大学の帰り、凛馬はふと胸の奥が焼けるように熱くなり、次の瞬間、視界が強い光に包まれた。目を開けると見慣れぬ景色―
街も建物もどこか異質で、空気には獣のような匂いが混ざり、通りを歩く影のいくつかは明らかに人ではなかった。夢だ、と凛馬は思った。だが、足裏に伝わる石畳の冷たさだけはやけに現実的だった。戸惑いながら歩いていると、突然赤い髪の猫耳の女・ミケが現れた。
「にゃっ⋯人間⋯!?」
ミケは目を丸くし、耳としっぽをピンと立てて驚きを隠せない。凛馬もまた、目の前の獣人を見て息を呑む。信じられない光景に混乱しながらも、通りを歩く者たちが皆、耳や尾を持っていることに凛馬は気づいた。
―少なくとも、ここは自分の知っている世界ではない。
その事実だけが、嫌というほど現実だった。
互いに驚きと好奇心が入り混じる空気の中、この違和感が、自分の人生を二度と元に戻らないものにすることを凛馬は知らなかった。
凛馬が混乱して周囲を見回していると、次々とクラスメイトたちが集まってきた。
「あら、本当に人間じゃない。珍しいわね~」
金髪の狐耳を持つコハクが、興味深そうに凛馬を観察しながら近づいてくる。
「··本物?」
黒髪ショートの豹族・ヒョウカが無表情のまま、ジト目で凛馬を見つめる。
「わぁ、本当だ!僕、人間見るの初めて!」
青緑色の髪の熊族・アオが、目を輝かせて凛馬の周りをぐるぐる回る。
「ちょ、ちょっと!みんな囲んじゃダメでしょ!怖がってるじゃない!」
三つ編みにメガネの兎族・ミナが慌てて割って入る。
「にゃはは〜!こんな珍しい子、私が保護するにゃ!ね、お家来る?」
ミケが嬉しそうに凛馬の手を握る。
「えっと⋯ごめん、まだ状況が飲み込めなくて⋯」
と凛馬が困惑した様子で言う。
「あ、そっか・・・確かにいきなり知らない人の家は怖いにゃね」
ミケが少ししょんぼりと耳を垂らす。
「あらあら、警戒心はあるのね。でも、この世界で人間が一人でいるのは危険よ?保護対象として扱われるか、ペットとして飼われちゃうかもしれないわよ〜?」
コハクがからかうように言う。
「・・・脅かすな。でも、事実ではある。この世界に人間の居場所はない・・・少なくとも、一人では」
ヒョウカが冷たく言い放つ。
「と、とにかく!まずは落ち着いて話しましょう。…名前は?」
「凛馬、です」
「私はミナ。こっちはミケ、ヒョウカ、コハク、それからアオ。同じ大学なの」
「僕たち、悪い人じゃないから!ね、信じて?」
アオが心配そうに凛馬を見上げる。
笑っているはずなのに、耳や牙、爪の先が妙に目についた。さっきまで可愛く見えていたはずの笑顔が、急に信用できなくなる。
—ここは、人間の世界じゃない。凛馬は実感した。
それでも、今この場で凛馬が頼れる相手は、目の前の彼女たちしかいなかった。
「分かった。そこまで言うなら信じてみるよ。」
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次回、凛馬、早速窮地に立たされます、、、
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