遊戯王 異世界のデュエリスト達   作:ナタタク

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第3話 手配

「久しぶりだな…」

旅立つ時、最後に来た高台から街を見渡す。

ヒイロが町を離れてから5年が経過するが、街の大部分に変化はなく、ダイダロスブリッジも健在だ。

ただ街には新たに開発されたDホイールが走っていて、旧BADエリアの開発も進み、旧モーメントは電源が抜かれ、二度と起動しなくなっている。

「久しぶりだな、ヒイロ」

背後から懐かしい仲間の声がする。

「遊星か…」

「ああ。珍しいな、お前から連絡してくるとは…」

そういうのも、ヒイロ自ら連絡することがなく、連絡が来ても返事をすることが少ない。

そのためにヒイロから連絡を受けた遊星は非常事態であると直感した。

「遊星、《地縛神スカーレッド・ノヴァ》がエデンという組織の手に落ちた」

「何…!?《スカーレッド・ノヴァ》がだと…?」

一瞬冗談のように聞こえたが、相手が相手な分、事実だと受け止めるしかない。

そして、ダークシグナーでさえも制御できない《地縛神スカーレッド・ノヴァ》であるため事態はさらに深刻だ。

「…。エデンについてはイェーガーも情報を集めている。詳しい話は研究所でしよう」

「そうだな…あまり人を入れるなよ?パニックになるだけだ」

ヒイロと遊星は自らのDホイールに乗り、高台を後にする。

そして、トップスのモーメント研究所にある遊星の研究室に入る。

あらかじめ、助手や他の研究者は遊星が外に出しておいた。

「見せてくれ、エデンに関する詳しいデータを」

「そういうと思って、イェーガーからその情報をもらっている」

懐からUSBメモリを取り出し、パソコンに接続する。

すると画面には炎であぶられている赤い十字架のようなエンブレムが表示される。

「このエンブレムが…」

「ああ、エデンのエンブレムだ。構成員に関する情報も規模も一切不明で、分かっていることが古代神復活を目指していることだけだ」

次に表示されたのは黒ずくめのロボットたちだ。

「遊星…やはりあのロボットたちは…」

「そうだ、俺たちがあの時戦ったライディングロイドを原型としている。だいぶ改造されていて、性能も段違いだが…」

「これだけの技術力…不気味だな」

「国連の資料で初めてその名前が出てきたのは10年前。アメリカでのレアカード密造工場摘発の時だ。そして2例目が四川で起こった暴動、その黒幕で…」

他にもカード盗難や大量失踪、内戦といった事件の情報が表示され、いずれもエデンが関与している。

「イリアステル以上に厄介だな。遊星、飛行機の手配、頼めるか?」

「飛行機だと…?」

「ああ。《スカーレッド・ノヴァ》を取り戻すためにも、相手が動いた時に即座に急行できるようにしたい」

「…分かった。お前のことだ、止めても無駄だからな」

遊星は携帯で自らの研究のスポンサーの1つであるシュレイダー財団に連絡を入れる。

「遊星、今度の休みのことなんだけ…ど…」

「ちっ…」

急に自動ドアが開き、アキが入ってくる。

現段階では部外者である彼女にヒイロは舌打ちする。

(遊星…彼女にはパスワードを教えていたんだな)

「ヒイロ!!いつ戻ったの?」

「ついさっきだ」

「そ…そう…。遊星、話が終わったら来て。ここの2階のテラスで待ってるわ」

ヒイロの目を見て、少し怖いと思ったアキは遊星に多くの資料が入ったファイルを渡してすぐに出て行った。

「なんとか交渉はできた。2日後、アルトセイムの空港に飛行機がつくように手配してくれる」

「アルトセイム…」

小さな声で遊星が言った町の名前を言う。

旅先で知ったことだが、そこがヒイロの養父の故郷だ。

「ああ…そういえば、その町にトーマというデュエリストがいるな…」

「トーマ?誰だ、そいつは…」

「彼はブルーノが持っていたTGシリーズを持っている。そして、アクセルシンクロを使いこなす将来が楽しみなデュエリストだ。そして、気になるカードを持っている」

「気になるカード…?」

「ああ。《シルバームーン・ドラゴン》というカードで、なぜか俺たちの竜と同じ何かを感じた」

「…シグナーか、赤き龍との関連があるということか…」

《マリンフォース・ドラゴン》を見ながらつぶやく。

「とにかく、情報があったらすぐに伝えてくれ」

荷物を手に取り、部屋を出ようとする。

「待て、俺も行く」

「何?」

「地縛神は止めなければならない。シグナーとダークシグナーの因縁に終止符を打ってくれたルドガーとゴドウィンのためにも」

「俺はあいつら疫病神のために戦うつもりはない。ついていくというなら勝手にしろ」

「私も行くわ」

再びドアが開き、アキが入ってくる。

「アキ…」

「趣味の悪い女だな」

ファイルを開き、多くの資料の中に映画のチケットがある。

チケットの裏をめくると、最近開発された小型盗聴器がついていた。

「ヒイロ、そんなことを龍可に言ったら嫌われるわよ?」

ジト目でヒイロを見た後、ゆっくり遊星に目を向ける。

「遊星、あなただけを危険なところに行かせるわけにはいかないわ。何が何でもついていくわ」

「アキ…」

しばらく2人が見つめあう。

「来るなら勝手にしろ」

「ヒイロ、ありがとう」

「とりあえず、2日後のためにヒイロは俺の家で…」

「俺は先にアルトセイムへ行く」

「ヒイロ!!」

遊星とアキを置いて、研究室から出る。

(誰がお前らのところで泊まるか…!!)

駐車場でトライアクセラーを取り付け、ストライクチェイサーに乗ろうとする。

「…!!」

すると急に命の石が光り始め、ヒイロにあるビジョンを映し出す。

夜明けの近い時間帯のハイウェイでまばゆい銀色で4枚の翼と黄色い瞳を持つ巨大な翼竜が《機皇帝ワイゼル∞》を破壊し、上空で赤き龍が見つめている…。

「今のは…」

ビジョンが消えた後、額の汗をぬぐいながら再度ストライクチェイサーに乗る。

(赤き龍…そしてあの銀色の竜…か…)

このビジョンが示している意味を考えながら、ヒイロはアルトセイムへ向かう。

 

Dホイールのおかげで、わずか1時間でアルトセイムに到着する。

アルトセイム、中心街はネオ童実野シティのような先進性が目立つ町並みで、臨海部が公園を中心に自然の景観を示した街。

元々は海底の地形を生かした海産業の町だったが、二十数年前に海馬コーポレーションやその関連企業が進出したことで中心街を中心に大きな発展を遂げた。

海産業と工業の両立した、地方都市の新たな姿として政治的にも経済的にも注目を集めている。

「臨海部なら、野宿ができるな」

ホテル代をやはり節約したいのか、臨海部の公園にテントを張るヒイロ。

そのまま彼は中心街での道路工事の日雇労働とエデンに関する情報収集に2日を費やすことになった。

そして、飛行機が来る日の早朝…。

「うん…」

まだ日が昇りかけという時間帯でヒイロが目を覚ます。

「ちっ…なぜこの時間帯に…」

いつもならばもう少し遅く起きるが、起きてしまった以上仕方がない。

コンビニへ朝食を購入するためにテントを出るヒイロ。

公園の東側にはハイウェイが存在する。

その方向を見たとき、ヒイロの目が大きく開く。

「これは…」

ヒイロが見たものは二日前に見たビジョンと全く同じ光景だった。

あの銀竜が放つ光からは遊星が言っていた感覚が感じ取れる。

(間違いない…あの竜は俺たちの竜と同じ力を持っている…)

もしかしたら、彼の力を借りればエデンに対抗できるかもしれない。

そう思ったヒイロはすぐにテントを片づけ、カフェ・シュガルへ向かう。

そこについては遊星があらかじめトーマから聞いていて、そこへの場所はナビで把握できる。

(御剣トーマ…協力を受けてくれる可能性は低いが、会って損はない)

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