
「「ライディング・デュエル、アクセラレーション!!」」
ヒイロ
手札5
ライフ4000
パンドラ
手札5
ライフ4000
「俺の先攻、ドロー」
ヒイロ
手札5→6
「《深緑の幻獣王ガゼル》を召喚」
深緑の幻獣王ガゼル レベル4 攻撃1500
「このカードは手札・フィールドに存在する限り、カード名を《幻獣王ガゼル》として扱う。更にカードを2枚伏せ、ターンエンド」
ヒイロ
手札6→3
SPC0
ライフ4000
場 深緑の幻獣王ガゼル(《幻獣王ガゼル》扱い) レベル4 攻撃1500
伏せカード2
パンドラ
手札5
ライフ4000
SPC0
場 なし
「では私のターン、ドロー」
パンドラ
手札5→6
SPC0→1
ヒイロ
SPC0→1
「私は手札から《サイバー・ドラゴン》を特殊召喚!このカードは相手フィールド上にのみモンスターが存在するとき、特殊召喚できる」
サイバー・ドラゴン レベル5 攻撃2100
「更にこのカードは手札を1枚捨てるで、手札から特殊召喚できる。私は手札の《キラー・トマト》を捨て、《THEトリッキー》を特殊召喚!」
クエスチョンマークが大きく描かれたマスクをつけたピエロが現れる。
THEトリッキー レベル5 攻撃2000
(これで《ガゼル》を上回る攻撃力を持つモンスターは2体…)
しかし、《深緑の幻獣王ガゼル》はフィールド魔法が発動している限り、1ターンに1度戦闘では破壊されず、更に戦闘で発生する自分のダメージを0にするという《マッシブ・ウォリアー》と同じ効果を得る。
少なくとも、これでヒイロにダメージを与えられることはないが…。
「私は2体のモンスターをリリース!」
(来るか…《スカーレッド・ノヴァ》?)
「《地縛神Chacu Challhua》!!」
パンドラの頭上に浮遊する巨大なクジラ、《地縛神Chacu Challhua》。
ヒイロを睨みながら優雅に空で泳ぎ始める。
地縛神Chacu Challhua レベル10 攻撃2900
「《Chacu Challhua》だと…!?」
「そう…あなたに我が神をまだ見せるわけにはいきませんからねぇ。そして、我が同志たちもまた他の地縛神を操っている!!」
「何!?」
上空にクジラだけでなく、巨人やハチドリ、トカゲ、猿、蜘蛛、コンドルの地上絵がイスタンブールの空に描かれる。
「ハハハハ!!我が神の僕、《地縛神Ccapac Apu》と《Cusillu》、《Uru》に敵う相手はおらん!」
鷹栖のフィールドにはすでに3体の地縛神が現れていて、シェリーの《フルール・ド・シュバリエ》とミゾグチの《不退の荒武者》が対峙する。
「くっ…遊星たちはこんな化け物と戦っていたというの!?」
「だが、私たちとて1度は遊星と戦ったことのあるデュエリスト。そう簡単には倒れはせん!」
「現れろ、《地縛神Aslla piscu》!《Ccarayhua》!《Wiraqocha Rasca》!!」
一方、マリクとリシドと戦うルキーニも3体の地縛神を召喚する。
2人のフィールドに存在する《墓守の大神官》と3体の《アポピスの化身》がその強大さに冷や汗をかいている。
「これが…本物の地縛神…!?」
「マリク様、我らはそれ以上の存在、三幻神をこの目にしています。この程度のまがい物の神は彼らの足元にも及びません」
「リシド…。そうだったな、地縛神に勝てないようなら、僕は自分の罪に向き合えない!!」
「もうすでに6体の地縛神が…!?」
「分かっていますね?地縛神はダイレクトアタックすることができる。《深緑の幻獣王ガゼル》でもあなたを守ることはできない!!」
《地縛神Chacu Challhua》が口からどす黒い濁流をヒイロに向けて放つ。
「俺は手札から《幻獣バリアカーバンクル》を特殊召喚!このカードは相手がダイレクトアタックを仕掛けたとき、手札から特殊召喚することでその攻撃を無効にする!!」
《幻獣バリアカーバンクル》がヒイロの前に現れ、彼と彼のフィールドを水色のバリアで覆い尽くす。
濁流はバリアによって阻まれたが、周囲に飛び散り、窓ガラスを破壊し、車体やビルにひびを入れていく。
幻獣バリアカーバンクル レベル2 守備1200(チューナー)
「この程度のことはやっていただかないと困りますなぁ。私はカードを1枚伏せ、ターンエンド」
ヒイロ
手札3→2
SPC1
ライフ4000
場 深緑の幻獣王ガゼル(《幻獣王ガゼル》扱い) レベル4 攻撃1500
幻獣バリアカーバンクル レベル2 守備1200(チューナー)
伏せカード2
パンドラ
手札6→2
ライフ4000
SPC1
場 地縛神Chacu Challhua レベル10 攻撃2900
伏せカード1
「俺のターン!」
ヒイロ
手札2→3
SPC1→2
パンドラ
SPC1→2
ドローしたカードを見て、ヒイロがわずかに笑みを浮かべる。
「このカードは俺のフィールド上にチューナーが存在するとき、手札から特殊召喚できる。《シンクロ・エクスクルーダー》を特殊召喚」
シンクロ・エクスクルーダー レベル2 攻撃0
「これで奴のフィールドに存在するモンスターのレベルの合計は8…まさか!!」
「俺はレベル4の《ガゼル》とレベル2の《シンクロ・エクスクルーダー》にレベル2の《バリアカーバンクル》をチューニング。深海に眠りし破邪の水龍よ!敵の技を無にし、激流の如く邪悪を薙ぎ払え!シンクロ召喚!出でよ、《マリンフォース・ドラゴン》」
マリンフォース・ドラゴン レベル8 攻撃2600
「ぬぅ…忌々しきシグナーの竜め!!」
フィールドに現れた《マリンフォース・ドラゴン》をまるで親の仇のように見つめる。
「《シンクロ・エクスクルーダー》の効果発動。このカードをシンクロ素材としてドラゴン族シンクロモンスターのシンクロ召喚に成功した時、相手モンスター1体の攻撃力・守備力を0にする」
地縛神Chacu Challhua レベル10 攻撃2900→0 守備2400→0
(マスター。《地縛神Chacu Challhua》は守備表示の時、効果ダメージを与えるうえ、僕たちを攻撃できなくする。ここは僕の効果を…)
「ああ、言われなくてもな。《マリンフォース・ドラゴン》の効果発動。1ターンに1度、フィールド上のカード1枚を持ち主の手札に戻す。マリン・パニッシュ」
《マリンフォース・ドラゴン》が羽を動かすことで生み出した大波が《地縛神Chacu Challhua》を押し流そうとする。
「罠発動!《ブレイクスルー・スキル》!!このカードはターン終了時まで相手モンスター1体の効果を無効にする!これでマリン・パニッシュは不発です!!」
大波が《地縛神Chacu Challhua》の前で消えてしまった。
「ちっ…」
「ふふふ…《マリンフォース・ドラゴン》の効果は脅威ですからね、我が主の命の元、対策させてもらいました。そして《地縛神Chacu Challhua》が守備表示の時、相手のバトルフェイズはスキップされる」
(だが…これで俺は効果ダメージを受けることはない)
《地縛神Chacu Challhua》は1ターンに1度、自身の守備力の半分のダメージを相手に与える。
しかし2400あったこの地縛神の守備力が0となり、ダメージを与えることはできなくなっている。
「(それでも、守備表示にされるとつらいがな)俺はこれでターンエンド」
ヒイロ
手札3→2
SPC2
ライフ4000
場 マリンフォース・ドラゴン レベル8 攻撃2600
伏せカード2
パンドラ
手札2
ライフ4000
SPC2
場 地縛神Chacu Challhua(《シンクロ・エクスクルーダー》の影響下) レベル10 攻撃0
「私のターン!」
パンドラ
手札2→3
SPC2→3
ヒイロ
SPC2→3
「私は手札から《Sp-ソニック・ミラージュ》を発動!私のスピードカウンターが3つ以上あるとき、相手のスピードカウンターを3つ増やすことで、私のフィールドに《ソニック・ミラージュ・トークン》2体を特殊召喚する」
ヒイロの左右から風でできた人形が現れ、即座にパンドラのフィールドへ移る。
ソニック・ミラージュ・トークン レベル1 守備0
ヒイロ
SPC3→6
Sp-ソニック・ミラージュ
通常魔法カード
(1):自分のスピードカウンターが3つ以上存在するとき、相手御スピードカウンターを3つ増やすことで発動できる。自分フィールド上に「ソニック・ミラージュ・トークン」2体を特殊召喚する。
ソニック・ミラージュ・トークン
レベル1 攻撃0 守備0 風属性 鳥獣族
「Sp-ソニック・ミラージュ」の効果で特殊召喚される。
「更に私は手札からチューナーモンスター《ダーク・スプロケッター》を召喚」
ダーク・スプロケッター レベル1 攻撃400(チューナー)
「チューナーだと?」
「レベル1の《ソニック・ミラージュ・トークン》とレベル10の《Chacu Challhua》にレベル1の《ダーク・スプロケッター》をチューニング!」
《地縛神Chacu Challhua》が咆哮すると、《ソニック・ミラージュ・トークン》と《ダーク・スプロケッター》が黒い光に変化し、その地縛神に取り込まれていく。
そして、地縛神の体に赤いヒビが入っていく。
「レベル12のシンクロモンスター…?」
「魂の炎宿りし紅蓮の悪魔よ、惰生むさぼりし魂を喰らい尽くせ!《地縛神スカーレッド・ノヴァ》!!」
《地縛神Chacu Challhua》の肉体は崩れ落ち、その中から《地縛神スカーレッド・ノヴァ》が姿を現す。
それと同時にそばにあるビルや道路、車両が高熱で炎上、もしくは溶解していく。
地縛神スカーレッド・ノヴァ レベル12 攻撃4000
「ちっ…!!」
自身が走る路上が徐々に溶けていく。
そして、パンドラはいつの間にか姿を消していた。
相手フィールドの画面がDホイールに表示されているため、デュエルは続行中だが。
パンドラの声がDホイールの通信機から聞こえてくる。
「《地縛神スカーレッド・ノヴァ》は他の地縛神と同じ効果を持っています。しかし、自ら攻撃することは許されていません」
(攻撃できない地縛神だと…?)
「しかし、このカードは1ターンに1度、相手フィールド上のモンスター1体のコントロールをエンドフェイズまで奪い、奪ったモンスターはエンドフェイズ時に墓地へ送られる」
「何!!?」
《地縛神スカーレッド・ノヴァ》の蛇たちが《マリンフォース・ドラゴン》を絡み付けていく。
「う・・うわあ!!離せ!!」
「《マリンフォース・ドラゴン》!!」
抵抗する《マリンフォース・ドラゴン》だが、その甲斐なく《地縛神スカーレッド・ノヴァ》のそばへ連れて行かれる。
「ふふふ…《マリンフォース・ドラゴン》はカード効果では破壊されず、1ターンに1度相手フィールド上にカード1枚を手札に戻す。ならば私はあなたの伏せカードを1枚手札に戻しましょう。マリン・パニッシュ!!」
「くっ…ごめん、マスター!」
蛇によって強引に翼を動かされる。
そして、発生した大波によって伏せカードがヒイロの手札に戻ってしまった。
「そして、《マリンフォース・ドラゴン》でダイレクトアタック」
「や…やめろぉ…!!」
蛇によってまるでマリオネットのように動かされている《マリンフォース・ドラゴン》がヒイロに向けて拳を向ける。
「罠発動《ガード・ブロック》!俺への戦闘ダメージを0にする!」
《マリンフォース・ドラゴン》の拳が道路に突き刺さる。
そして、ヒイロのストライクチェイサーはガラスを突き破って、ビルの中に侵入した。
「そして俺はデッキからカードを1枚ドローする」
「ここで《地縛神スカーレッド・ノヴァ》の効果を発動!相手がカードをドローした時、ドローしたカードを互いに確認する」
「何…!?」
《地縛神スカーレッド・ノヴァ》の蛇がビルの床を突き破ってヒイロがドローしたカードをじっと見る。
ドローしたカード
・幻獣の眩惑
地縛神スカーレッド・ノヴァ
レベル12 攻撃4000 守備4000 シンクロ 闇属性 悪魔族
闇属性チューナー+「地縛神」モンスター+チューナー以外のモンスター1体
「地縛神」モンスターはフィールド上に1体しか表側表示で存在することができない。
(1):フィールド魔法カードが表側表示で存在しない場合このカードを破壊する。
(2):相手はこのカードを攻撃対象に選択できない。
(3):このカードは攻撃できない。
(4):このカードは相手の魔法・罠カードの効果を受けない。
(5):1ターンに1度、相手フィールド上に存在するモンスター1体を選択して発動できる。そのモンスターのコントロールを得る。この効果を受けたモンスターはターン終了時に墓地へ送られる。
(6):相手がドローした時、自分はそのカードを確認する。
「私はカードを1枚伏せ、ターンエンド。それと同時に《マリンフォース・ドラゴン》は墓地へ送られる」
「マスター…ごめん…」
《マリンフォース・ドラゴン》が水色の光となって消えて行った。
ヒイロ
手札2→4(うち1枚《幻獣の眩惑》)
SPC6
ライフ4000
場 なし
パンドラ
手札3→0
ライフ4000
SPC3
場 地縛神スカーレッド・ノヴァ レベル12 攻撃4000
ソニック・ミラージュ・トークン レベル1 守備0
伏せカード1
「ふふふ…せっかくシンクロ召喚した《マリンフォース・ドラゴン》が一瞬で消えてしまいましたねぇ…」
「俺のターン!」
ヒイロ
手札4→5
SPC6→7
パンドラ
SPC3→4
ドローしたカード
・幻獣リバースカラドリオス
この地縛神は自身が何をするという訳ではない。
敵の動きを見極め、利用できるのが他の地縛神にはない恐ろしさだ。
「俺は手札から《Sp-エンジェル・バトン》を発動。俺のスピードカウンターを4つ取り除くことで、デッキからカードを2枚ドローし、手札を1枚墓地へ送る」
「さあ…ドローしたカードを見せてください」
「言われなくてもな」
再び現れた蛇にドローしたカードを公開する。
ドローしたカード
・幻獣クロスウィング
・プチクリボー
ヒイロ
SPC7→3
「ふうむ…《プチクリボー》は厄介ですね。1度きりとはいえ、いかなるダメージも0にしてしまう。さて、どうしたことか…」
「勝手に言っていろ。俺は《幻獣クロスウィング》を墓地へ送る。そしてカードを2枚伏せ、ターンエンド」
ヒイロ
手札5→3(うち2枚《幻獣リバースカラドリオス》《プチクリボー》)
SPC3
ライフ4000
場 伏せカード2(伏せカードもしくは手札の中に《幻獣の眩惑》)
パンドラ
手札0
ライフ4000
SPC4
場 地縛神スカーレッド・ノヴァ レベル12 攻撃4000
ソニック・ミラージュ・トークン レベル1 守備0
伏せカード1
「ほう…モンスターを出さないと」
「ああ。お前の《スカーレッド・ノヴァ》は他人任せのモンスターだからな。俺のフィールド上にモンスターがいなければドローしたカードを確認するだけの壁に過ぎない」
モンスターがいないヒイロのフィールドを《地縛神スカーレッド・ノヴァ》がじっと見ている。
「私のターン」
パンドラ
手札0→1
「あなたのフィールドにモンスターがいないのなら、私が生み出して差し上げましょう!私のフィールドに《トーチトークン》2体を特殊召喚し、《トーチ・ゴーレム》をあなたのフィールドに特殊召喚!」
「何!?《トーチ・ゴーレム》だと…」
ヒイロのフィールドに鋼鉄の装甲に回転のこぎり、2つの蟹のハサミのようなマニピュレーターをつけた巨大な機械が現れる。
そして、パンドラのフィールドには小さな《トーチ・ゴーレム》ともいえる2体のトークンが現れる。
トーチ・ゴーレム レベル8 攻撃3000
トーチトークン レベル1 攻撃0
ヒイロにはパンドラの目的がすぐに理解できた。
「《トーチ・ゴーレム》のコントロールを奪い、俺にダイレクトアタックを…?」
「それもいいでしょうが、あなたの手札には《プチクリボー》がいる。それに《トーチ・ゴーレム》を特殊召喚したターン、私は攻撃できない。ターンエンドです」
ヒイロ
手札3(うち2枚《幻獣リバースカラドリオス》《プチクリボー》)
SPC4
ライフ4000
場 トーチ・ゴーレム レベル8 攻撃3000
伏せカード2(伏せカードもしくは手札の中に《幻獣の眩惑》)
パンドラ
手札1→0
ライフ4000
SPC5
場 地縛神スカーレッド・ノヴァ レベル12 攻撃4000
ソニック・ミラージュ・トークン レベル1 守備0
トーチトークン×2 レベル1 攻撃0
伏せカード1
「俺のターン!」
ヒイロ
手札3→4
SPC4→5
ドローしたカード
・Sp-セブンスヘヴン
パンドラ
SPC5→6
「俺は手札から《Sp-ブラスト・ドロー》を発動。俺のスピードカウンターが5つ以上あるとき、デッキトップから5枚のカードを墓地へ送り、デッキからカードを1枚ドローする」
ドローしたカード
・幻獣先帝バフォメット
デッキから墓地へ送られたカード
・魔宮の賄賂
・幻獣ボディレスファントム
・Sp-ハイスピード・クラッシュ
・幻獣クロスウィング
・くず鉄のかかし
Sp-ブラスト・ドロー
通常魔法カード
「Sp-ブラスト・ドロー」は1ターンに1度しか発動できない。
(1):自分のスピードカウンターが5つ以上あるときにのみ発動できる。自分のデッキの一番上から5枚のカードを墓地へ送り、デッキからカードを1枚ドローする。
これでヒイロの墓地には2体の《幻獣クロスウィング》が存在することになる。
「《幻獣先帝バフォメット》…自分フィールド上にモンスターが存在しない状態でモンスターの召喚に成功した時、デッキからレベル4以下の幻獣を特殊召喚できるカード。ならば退場してもらいましょう!罠カード《地縛神の裁判》!!私のフィールドに地縛神が存在するとき、手札・フィールドに存在するモンスター2体をリリースすることで、相手は手札をすべて墓地へ捨てる!」
「何!?」
2体の《トーチトークン》が赤い球体型爆弾に変化し、ヒイロの手元で爆発する。
手札から墓地へ送られたカード
・幻獣先帝バフォメット
・プチクリボー
・幻獣ミラージュカラドリオス
・深海竜の怒り
「《プチクリボー》…」
「そして、あなたはデッキから手札が4枚になるようにカードをドローする」
「…」
墓地に送られた《深海竜の怒り》をじっと見ながら、ヒイロかカードをドローする。
ドローしたカード
・幻獣ワイルドホーン
・幻獣ロックリザード
・Sp-ダウン・シフト
・聖なるバリア―ミラーフォース
地縛神の裁判
通常罠カード
「地縛神の裁判」は1ターンに1度しか発動できない。
(1):自分フィールド上に「地縛神」モンスターが表側表示で存在するとき、自分の手札・フィールド上に存在するモンスター2体をリリースすることで発動できる。相手は手札をすべて捨て、デッキから手札が4枚になるようにカードをドローする。
「ふふふ…あなたの手の内は今の私には手に取るようにわかる。さすがは我が神、《地縛神スカーレッド・ノヴァ》」
「黙っていろ。俺は《幻獣ワイルドホーン》を召喚」
幻獣ワイルドホーン レベル4 攻撃1700
「ふん。攻撃力1700程度のモンスターに何が…」
「こいつは貫通効果を持った幻獣だ。そして、墓地に存在する《幻獣クロスウィング》はフィールド上の幻獣の攻撃力を300ポイントアップさせる。俺の墓地に存在する《クロスウィング》は2体」
2体の《幻獣クロスウィング》の幻影が《幻獣ワイルドホーン》に力を与える。
幻獣ワイルドホーン レベル4 攻撃1700→2300
「バトルだ。《ワイルドホーン》で《ソニック・ミラージュ・トークン》を攻撃。ワイルドブレイク」
《幻獣クロスウィング》の力を角に集中させた《幻獣ワイルドホーン》は《ソニック・ミラージュ・トークン》をそれで串刺しにする。
「くっ…トークンを残したことが裏目に出ましたか」
パンドラ
ライフ4000→1700
「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド」
ヒイロ
手札4→2(《Sp-ダウン・シフト》《幻獣ロックリザード)
SPC5
ライフ4000
場 トーチ・ゴーレム レベル8 攻撃3000
幻獣ワイルドホーン レベル4 攻撃2300
伏せカード2(《幻獣の眩惑》《聖なるバリア―ミラーフォース》)
パンドラ
手札0
ライフ1700
SPC6
場 地縛神スカーレッド・ノヴァ レベル12 攻撃4000
「私のターン」
パンドラ
手札0→1
SPC6→7
ヒイロ
SPC5→6
「《スカーレッド・ノヴァ》の効果発動!さあ《トーチ・ゴーレム》よ、私のフィールドへ!」
《地縛神スカーレッド・ノヴァ》の蛇が《トーチ・ゴーレム》を縛ろうとする。
「俺は墓地から罠カード《深海竜の怒り》を発動」
「墓地から罠…!?」
《幻獣ワイルドホーン》が水となり、ビルの屋上へ向かう。
屋上に到着したヒイロはその水が作り出す足場で隣のビルまで移動する。
「このカードは俺のフィールド上の幻獣1体をリリースすることで、墓地から発動できる。俺のフィールド上に存在するシンクロモンスター、もしくはレベル6以上のモンスター1体を墓地へ送り、墓地から《マリンフォース・ドラゴン》1体を特殊召喚する」
《トーチ・ゴーレム》もまた水となり、上空で魔法陣に変化する。
そして、それから《マリンフォース・ドラゴン》が姿を現す。
マリンフォース・ドラゴン レベル8 攻撃2600
深海竜の怒り
通常罠カード
「深海竜の怒り」の(1)(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。
(1):自分フィールド上に表側表示で存在するSモンスター、もしくはレベル6以上のモンスター1体を墓地へ送る。墓地から「マリンフォース・ドラゴン」1体を自分フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する。
(2):自分フィールド上に表側表示で存在する幻獣モンスター1体をリリースし、墓地に存在するこのカードを除外することが発動できる。自分フィールド上に表側表示で存在するSモンスター、もしくはレベル6以上のモンスター1田を墓地へ送る。墓地から「マリンフォース・ドラゴン」1体を自分フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する。この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動できない。
「むぅ…これで《スカーレッド・ノヴァ》の効果は不発と…」
「そうだ。そして次のターン、マリン・パニッシュで《スカーレッド・ノヴァ》を退場させる」
《マリンフォース・ドラゴン》がじっと《地縛神スカーレッド・ノヴァ》を見る。
「ふふふ…この程度で私を止められるとでも?私は手札から《Sp-スキル・キャンセラー》を発動!私のスピードカウンターが7つ以上あるとき、私のフィールド上に存在するモンスター効果を1つ消去する。私が消去する効果は《スカーレッド・ノヴァ》の攻撃不能効果!!」
「何!!?」
別のビルに移動し終え、《幻獣ワイルドホーン》だった水が墓地へ行く。
そして、《Sp-スキル・キャンセラー》が放った光が《地縛神スカーレッド・ノヴァ》の(3)の効果が抹消される。
Sp-スキル・キャンセラー
通常魔法カード
(1):自分のスピードカウンターが7つ以上存在するとき、自分フィールド上に存在するモンスターの効果を1つ選択して発動できる。その効果を無効化する。
「これで《スカーレッド・ノヴァ》は攻撃できる!我が神よ、愚かなる水竜に裁きを!!」
《地縛神スカーレッド・ノヴァ》が天に咆哮する。
すると上空に次元の裂け目が生まれ、そこから大量の隕石が襲いかかった。
隕石は《マリンフォース・ドラゴン》もろとも建造物を次々と破壊していく。
「うわああああ!!」
ヒイロ
ライフ4000→2600
ヒイロがいるビルの屋上も崩壊を始める。
「く…そぉ!!」
崩壊するビルから落下する中、ヒイロはストライクチェイサーの出力を最大まで高める。
瞬間的に速度を飛躍的に高めたそれはヒイロを乗せたまま横っ飛びし、隣の立体駐車場に突入した。
「はあ…はあ…はあ…」
「そうそう、この程度で死んでもらっては困ります。もっと我が神を楽しませてください」
通信されるパンドラの声。
それを気にすることなく、ヒイロは自分の手札を確認する。
(今の俺の手札は《幻獣ロックリザード》と《Sp-ダウン・シフト》。次のターン、最低でも3体モンスターをフィールドにそろえなければ負ける…)
「私は《スピード・ワールド3》の効果を発動。スピードカウンターを6つ取り除くことで、デッキからカードを1枚ドローする。そして、カードを1枚伏せてターンエンド」
ヒイロ
手札2(《Sp-ダウン・シフト》《幻獣ロックリザード》)
SPC6
ライフ2600
場 伏せカード2(《幻獣の眩惑》《聖なるバリア―ミラーフォース》)
パンドラ
手札1→0
ライフ1700
SPC7→1
場 地縛神スカーレッド・ノヴァ レベル12 攻撃4000(《Sp-スキル・キャンセラー》の影響下)
伏せカード1
「いかがでしょうか?枷を外した我が神の力は!シグナーの竜たる《マリンフォース・ドラゴン》でも太刀打ちできないでしょう?」
「くっ…!」
ライフは上回っているものの、《地縛神スカーレッド・ノヴァ》の前では何も意味がない。
そして、今の手札にはヒイロに勝利をもたらすカードがない。
「次のドローが…俺の運命を分けるか…」
「マスター…」
墓地から《マリンフォース・ドラゴン》の声がする。
「《マリンフォース》…」
「マスター、よく聞いて。《スカーレッド・ノヴァ》はダークシグナーでさえ操ることが難しい地縛神。僕だけの力じゃ無理だ。マスターの力を貸してほしいんだ」
「だが、俺にはもうシグナーの力はない。そして、お前を進化させるカードはもうないんだぞ」
遊星とジャックとは異なり、ヒイロのフュージョンシンクロはスタッグが必要不可欠だ。
しかし、シグナーの力を失ったことでスタッグはカードと共に姿を消してしまった。
《セイヴァー・マリン・ドラゴン》をシンクロ召喚するにも、《救世竜セイヴァー・ドラゴン》を呼び出すことができない。
「できるよ、マスター。僕とマスターの幻獣たちを信じて」
「俺の幻獣…」
ヒイロの手札には《幻獣ロックリザード》が存在し、墓地には《幻獣ワイルドホーン》や《幻獣クロスウィング》などがいる。
「…。俺のターン!」
ヒイロ
手札2→3
SPC6→7
パンドラ
SPC1→2
ドローしたカード
・Sp-ミラクルシンクロフュージョン
「罠カード《地縛神の激昂》を発動。私のフィールド上に地縛神が存在するとき、墓地に存在するモンスターの元々の守備力分のダメージをあなたに与えます」
《地縛神スカーレッド・ノヴァ》の方向により、裂け目から《地縛神Chacu Challhua》が現れ、ヒイロに向けて突撃する。
「ぐおおおお!!」
ヒイロ
ライフ2600→200
SPC7→4
地縛神の激昂
通常罠カード
(1):自分フィールド上に「地縛神」モンスターが表側表示で存在するときに発動できる。自分の墓地に存在するモンスター1体の元々の守備力分のダメージを相手に与える。
「ふふふ…《シフト・ダウン》はスピードカウンターを6つ取り除かなければ発動できない。これであなたはフィールド上に残ったカードで勝負しなければなりませんね」
「罠発動《幻獣の眩惑》。俺のフィールドにモンスターが存在しないとき、手札から幻獣モンスター1体を特殊召喚できる。俺は《幻獣ロックリザード》を特殊召喚!」
幻獣ロックリザード レベル7 攻撃2200
幻獣の眩惑
通常罠カード
「幻獣の眩惑」は1ターンに1度しか発動できない。
(1):自分フィールド上にモンスターが存在しないときに発動できる。手札から「幻獣」モンスター1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターはターン終了時に手札に戻る。
「そして、俺は手札から《Sp-ミラクルシンクロフュージョン》を発動!俺のスピードカウンターが3つ以上あるとき、フィールド・墓地のモンスターを融合し、シンクロモンスターをシンクロ素材とする融合モンスターを融合召喚する!《マリンフォース・ドラゴン》と《幻獣ロックリザード》を融合!」
「そう…そうだよ、マスター!!」
《マリンフォース・ドラゴン》の幻影と《幻獣ロックリザード》が融合していく。
そんな中、裂け目から落下する隕石がボスフォラス海峡に落ち、巨大な波が町を襲う。
このまま波が襲うと、街が壊滅し、シェリー達に危険が及ぶ。
「伝説と神話の力を束ねし水竜よ、世界を震わし新たな可能性を照らし出せ!融合召喚!!《幻獣剣神オーシャン》!!」
突然町を襲うはずだった大波が切り裂かれ、消滅する。
ヒイロの前に現れたのは青い西洋風の鎧と水の纏った透明な鋼でできた長剣を装備した幼げな容姿の騎士だった。
幻獣剣神オーシャン レベル10 攻撃3600
Sp-ミラクルシンクロフュージョン
通常魔法カード
(1):自分のスピードカウンターが3つ以上存在するときに発動できる。自分のフィールド上・墓地から、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターをゲームから除外し、Sモンスターを融合素材とするその融合モンスター1体を融合召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。
(2):、セットされたこのカードが相手のカードの効果によって破壊され墓地へ送られた時、自分はデッキからカードを1枚ドローする。
「《マリンフォース》…なのか?」
「そうだよ、マスター。一緒に《スカーレッド・ノヴァ》を倒そう!!」
水色の長髪をなびかせながら、《地縛神スカーレッド・ノヴァ》に剣を向ける。
「墓地の《クロスウィング》、《オーシャン》に力を!」
2体の《幻獣クロスウィング》の幻影が《幻獣剣神オーシャン》の刃に力を託す。
幻獣剣神オーシャン レベル10 攻撃3600→4200
「そしてこのカードの融合召喚に成功した時、相手フィールド上に存在するすべてのカードの効果を無効にする!」
「な…何だと…!!?」
「これが僕と幻獣の力だ!!」
青い竜デュエルディスクを模した盾を左腕に宿し、《幻獣剣神オーシャン》がその力を解放する。
盾から放たれた青い閃光は《地縛神スカーレッド・ノヴァ》の力を抹消していった。
「そ…そんなバカな…我が神の力が…」
「裂け目をふさげ、《オーシャン》!!」
「うん!!」
《幻獣剣神オーシャン》が剣を天に掲げる。
すると、それから放たれた青い光が裂け目を消滅させていった。
「ええい…!」
「バトルだ。俺は《オーシャン》で《地縛神スカーレッド・ノヴァ》を攻撃!」
「バハムート・ソード!!!」
《幻獣剣神オーシャン》の背に水の翼が宿り、天に飛翔する。
《地縛神スカーレッド・ノヴァ》が放つ炎を避けながら、自らの剣をその頭部に突き刺し、そのまま真っ二つに切り裂いていった。
「うわあああ!!我が神よ…なぜ私の前から…」
《地縛神スカーレッド・ノヴァ》の中からパンドラが出てくる。
「更に、《幻獣剣神オーシャン》の効果発動。このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した時、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える」
「神…よ…」
虚空に《地縛神スカーレッド・ノヴァ》の幻影を見ながら、パンドラは黒い灰となって消滅した。
パンドラ
ライフ1700→1500→0
幻獣剣神オーシャン
レベル10 攻撃3600 守備2800 融合 水属性 水族
「マリンフォース・ドラゴン」+レベル5以上の「幻獣」モンスター
このカードは融合召喚でのみ特殊召喚できる。
(1):このカードの融合召喚に成功した時、相手フィールド上に存在するカードの効果を無効にする。この効果の発動に対して、相手は魔法・罠・モンスター効果を発動できない。
(2):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える。
(3):このカードを融合召喚したターン終了時、このカードはゲームから除外される。その後、自分の墓地から「マリンフォース・ドラゴン」1体を自分フィールド上に特殊召喚する。
「はあ…はあ…」
灰となったパンドラを見つつ、シェリー達に通信を入れる。
「シェリーか…無事か?」
(ええ。地縛神達は倒したわ。そして、倒したと同時にデュエリストが…)
「…そうか…」
(マリクさんも勝ったわ。後で一緒に合流するわ。合流ポイントは?)
「合流地点はここから…」
通信を入れながら、なぜか残っていた《地縛神スカーレッド・ノヴァ》のカードを回収しようとする。
(なぜこれは消滅しない…?)
「…!!マスター!!」
「!!?」
殺気を感じ、振り向くとそこには黒ずくめの男たちがいて、そのうち2人がロケットランチャーをヒイロに向けて発射した。
「…」
ミサイルをすんでのところで避けると、他の男たちがヒイロを囲む。
「何のつもりだ…」
襲い掛かる男たちを格闘戦で蹴散らしていくが、数が多い。
その隙に男の1人が地縛神のカードを回収する。
「地縛神のカードを…!?」
カードの回収を見届けた他の男たちが懐に隠していたスイッチを押す。
すると男たちが大爆発を起こし、ヒイロが爆発に巻き込まれた。
「何…!?自爆だと…」
「マスター!」
《マリンフォース・ドラゴン》の水のバリアで何とか免れるが、カードを持った男は煙に紛れて近づいていた高速ヘリコプターに乗って逃走してしまった。
「くそ…なぜあいつらは地縛神のカードを…」
わずかにヘリが見えたすきをうかがい、隠し持っていた小型センサーを投擲する。
センサーは見事に張り付き、ヘリは西へ進んでいった。
煙が晴れ、自爆した男たちをじっと見る。
男たちは全員精巧に作られたロボットだった。
「ヒイロ!!」
爆発を見たと思われるシェリー達がヒイロの元へ駆け寄る。
「ヒイロ、一体何が起こったのですか?」
「黒ずくめの男たちが地縛神のカードを奪った」
「何!?」
マリクが驚く中、リシドがロボットを見る。
「おそらく、やつらはエデンの連中でしょう?」
「エデン…?」
「聞いたことがあるわ。古代神ケイランという神を信仰しているカルト教団で、神の復活のために闇のカードや精霊のカードを探しているって…」
「ちっ…カルト教団のやることは一生理解したくないな」
舌打ちをしながら、ストライクチェイサーに乗る。
「ヒイロ、どうやって追うつもりだ?」
「奴らのヘリにセンサーを仕掛けた。これで追う」
「けれど、今ではヘリにもモーメントが搭載されつつある。かなりの距離になるぞ」
「それでも追う。これは俺のミスだ」
「ヒイロ!!」
シェリーの制止を聞かず、ヒイロはストライクチェイサーを走らせる。
(地の果てまで追いかける。あのカードは必ず俺の手で…)
ここで、《スピード・ワールド3》の説明をします。
スピード・ワールド3
フィールド魔法カード
(1):お互いに「Sp」魔法カード以外の魔法カードを発動できない。
(2):最初のターンを除いたお互いのスタンバイフェイズ時、お互いのプレイヤーはこのカードに自分用のスピードカウンターを1つずつ置く(最大12個まで)。
(3):1度に受けたダメージ800ポイントの倍数ごとに自分のスピードカウンターを1つ減らす。
(4):自分のスピードカウンターを任意の個数取り除くことで、以下の効果を適用する。
●3個:手札の「Sp」魔法カードの数×400ポイントのダメージを相手ライフに与える。
●6個:自分のデッキからカードを1枚ドローする。
●8個:手札の「Sp」と魔法カードを相手に見せ、フィールド上に存在するカード1枚を破壊する。
「遊戯王Force」で実際に採用されているものです。
さあ、《地縛神スカーレッド・ノヴァ》を奪ったエデンの目的は…?