術式【龍魂珠(アントマ・タン・ゲンド)】   作:大トロろ

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前世という名の呪い




呪い

 

 

 

『おい……おい! 大丈夫か?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あ?」

 

 

 

『あ?じゃねえよ。デュエル中に寝るなんてよ。やっぱ疲れてんじゃねえのか?』

 

 

 

 

 

『仕事終わりに直行はキツかったんじゃない? 大丈夫かよ』

 

 

 

 

少し黄ばんだ天井。

ガチャガチャと鳴る、ストレージの音。

紙とプラスチックが混じった、懐かしい匂い。

 

 

 

 

 

 

……ここは。

 

デュエルスペースだ。

 

 

 

 

 

カードショップの、蛍光灯の下。

 

 

 

……そうだ。

俺は友達二人と、デュエルしてたんだ。

 

 

 

 

 

 

「いや……問題ねえ。続けるわ。……どこら辺だっけ?」

 

 

 

 

 

『お前なぁ……Vol-Val-8でEXターン始めるところだよ。まあ、いつも通りなら俺はほぼ詰みだな』

 

 

 

 

「…まあな」

 

 

 

俺の盤面には《禁断竜王 Vol-Val-8》。

 

手札も問題ない

 

 

いつも通り、トリガーケアしながらEXターンを取って――

勝ちだ。

 

 

『くそー! 先行取れたら勝てそうな手札だったのによ!』

 

 

 

 

「お前、じゃんけん弱すぎなんだよ。練習でもする?」

 

 

 

 

『布瑠部由良由良……!』

 

 

 

 

 

『あらゆる事象への適応……! 最強の後出し虫拳!』

 

 

 

 

「ジャッジ!! 対戦相手が後出しジャンケンしてきまーす!!」

 

 

 

 

『全て……問題なし!』

 

 

 

 

「その目ん玉、節穴かぁ!?」

 

 

 

三人で、ドッと笑う。

 

 

 

……ああ。

楽しいな。

 

 

 

コイツらと、こうやってバカやるのは。

 

 

 

『それじゃ、プレイ続け――』

 

 

 

 

 

 

『あ、待った』

 

急に、隣で見ていた友人が口を挟む。

 

 

 

 

「ん? なんか忘れてることあったか?」

 

 

 

 

 

 

『…もう、起きる時間だぞ』

 

 

『…うわ、マジか。早いな』

 

 

 

 

 

 

……何の話だ?

 

 

 

 

なんで、デッキを片付けてる?

 

 

 

 

「おい! どうしーーッ!?」

 

 

立てない。

椅子から、立ち上がれない。

 

 

 

 

 

『どうして、か?』

 

 

友人が、静かに言う。

 

 

 

 

 

 

『お前が一番、分かってるだろ』

 

 

「……何、を……」

 

 

 

 

 

二人は俺を置いたまま、荷物をまとめて出口へ向かう。

 

「待って……なあ……」

 

 

 

 

 

『じゃあな、…元気でな。』

 

 

『変なプレミして負けんじゃねえぞ。お前、たまに変なミスするから』

 

 

 

 

……何言ってんだよ。

 

 

 

 

 

 

待ってくれよ。

 

 

 

 

 

なあ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…置いていかないで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…………ボケがよ』

 

 

 

 

 

――目が覚めた。

 

 

 

 

見慣れた天井。

 

 

 

 

今世の、俺の部屋。

 

 

……酷く、残酷で。

それでいて、やけに優しい夢だった。

 

 

 

 

 

 

 

胸の奥が、じんわりと痛む。

 

 

 

 

昨日。

俺は廃墟に行って、呪霊に襲われた。

 

そして――

 

 

「……ディスペクターを、召喚した」

 

 

 

 

夢じゃない。

はっきり覚えている。

 

 

 

あの光。

あの咆哮。

あの、“王”。

 

 

 

 

……整理しよう。

 

 

 

 

俺の術式は、

自身の呪力を“マナ”として扱い、

ディスペクターを式神として召喚するもの。

 

 

 

多分、そうだ。

 

 

 

「……はは」

 

 

 

 

乾いた笑いが、漏れた。

 

 

 

「確かに……前世、ディスペクターしか使ってなかったもんな」

 

 

 

デュエマでも。

他のデッキには目もくれず、

癖の強いディスペクターばかり握っていた。

 

 

 

 

それが――

そのまま、術式になった。

 

 

 

 

ドルファディロムが出てきたのはそういうことなんだろう。

 

 

 

 

…………いや、待て。

おかしい。

 

 

 

あの廃墟での最後の記憶は…

 

 

呪霊が消し飛んだ所で最後だ。

 

 

 

 

 

廃墟で気を失ったなら、

なんで俺は――家にいる?

 

 

 

 

 

見慣れた天井。

見慣れたカーテン。

カレンダーも、時計も、ズレていない。

 

 

 

 

夢じゃない。

確かに、呪霊と戦って、意識を失った。

 

 

 

 

 

なのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ちぇいや』

 

 

 

 

 

 

 

………………は?

 

 

 

 

間の抜けた声。

 

 

 

ベッドの横――

 

 

 

視線を落とした瞬間、そこに“何か”がいた。

 

 

 

 

鈍く光る、二つの目。

湿った呼吸音。

金属を擦るような、微かな機構音。

 

 

 

『ちぇいやー』

 

 

 

短く、濁った鳴き声。

 

 

 

思考が追いつく前に、

視覚が先に答えを出していた。

 

 

 

 

「………………。」

 

 

 

 

見覚えが、ありすぎる。

 

 

 

 

 

「……お前……

 《月砂 フロッガ-1》か?」

 

 

 

その名前に反応したかのように、

そいつはぴくりと首を傾げた。

 

 

月砂色の鱗に覆われた身体。

首元には火文明を思わせる呪布。

ところどころに鉄のような装甲。

そして、特徴的な角。

 

 

――トカゲのような、

だが“生物だけで完結していない”存在。

 

 

 

『ちぇいや』

 

 

 

肯定するように、もう一度。

 

 

 

ベッドの下から這い出し、

床をのそのそと歩き回る。

 

 

 

……でかい。

 

 

 

想像以上だ。

全長は、ざっと見て二メートル近い。

 

 

 

 

「………………」

 

 

 

俺は、ゆっくりと息を吐いた。

 

「……まさか」

 

 

 

 

 

 

 

「……お前が、

 俺を家まで運んだのか?」

 

 

問いかけても、

フロッガ-1は気にも留めない。

 

 

 

ただ、部屋を一周し、

置いてあった鞄の横で立ち止まり、

首を傾げる。

 

 

……間違いない。

 

 

 

俺の術式は、

ディスペクターだけじゃない。

 

 

ディスタスも――

“召喚できる”。

 

 

 

「…………はは」

 

 

乾いた笑いが漏れる。

 

 

「やっぱり、

 ロクでもねえ術式だな……」

 

 

 

呪術師としては、

明らかに異常。

 

けど。

 

 

胸の奥に、

確かに残る感覚があった。

 

 

――独りじゃない。

 

 

少なくとも今は。

 

 

 

『ちぇいやー!』

 

 

 

フロッガ-1は、

何も知らない顔で、

俺の部屋を歩き回っていた。




フロッガの鳴き声って意味あるんすね。

ちぇいや言ってますけど特に意味はないです。

これからの展開どうしよ

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