「にゃ!お昼にゃ!凛馬、今日も屋上で食べるにゃ!」
ミケがそう言って凛馬の手を引く。
昨日までと同じはずの仕草なのに、その距離感はどこか違っていた。強く引き寄せるでもなく、逃がさないように握るでもない。ただ隣にいるのが当たり前だと言わんばかりの、自然で温かな手の感触だった。
「僕も一緒!今日はね、お母さんが張り切って作ってくれたんだ!」
「ふふ、今日も賑やかなお昼になりそうね」
「…ついていく」
「今日も屋上ですね。楽しみです」
屋上にはすでに何人かの生徒が集まり、思い思いに昼食を取っていた。
凛馬の姿が見えた瞬間、何人かがこちらを指差し、声を上げる。
「あ、凛馬くんだ!」
「一緒に食べない?」
その前に、ミケが一歩前へ出た。
「にゃ!凛馬は私の家族にゃ!今日は私たちと食べるにゃ!」
その言葉に、周囲がざわつく。
"家族"。その言葉に凛馬は一瞬戸惑った。
その言葉を、自分に向けて使われたことはあっただろうか。そんな事が頭の中で浮かんでしまった。
「あら?今日は“家族”なのね」
「…凛馬は、私の大切な家族にゃ。弟みたいなものにゃ。だから守るにゃ」
そう言って、ミケは凛馬の頭を優しく撫でる。そこに独占欲はなく、ただ慈しむような温度だけがあった。
「じゃあ僕も兄弟だね!」
「…家族か。悪くない」
「凛馬くん…大切にされてますね……」
ただ、その群衆の中で「人間なのに?」と誰かが小さく呟いた。6人はその言葉を聞いていなかった。
六人で円になり、弁当を広げる。ミケの弁当には、凛馬の顔を模したおにぎりまで入っていた。
「にゃ!今日は私が作ったにゃ!」
「……すごいな」
「僕のお弁当も食べて!」
「私も…これ、どうぞ…」
「俺のも…食うか?」
気づけば、凛馬の弁当はおかずで山盛りになっていた。次々と差し出されるおかずに、凛馬の弁当はあっという間に山盛りになる。
良いペースでおかずを食べ進めていた凛馬だが、遂に限界が来てしまった。
「…ちょっと待て、さすがに多すぎ…」
ついに音を上げると、ミケが慌てて背中をさする。
「にゃ!?大丈夫にゃ!?」
「…無理するな」
「ほら、言いましたよね…」
「にゃ…残りは私達が食べるにゃ。家族なんだから遠慮しないにゃ」
みんなで分け合い、凛馬はようやく息をつく。
「凛馬、横になるにゃ。膝、貸すにゃ」
自然な動きで差し出された膝に、凛馬は少し迷ってから身を預けた。頭を撫でる手は、恋人のものではなく、守る者のものだった。
「…ありがとう」
「凛馬は私の大切な弟にゃ。つらい時は言うにゃ。お姉ちゃんが守るにゃ」
「あらあら、ミケったら完全にお姉さんね」
「僕も頼っていいからね!」
「…最初の警戒心はどこいった」
昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴る。
「にゃ!午後も頑張るにゃ!」
手を引かれて立ち上がる。
その距離はもう、不安でも支配でもなく―凛馬にとって初めての「居場所」の距離だった。
最後まで見てくださりありがとうございます!
次回、遂に校長との面談です、、、凛馬の心はどちらに傾くのか?
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