BEAST BLOOD   作:ruemtrnmdxxx

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ミケたちと屋上で昼食をとる凛馬は、“家族”として自然に迎え入れられる。仲間たちの優しさと気遣いに包まれ、凛馬は初めての居場所を実感する。そしてついに、一同は校長室へ向かう。


14話 余らない場所

五時間目、六時間目と授業が進み、気づけば放課後になっていた。

凛馬は、もうこの学校の空気に自然と溶け込んでいた。クラスメイトとの会話も、笑い声も、特別なものではなくなっている。

―それが、少し怖くもあった。

「凛馬くん、校長室へ行く時間だ。ミケも一緒に来なさい」

担任の言葉に、ミケの耳がぴくりと揺れ、そしてしょんぼりと垂れた。

「にゃ…凛馬が、帰っちゃうかもしれない話…」

けれど、ミケはすぐに顔を上げる。

「でも、凛馬が決めることにゃ。私は、凛馬の選択を応援するにゃ。家族だからにゃ」

「僕たちも一緒に行っていい?」

「…ああ、構わない」

六人で並んで廊下を歩く。ミケは、ぎゅっと凛馬の手を握った。

「にゃ…どんな結果でも、凛馬は私の弟にゃ。それは変わらないにゃ」

校長室には、白いたてがみを持つ老いたライオン族の校長が待っていた。

静寂が、校長室を満たした。紙の擦れる音すら、やけに大きく聞こえる。

「単刀直入に言おう。調査の結果、君を元の世界へ帰す方法が見つかった」

「にゃ…!」

ミケの顔から、血の気が引く。

「ただし条件がある。『門』は年に一度、特定の場所に現れる。次は三日後、郊外の古い神殿跡だ」

地図の一点を、校長が指差す。

「その門を通れば、君は元の世界へ帰れる。しかし―」

校長の低い声が、淡々と告げる。

「一度帰れば、二度とこちらへは来られない」

その言葉が、胸の奥に沈んだ。重く、逃げ場のない石のように。

全員の視線が、凛馬に集まる。答えを、待っている。

―帰れる。でも、戻った先にあるのは、本当に"居場所"なのか。

頭に浮かんだのは、褒められている弟の背中と、その後ろで誰にも見られていなかった自分だった。褒められることも、期待されることもなかった日々。いなくても、世界が回っていた現実。

そして、今。

名前を呼ばれる。待っていてもらえる。触れれば、体温が返ってくる。

―前の世界では、どれも当たり前じゃなかった。

「…」

凛馬は、拳をぎゅっと握りしめた。指先が、わずかに震えている。

「…すぐには、答えられません」

その声は小さかったが、確かだった。ミケの耳が、ぴくりと揺れる。

「三日…ください」

顔を上げ、校長を見る。

「帰れるって聞いて、正直…怖くなりました。でも、同時に…」

一度、言葉を探すように息を吸う。

「ここを失う想像も、同じくらい怖くて。こんな“なんでもない毎日”が、俺には初めで、楽しいんです。」

視線が、仲間たちへ向かう。ミケ、コハク、アオ、ミナ、ヒョウカ。

「だから、ちゃんと考えたいんです。逃げでも、勢いでもなく…自分で選びたい」

校長は、しばらく黙って凛馬を見つめていた。

その瞳は、試すようでもあり、見守るようでもあった。

「……いいだろう。迷う者にしか、“選択”はできない」

静かに、そう言う。

「門が開くのは三日後。その時までに決めなさい。それが君の“選択”だ」

ミケが、凛馬の手をぎゅっと握る。

「にゃ…凛馬」

震える声。それでも、笑おうとしている。

「どんな答えでも……私は、凛馬の味方にゃ」

その言葉が、胸に沁みた。

 

三日後。その日が、凛馬の人生を分ける。

廊下へ出た瞬間、いつもの学校の音が戻ってくる。けれど、世界はもう同じには見えなかった。

―選ぶ時間が、始まってしまった。




最後まで見てくださりありがとうございます!
今日は二話投稿しました!
あと最近“”の使い方知りました、、、
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