BEAST BLOOD   作:ruemtrnmdxxx

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ミケの家で穏やかな朝を迎えた凛馬。仲間たちと登校し、クラスメイトとも少しずつ距離を縮め始める。だが担任から元の世界へ帰る可能性を示唆され、ミケの心に不安が広がる。平和な日常の中に、別れの影が忍び寄っていた。そんなことお構い無しに、クラスメイト達はいつもの様に凛馬を囲むのだった。


12話 孤独の反動

休み時間。授業が終わるや否や、女子生徒たちが一斉に凛馬の机を囲んだ。

「凛馬くん!一緒に写真撮っていい!?」

「私も!私も!」

「凛馬くんって、本当に可愛い……触ってもいい?」

「にゃー!みんな、凛馬を困らせないでにゃ!」

ミケが慌てて割って入る。

だが―

「みんなで仲良く、だろ?」

凛馬のその一言に、ミケはそれ以上、強く拒めなくなってしまった。

「ふふ、凛馬くん。自分で言ったんだから、責任取らないとね」

コハクが楽しそうに笑う。

「ああ。友達は多い方が、楽しいよな」

凛馬はそう言って、明るく笑った。初日とは比べものにならないほど、自然な笑顔だった。

―だからこそ、ミケの表情が一瞬だけ切なげに揺らぐ。

“友達が多いと嬉しい”

その言葉の裏にある、凛馬の元の世界での孤独を思い出してしまったのだ。

「にゃ…凛馬…」

ミケは小さく呟き、そっと凛馬の手を握る。周囲には気づかれないように、指先だけを絡めて。

「友達!僕も凛馬くんの友達!ずっと一緒だよ!」

「お昼は私たちと約束してるんだから、忘れないでね?」

コハクが肩に手を置き、意味ありげに微笑む。

「俺とも友達になってくれよ!人間と話せるなんて、一生の思い出だ!」

「部活とか興味ない?バスケ部、人手不足なんだ!」

「…囲みすぎだ。凛馬が潰れる」

ヒョウカが低く言い、冷たい視線で生徒たちを牽制する。

「みなさん、少し距離を取ってください。凛馬くんも、困っています」

ミナが穏やかだがはっきりと告げると、生徒たちは名残惜しそうに一歩下がった。

教室の熱気が、少しだけ息苦しかった。

でも、嫌じゃない。この中心にいるのが、自分だなんて―

休み時間が変わると、今度は男子生徒たちも集まってくる。

「凛馬、元の世界ってどんな感じなんだ?」

「獣人はいないんだろ?」

「人間だけの世界……想像つかないな」

ミケたちも続く。

「にゃ、私も聞きたいにゃ!」

「凛馬くんの世界には、熊族はいないの?」

「……少し、興味はある」

「もしよければ、教えていただけますか?」

教室中の視線が、凛馬に集まる。

「…うん」

凛馬が話し始めると、教室は静まり返った。

獣人のいない世界。人間だけが暮らす街。似ている部分と、決定的に違う文化。

「へぇ……」

「意外と、ここと似てるんだな」

「でも、獣人がいないのは寂しいな」

「じゃあ…凛馬くんの世界にも、友達とかいたの?」

アオの無邪気な声が、教室に響いた。その瞬間、空気がわずかに張りつめる。

「……アオ」

ミケの声が、ほんの少しだけ強張った。

凛馬は一瞬、言葉に詰まる。その表情を見て、コハクは何も言わずに視線を逸らす。

「…今は、聞かなくていいわね」

「…空気読め」

ヒョウカが短く言う。

「…あっ、ごめんなさい……!」

アオは慌てて耳を垂らし、口をつぐんだ。凛馬は小さく息を吐いてから、無理のない笑顔を作る。

「…いたよ」

そう答えるまでに、ほんの一拍、間が空いた。それ以上は語らず、軽く肩をすくめる。 

「でも、今は違う」

そう言った瞬間、教室の空気が一気に柔らぐ。

「そうだよ!今は俺たちがいる!」

「凛馬は一人じゃない!」

「友達だろ!」

「にゃ!凛馬は、もう一人じゃないにゃ!」

ミケがぎゅっと抱きつく。

「そうよ。私たちがついてるんだから」

「ずっと友達だよ!」

「…悪くない連中だ。安心しろ」

ヒョウカが、ほんのわずかに口元を緩めた。

「凛馬くん…私たち、ずっと一緒です…」

その時、チャイムが鳴り響く。

「席に着け。授業を始めるぞ」

凛馬の周りには、確かに温かい空気が流れていた。

孤独だった少年は、今たくさんの"友達"に囲まれている。

その笑顔の輪の中で、凛馬は一瞬だけ思う。

―もし、これが消えたら。

その想像を、慌てて心の奥に押し込めた。




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