頭のおかしい全肯定娘が、事故で過去に飛ばされて自分の時代を救うまで   作:土縁屋

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二十三話 麗しの黒い百合

「えー? この……何? なんか……変な棒が本当に伝説の聖剣なんですか? ヒイナちゃんちょっと信じられないっていうか……」

「フフ。それはね、貴女に目利きが無いからよ。名品というのはね、見る人が見ればわかる。けれど見てわからない人には一生わからないものなのよ」

「えぇ……。うぅーん……。でも、なんかそう言われてみると、高貴な一品に見えないこともないような……☆」

 

 ヒイナは相変わらず、獅畑の街に滞在していた。

 そして元の世界に戻るための有用な情報を求めて情報収集をしていたところ、妙に目立つ容姿の商人から声をかけられた。

 

 その商人は銀の髪に紫の瞳を持つ、見るからに高貴な女性。

 地で生きるにはあまりにたおやかに見える彼女は、高貴な外見に反して相当にしたたかで口がうまいようだった。

 実際、ヒイナが今売り込みをかけられている聖剣とやらは、どこからどう見ても赤錆た鉄の棒でしかなかったし、それを聖剣として売りつけようという図太さ、厚かましさは並大抵ではない。流石の彼女も疑いを持ったのだが……。

 

 悲しいかな、頭の残念なヒイナで、太刀打ちなどできるわけがない。

 

 

「銘はね、超凄絶吃驚刀よ。磨いて錆を落としたら、七色に輝く光を放ちながら、遠くの敵も切り裂いちゃうんだから」

「ええ! すごい! ヒイナちゃんの隠しウェポンとして最適かもしんない! 実現不可能だった幻の必殺技、銀河系エクスプロージョンできちゃうかも☆」

「そうよ! そんなすごい剣が今なら……なんと!」

「……ゴクリ」

 

 美貌の商人は、わざとらしく溜めを作った。

 ヒイナはドギマギしながら続きを待つ。

 

「貴女の銭袋の中身、半分と交換でいいわよ!」

「ええっ、お得! いいんですか? そんなっ☆」

「もちろん。素直に話を聞いてくれたお礼よ。サービスしちゃうわ」

「優しい……☆」

 

 ヒイナはいそいそと財布から銭を半分取り出し、商人へ渡した。商人は厳かに受け取ると、機嫌良さそうに去っていった。

 

 

 そのあと、ヒイナは喜び勇んで棒を磨いてみたが、ソレは剣であるどころか、単なる鉄棒でしかなかった。

 けれども、ヒイナは気にしなかった。商人の話は面白かったし、お金を出すと決めたのは自分の選択だったからだ。

 

 ヒイナはこの鉄棒に、キラキラ星二世という名前をつけた。ちなみに、ヒイナがいつも使っている巨大剣はきらめき★一等星である。

 ヒイナにネーミングセンスはなかった。

 

 

 ───

 

 

 獅畑の人は冷たかったが、情報はかなり厳密に管理されていた。図書館に行けば鹿角領よりもずっと多くの知識に触れられたし、ソレらは残念な頭脳のヒイナをオーバーフローさせた。

 一週間に一度は鹿目に帰らなくてはならないヒイナだけれど、一度帰ってもここの蔵書を踏破するまでは何度だって通おうと、密かに決意していた。

 

「ん?」

「あっ」

 

 他の本を取ってこよう。

 そう思ってヒイナが立ち上がると、目が合った人がいた。あの商人である。

 商人は気まずそうにヒイナから目を逸らしたが、ヒイナは構わずに近付いた。

 

「こんにちは☆ 銀色の髪が今日も素敵ですね☆」

「……どうも」

「ヒイナちゃんは転移やワープのことを調べてるんですよ☆ 商人さんは何を読んでたんですか?」

「……っ。あなた、恨んでないの?」

「ん? 何の話ですか?」

 

 ヒイナは何のことか心底わからなかった。

 そんなヒイナの困惑を見て取り、バカバカしくなったらしい商人は、大きなため息をついた。

 

「……料理本よ」

「料理! いいですねぇ☆ ちなみにヒイナちゃんはサヨさんの作った紫お肉が一番好きです☆」

「いや、誰よサヨさんって」

「世界一の名料理人ですよ☆ 白鹿の街ですんごくお世話になったんですっ」

 

 あの、温もりに満ちた日々を思い返して温かい気持ちになっていると、「あなた鹿角領から来たの?」と商人が言った。

 

「そうですよ☆ ヒイナちゃんは身一つで世界各地を旅する、孤独な旅人なのだ☆彡」

「へぇ、その割に騙されやすいわね。……私に言えた義理じゃないけど、不用心に人を信じるもんじゃないわよ」

「いいんですよ〜だ! ヒイナちゃんは信じたい人を信じるんです☆彡」

「は、恥ずかしいことを、恥ずかしげもなく言う子ね……。恐ろしい」

 

 それから二言三言会話を交わして、二人は別れた。ヒイナは新しい出会いに対する高揚感で、今日は夜更かしをしてしまいそうだった。

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