遊戯王 異世界のデュエリスト達   作:ナタタク

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第5話 砕ける聖域 神よ眠れ

「はあ…はあ…はあ…」

「これで…最後だ!!バーニング・ソウル!!」

ジャックの《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》の灼熱の突撃が《機皇帝グランエル∞》を粉々に打ち砕き、最後のロボットが機能を停止させる。

今たっているのは遊星とジャック、クロウだけで残りのメンバーは全員疲れで座り込むか倒れこむかしている。

「遊星…取りこぼしはないな…?」

「ああ、ジャック。これでロボットは全滅だ」

「けど…トーマがまだ…」

フェイトが空を見上げる。

上空には地縛神の力でさらなる力を得た紛い物の龍と赤き龍が争い合っている。

あまりにも高い位置にいるため、確認はできない。

「トーマ…」

「遊星、ヒイロ達は…」

「大丈夫だ。2人は絶対に負けない。俺たちにできることはただ信じて待つことだけだ」

 

ケイラン

手札0

ライフ4000

場 不滅竜(《ビッグバン・シュート》装備) レベル0 攻撃2400

 

トーマ&ヒイロ

手札

トーマ1

ヒイロ1

ライフ3000

場 TGラッシュ・ライノ レベル4 守備800

 

「俺のターン、ドロー!!」

 

トーマ

手札1→2

 

「俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド!」

 

ケイラン

手札0

ライフ4000

場 不滅竜(《ビッグバン・シュート》装備) レベル0 攻撃2400

 

トーマ&ヒイロ

手札

トーマ2→0

ヒイロ1

ライフ3000

場 TGラッシュ・ライノ レベル4 守備800

  伏せカード2

 

「ふふふ…《不滅竜》とこの小僧を手にされてはこうもなろう。そろそろ我が力のさらなる高みを見せよう」

ケイランが上空に左手を掲げる。

すると、上空に再び裂け目が生まれ、《不滅竜》と共にその中に入って行った。

「裂け目に自分から…!?」

「これでたとえ小僧を取り戻したとしても、《不滅竜》を止めることはできん」

ケイランの声が耳ではなく、2人の脳に直接聞こえてくる。

「私のターン!」

 

ケイラン

手札0→1

 

「《不滅竜》よ、再び愚鈍なる異端者の力を奪え」

突然赤き龍の背後に裂け目が生まれ、そこから《地縛神Chacu Challhua》が現れる。

「そんな…!!このままだとどこから攻撃してくるか分からない!!」

《地縛神Chacu Challhua》の口から放たれたコールタールのような黒い濁流が《TGラッシュ・ライノ》の体を凍りつかせる。

 

TGラッシュ・ライノ レベル4 守備800→0 攻撃1600→0

不滅竜 レベル0 攻撃2400→3400 守備2000→3000

 

「攻撃力3400…このまま《ラッシュ・ライノ》が攻撃されれば、3400のダメージで俺たちは終わる…」

「人の世には百万一心という言葉もあるようだが、人は我にとってはもろい木の矢同然。百万の矢など敵ではない。さあ、とどめをさせ。《不滅竜》!!」

どこからともなく《不滅竜》の咆哮が響き渡る。

すると町から突然マグマの柱が出てきて、赤き龍めがけて伸びていく。

「今度は太陽光線ではなく、地底のマグマを…!!」

《TGラッシュ・ライノ》が赤き龍の真下に行き、マグマを受け止める。

「ふん、律儀なモンスターだ。だが守備力0では焼け石に水だ」

ケイランの言うとおり、2秒足らずで《TGラッシュ・ライノ》が破壊される。

そして、マグマの柱は赤き龍の頭部を飲み込んでいった。

「「ヒイロ!!」」

「「トーマーーー!!」」

「ハハハハ…やはり神たる私の敵ではなかったようだな。さぁ、新たなる世界へ…」

再び生まれた裂け目から姿を現した《不滅竜》とケイラン。

上空で、彼は《不滅竜》に向けて右手から青い光のオーラを放つ。

「わが命と汝の命を共有し、完全なる不死とならん…何!?」

急にルカスのいるカプセルから青い光が発生する。

「なんだと…!?光が…精霊の力が生み出しているのか…!?」

(古代神ケイラン…デュエルはまだ終わってないよ)

その声を聞いたケイランは赤き龍に目を向ける。

赤き龍はマグマをはねのけ、引き続き空を飛んでいる。

「バカな…!もう貴様らのライフは…」

「俺はダメージを受ける直前に罠カード《ムーンライト・リフレッシュ》を発動したんだ!このカードは俺が相手モンスターの攻撃によってダメージを受ける時、そのダメージを半分にする!」

 

トーマ&ヒイロ

ライフ3000→1300

 

「まだ神に抗うつもりか…?」

「まだだ。《ムーンライト・リフレッシュ》は発動したターンの終了時に、デッキから受けたダメージ以下の攻撃力を持つムーンライトモンスター1体を手札に加えることができる」

「ふん…だがその程度で私を倒すことはできん。我は手札から装備魔法《不滅なる神聖》を発動。これを装備したモンスターは1ターンに2度まで相手モンスターの効果の発動を無効にする。私はこれでターンエンド」

「《TGラッシュ・ライノ》の効果発動!このカードが破壊され墓地へ送られたターンの終わりにデッキからこれ以外のTGモンスター1体を手札に加えることができる。俺はデッキから《TGランチャー・シーホース》を手札に加える!更に《ムーンライト・リフレッシュ》の効果でデッキから《ムーンライト・サーバス》を手札に!」

 

ケイラン

手札1→0

ライフ4000

場 不滅竜(《ビッグバン・シュート》《不滅なる神聖》装備) レベル0 攻撃3400

 

トーマ&ヒイロ

手札

トーマ0→2(《TGランチャー・シーホース》《ムーンライト・サーバス》)

ヒイロ1

ライフ1300

場 伏せカード1

 

ムーンライト・リフレッシュ

通常罠カード

(1):相手モンスターの攻撃によって自分が戦闘ダメージを受ける時にのみ発動できる。そのダメージを半分にする。

(2):(1)の効果を発動したターンの終了時に、自分はデッキからその時受けたダメージ以下の攻撃力を持つ「ムーンライト」モンスター1体を手札に加えることができる。

 

不滅なる神聖

装備魔法カード

「不滅竜」にのみ装備可能。

(1):1ターンに2度、相手が装備モンスターあるいはこのカードを対象にモンスター効果を発動した時に発動できる。その発動を無効にする。

 

「俺のターン!」

 

ヒイロ

手札1→2

 

「マスター!」

「な…!?」

急に目の前にアクアが姿を現す。

「アクア…何のつもりだ」

「驚いてくれてもいいのに…マスターはノリが悪いなぁ」

「黙っていろ」

「はいはい。それよりマスター。僕を召喚してよ」

「何…?今の状況を分かっているのか?」

《不滅なる神聖》の力を得た《不滅竜》は1ターンに2度も相手モンスターの効果をはねのける。

これではアクアの力を使っても、《不滅竜》を手札に戻すことはできない。

それだけでなく、今の状況ではその効果を発動できるかすら危うい。

「大丈夫だよ、マスター。僕たちが勝利への道を作るんだ。それに、カプセルの中にいるあの子を助けたいでしょ?」

アクアの言葉を受け、ヒイロはじっと裂け目を再び作るケイランと《不滅竜》、そしてカプセルを見る。

「ヒイロ…カプセルが…」

「青い光…ルカス…分かった、アクア。お前を信じる。罠発動《ロスト・スター・ディセント》。墓地のシンクロモンスター1体を守備表示で復活させる。《マリンフォース・ドラゴン》を特殊召喚!」

「ハアアアア!!」

2人の前に青い粒子が集まっていき、それがアクアに変化していく。

「だが、この効果で特殊召喚されたアクアの守備力と効果は失われる」

 

マリンフォース・ドラゴン レベル8 守備2200→0

 

(今だ…!!)

石版の青い光が徐々に強くなっていく。

「なんだ…この光、あったけぇ…」

青い光から伝わる不思議な温かさにルカスは魅了される。

そんな中、アクアも同じ光を発生させる。

「暖かい光…」

「ニャーン…」

今まで怖くてカードの中に隠れていたスカーレットが飛び出し、気持ちよさそうにトーマの頭の上で丸くなる。

「アクア…これがお前の力なのか…?」

「僕だけの力じゃないけどね。…今、届けるよ」

アクアの右手に青い光が集まっていき、それがカプセルに向けて飛ばされる。

「光が…俺たちのところへ!!」

(いくよ…!!)

更なる青い光を得た石版に《マリンフォース・ドラゴン》のイラストが描きこまれていく。

そして、カプセルが砕けると同時に青く発光した状態の《マリンフォース・ドラゴン》がルカスを背中に乗せて出現する。

「もう1体の《マリンフォース・ドラゴン》!!?」

「石版がもう1体のアクアを生み出したのか…??」

「ちっ…人質を奪い返されたか」

もう1体の深海の竜は赤き龍に乗る2人の元へ行き、ルカスを託す。

「ルカス!!」

「トーマ兄ちゃん、助けてくれるって信じてたぜ!!」

「俺じゃないよ。ヒイロが助けたんだ」

「ヒイロ…?このおっちゃんのことか?」

「そうだ。早くこのデュエルを終わらせて、帰るぞ」

ルカスに目を向けることなく、淡々とそう告げる。

だが、心中では喜びがあふれていた。

「(今度は…助けることができた。感謝するぞ、アクア、トーマ…)俺は手札から速攻魔法《シンクロ・ワープバリア》を発動。俺のフィールド上のシンクロモンスター1体を次の俺たちのターンのスタンバイフェイズまで除外する。そして、次の相手のターン終了時まで互いのモンスターは戦闘では破壊されず、俺たちは戦闘ダメージを受けない」

アクアの体が水のバリアとなって赤き龍を包む。

それと同時にもう1体のアクアは姿を消していった。

「ええい…」

「(あとは…こいつを伏せるだけだ)更に俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

ケイラン

手札0

ライフ4000

場 不滅竜(《ビッグバン・シュート》《不滅なる神聖》装備) レベル0 攻撃3400

 

トーマ&ヒイロ

手札

トーマ2(《TGランチャー・シーホース》《ムーンライト・サーバス》)

ヒイロ2→0

ライフ1300

場 伏せカード1

 

シンクロ・ワープバリア

速攻魔法カード

(1):自分フィールド上のSモンスター1体をゲームから除外することで発動できる。次の相手のターン終了時まで互いのモンスターは戦闘では破壊されず、自分が受ける戦闘ダメージは0となる。次の自分のターンのスタンバイフェイズ時に、この効果で除外されたモンスター1体を攻撃表示でフィールドに戻す。

 

同時にケイランと《不滅竜》が裂け目の中へ消えていく。

「今更人質などどうでもよい。どの道お前たちは《不滅竜》を倒すことはできない。私のターン」

 

ケイラン

手札0→1

 

「私は手札から魔法カード《不滅なる炎》を発動。私のフィールド上に《不滅竜》もしくは《アルティマヤ・ツィオルキン》が存在するとき、1ターンに1度相手に800ポイントのダメージを与えることができる」

急に2人の頭上に裂け目が生まれ、そこから青い炎の雨が降ってくる。

「くっ…!」

「うわああ!!」

赤き龍が炎の雨をよけながら進むが、雨が止んだころには彼らの体に複数の火傷ができていた。

 

トーマ&ヒイロ

ライフ1300→500

 

不滅なる炎

永続魔法カード

(1):1ターンに1度、自分フィールド上に「不滅竜」、「アルティマヤ・ツィオルキン」のいずれか1体が存在するときに発動できる。相手に800ポイントのダメージを与える。

 

「これで私はターンエンド。次が貴様らのラストターンだ」

 

ケイラン

手札1→0

ライフ4000

場 不滅竜(《ビッグバン・シュート》《不滅なる神聖》装備) レベル0 攻撃3400

  不滅なる炎(永続魔法)

 

トーマ&ヒイロ

手札

トーマ2(《TGランチャー・シーホース》《ムーンライト・サーバス》)

ヒイロ0

ライフ500

場 伏せカード1

 

「トーマ兄ちゃん!ヒイロおじちゃん!!」

ヒイロにかばわれたために無傷で済んだルカスが2人を心配する。

「この程度…何の問題もない」

「俺もだ。まだまだあきらめない!」

火傷の痛みに耐えながら、トーマがゆっくりと立ち上がる。

すると彼のデッキトップが赤く輝き始め、彼の背中に赤き龍の痣が出現する。

「この力ってあの時の!!」

「赤き龍の痣…トーマ!」

「ああ!俺のターン、ドロー!!」

 

トーマ

手札2→3

 

「このターンのスタンバイフェイズ時に《マリンフォース・ドラゴン》が戻ってくる!」

「よーし、僕が道を切り開くよ!!」

水のバリアがアクアの姿に戻っていく。

 

マリンフォース・ドラゴン レベル8 攻撃2600

 

「《マリンフォース・ドラゴン》の効果発動。《不滅竜》を手札に戻す!」

「いくぞ!!マリン・パニッシュ!!」

アクアが翼を動かすと、赤き龍が赤く光る水を口から放つ。

「《不滅なる神聖》の効果により、その効果を無効にする!」

《不滅竜》の目の前に裂け目が現れ、水がその中に消えていく。

「今だ、トーマ!!」

「ああ!!俺は手札から《ムーンライト・サーバス》を召喚!」

白銀の長いドレスを身に着け、ピンク色のショートヘアの少女が現れる。

 

ムーンライト・サーバス レベル1 攻撃0

 

「《ムーンライト・サーバス》の効果発動!このカードの召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、俺のフィールド上のシンクロモンスター1体をエクストラデッキに戻すことで、エクストラデッキ・墓地から《シルバームーン・ドラゴン》をシンクロ召喚する!」

少女の右手に装備されている杖から月の光が放出される。

するとケイランが生み出した太陽が消滅し、月夜に戻る。

「何!?私の太陽が…!!」

「あとはお願いね、ユウキ」

「うん、任せて」

ユウキとわずかに受け答えすると、アクアが姿を消す。

そして月から飛来したかのようなエフェクトでユウキが現れる。

 

シルバームーン・ドラゴン レベル8 攻撃2700

 

ムーンライト・サーバス

レベル1 攻撃0 守備0 効果 光属性 魔法使い族

(1):このカードの召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、自分フィールド上に存在するSモンスター1体を除外することで発動できる。自分のエクストラデッキ・墓地から「シルバームーン・ドラゴン」1体をS召喚扱いにして特殊召喚する。

 

「《シルバームーン・ドラゴン》の効果発動!!今度こそ《不滅竜》の効果を無効にする!」

「うおおお!!」

ユウキの水晶から放たれた透明な波紋が放たれるが、どうなるかは誰もが理解している。

「その程度の効果、《不滅なる神聖》によって無効となる!」

《不滅竜》が咆哮すると目の前に《地縛神Wiraqocha Rasca》が現れ、代わりに波紋を受けて消滅した。

「フフフ…これで万策尽きたな」

「驕るな、万策尽きたのはお前の方だ」

「何?」

「トーマ、俺が伏せたカードを」

「ああ!!俺はフィールドから魔法カード《二重召喚》を発動!これで俺はこのターン、もう1度だけ召喚できる。その効果で俺が召喚するのは《救世竜セイヴァー・ドラゴン》!!」

赤き龍が紺碧の輝きを放ちながら目の前に赤い卵を創造する。

その卵は即座に孵化し、《救世竜セイヴァー・ドラゴン》が姿を現す。

 

救世竜セイヴァー・ドラゴン レベル1 攻撃0(チューナー)

 

「いくぞ!!俺はレベル8の《シルバームーン・ドラゴン》とレベル1の《ムーンライト・サーバス》にレベル1の《セイヴァー・ドラゴン》をチューニング!聖なる月の輝きよ、今ここに集いて、闇を浄化する一閃の奇跡となれ!!シンクロ召喚!!降臨せよ、《セイヴァー・ムーン・ドラゴン》!!」

月から黄色い粒子が地上に振り始め、それと共に《セイヴァー・ムーン・ドラゴン》が現れる。

 

セイヴァー・ムーン・ドラゴン レベル10 攻撃3800

 

「ええい…忌々しい!!」

「《セイヴァー・ムーン・ドラゴン》の効果発動!!《不滅竜》の効果と力を封印する!!エターナル・サンクチュアリ!!」

《セイヴァー・ムーン・ドラゴン》が生み出した魔法陣によって、ケイランもろとも《不滅竜》が拘束される。

「ぐうう!!おのれ、赤き龍め!!!」

 

不滅竜 レベル0 攻撃3400→0

 

「更に俺は手札の《TGランチャー・シーホース》の効果発動!このカードを手札から墓地へ送ることで、俺のシンクロモンスター1体の攻撃力をターン終了時まで1000ポイントアップさせる!」

背中にミサイルランチャーとロケットランチャーを装備した青いウツボを模した戦士の幻影が現れ、《セイヴァー・ムーン・ドラゴン》に力を与えていく。

 

セイヴァー・ムーン・ドラゴン レベル10 攻撃3800→4800

 

TGランチャー・シーホース

レベル2 攻撃1200 守備900 効果 水属性 海竜族

「TGランチャー・シーホース」の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードを手札から墓地へ送ることで発動できる。自分フィールド上に存在するSモンスター1体の攻撃力をターン終了時まで1000ポイントアップさせる。

(2):(1)の効果で墓地へ送られたこのカードは発動してから2回目の自分のターンのスタンバイフェイズ時に自分フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたこのカードの攻撃力・守備力は0となる。

 

「攻撃力…4800…!?」

「バトルだ!!俺は《セイヴァー・ムーン・ドラゴン》で《不滅竜》を攻撃!!エンシェント・コメット・ストライク!!!」

猛スピードで突撃してくる《セイヴァー・ムーン・ドラゴン》を見て、ようやく魔法陣を破壊した《不滅竜》がバリア代わりに裂け目を目の前に生み出す。

しかし、赤き龍の力を受けた《セイヴァー・ムーン・ドラゴン》の突撃は裂け目もろとも《不滅竜》を貫いていった。

「愚かなものどもめぇーーー!!私は死なん、決して死なんぞーーーー!!」

《セイヴァー・ムーン・ドラゴン》の強烈な輝きの中でケイランと須郷の肉体は灰となっていった。

 

ケイラン

ライフ4000→0

 

「…終わった…」

「けれど…あまりにもひどい状況だ…」

赤き龍から降り、廃墟と化したクレムリンを見ながら、ヒイロは言う。

デュエルによる影響で廃墟と化したモスクワとイスタンブール。

《不滅竜》もろとも地縛神を倒したことで、人々は解放されるかもしれないが復興には気の遠くなるような時間がかかるだろう。

「うん…?」

ヒイロ達の目に月の光を宿した粒子が映る。

上空で砕け散った《不滅竜》の肉体が粒子となり、《セイヴァー・ムーン・ドラゴン》の力を受けたためかそのモンスターの力の一部を宿したのだろう。

「きれいな粒子だな…」

「…!?おい、あれを見ろよ!!」

「どうしたんだよ、ルカス」

「建物が…建物が元に!!」

ヒイロ達は崩壊したクレムリンをじっと見る。

なんとあの歴史的価値の高いロシアの宮殿がゆっくりと、しかし確実に元の姿を取り戻して言っている。

それだけではない。

戦いで崩壊した町や土地、木々や花などもその粒子によって元通りになっていく。

「すげぇ…こんなの初めて見たぜ!!」

「ユウキ、これは…」

「赤き龍のおかげ…かな?」

ユウキが精霊の姿で現れ、どこかへ去っていく赤き龍を見つめた。

「モスクワはこれで大丈夫だろうが、イスタンブールは…」

Dホイールの状態で待機しているストライクチェイサーの元へ向かい、ネットを介してTVを見る。

(皆さん、これは映画でもねつ造でもありません!!現実に起こっているのです!!イスタンブールに黄色い粒子が降り始め、それと同時に町が元に戻っていきます!!一体あの粒子が何なのか、そしてそれと町の復活がどのような関連性を持つのか、専門家たちも首をかしげ…)

「良かった、これでイスタンブールも無事に元通りになる」

TVを消すと、ヒイロはトーマに目を向ける。

「世話になった。お前がいなければ、おそらく世界は奴の手に落ちていた」

「お礼を言うのはこっちの方だよ!ヒイロが助けてくれたから、ルカスを助けることができたんだ。ってあれ…!?」

ルカスに目を向けた2人の目が大きく開く。

再び石板が青く光り始め、ルカスの体からも同様の光を発している。

「これは…」

「ルカス!この光は…?」

「…この石版が教えてくれた。俺、こいつのせいでこの時代にタイムスリップしちまったんだ」

「タイムスリップ…じゃあルカスは…」

「ああ、トーマ兄ちゃん。俺はこれから30年くらい前のアルトセイムから来たんだ。それで、そろそろ帰らねえと…」

「…」

寂しげな表情のルカスをヒイロは静かに見つめる。

ルカスという名前と石版が生み出したもう1体のアクアからうすうす気づいていた。

「ごめんよ、トーマ兄ちゃん。デュエルの約束をしたのに…」

「いいんだ。また…会えるよな?」

不安げにそう質問するトーマ。

30年という長いときの中で、もしくは元の時代に戻ることでトーマとの記憶がルカスの中から消えるかもしれない。

そして、そもそもルカスと生きてまた会えるかどうかもわからない。

「…おう!!絶対に会おうぜ!!その時はこのデッキで俺とデュエルしてくれよ!!俺も俺だけのデッキを作る!!」

そういうと、ルカスは借りていたデッキをトーマに投げ渡す。

「ルカス!!」

「絶対に忘れない!!トーマ兄ちゃん、ヒイロおじちゃん、助けてくれてありがとな!!!」

涙を浮かべながらも笑顔のままルカスは消えて行った。

「また会おう…ルカス…」

(さようなら…ルカス…義父さん…)

ルカスが消えるのを見届けたヒイロは落ちている地縛神のカードを今度こそ回収する。

「マスター、カードの中から地縛神の魂が完全に消滅してる。もう、蘇ることはないよ」

「なら後はボマーにこれを返すだけだな」

ヘルメットをつけ、ストライクチェイサーを起動させる。

「え…!?ヒイロ、もう行くのか??」

「旅の途中だからな。それに、もう飛行機の墜落はこりごりだ」

その言葉にトーマが苦笑いをする。

わずかな期間で何度も墜落経験をした男と誰も飛行機に乗りたくないだろう。

「これを渡しておく」

出発前に、トーマに2枚のカードを差し出す。

それは《超融合》と《Sp-超融合》のカードだ。

「これは…?」

「お守りだ。おそらく、お前にはこれから数多くの苦難が襲い掛かる。守ってもらうんだな」

「ヒイロ…」

「主、我らのこともお忘れなく」

「そうだよ!僕たちはマスターの精霊なんだから」

「ニャー!」

トーマの精霊たちが彼のそばに現れる。

「みんな…」

「いい精霊を持っているな」

そう言い残すと、ストライクチェイサーを発進させる。

「じゃあな!ヒイローーー!!」

勝手に逝ってしまったことを少し恨めしく思いながら、ヒイロの後ろ姿に手を振る。

「トーマーーー!!」

「おーーーい!!」

そんなトーマの元に傷や汚れでいっぱいになったフェイトたちがやってくる。

「みんな!!!」

トーマは嬉しそうに彼らの元へ走って行った。

 

「う…ん…??」

古びたジャングルジムとブランコ、鉄棒のある公園でルカスは目を覚ます。

「ここって…いつも俺がいる公園!!」

見慣れた景色を見て、帰ってきたことを確信する。

「…ってあれ?このカード…」

左手に握られているカードを見て、ルカスが驚く。

つい先ほどまで石版を握っていたはずだった。

しかし、その手に握られていたのは《マリンフォース・ドラゴン》のカードだった。

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