BEAST BLOOD   作:ruemtrnmdxxx

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英雄として注目され始めた凛馬。全校集会で、自分の過去と想いを語る。


22話 埃から誇りへ

凛馬が校長室のドアをノックをする。

「入りなさい」

扉を開けると、白いたてがみを持つライオン族の校長が、デスクに座っていた。

「凛馬くん、座りなさい。明日の全校集会について話がある」

校長が資料を広げる。そこには「五種族混血獣人・紅葉凛馬 全校紹介式」と書かれていた。

「明日の朝、全校生徒の前で、お前を正式に紹介する。スピーチを頼む」

校長が真剣な眼差しで凛馬を見つめる。

「お前は、この世界で初めての『五種族の力を持つ獣人』だ。多くの生徒が、お前に注目している。どう思う?」

凛馬は静かに口を開く。

「まだ沢山の人の視線には慣れません。でも、なんだか心が豊かになります。まだ獣人になって間もない僕ですが、精一杯やらせてください。」

校長の厳しい表情が、一瞬だけ柔らかくなった。

「……良い返事だ。お前の謙虚さと誠実さは、既に多くの教師たちから報告を受けている」

校長が立ち上がり、窓の外を見る。校庭では、部活動に励む生徒たちの姿が見えた。

「凛馬くん。お前が人間だった時、この世界に迷い込んだ時……どう思った?」

校長の問いかけに、凛馬の虹色の耳が少し垂れる。

「恐怖か?戸惑いか?それとも……孤独か?」

校長が振り返り、凛馬をじっと見つめる。

「だが、お前は今、笑顔で学校に通い、友達と楽しそうに過ごしている。それは何故だ?」

凛馬はすぐに答えられなかった。

「明日のスピーチで、その答えを全校生徒に伝えてほしい。お前の言葉が、きっと多くの生徒の心に響くはずだ」

ここで校長は一度だけ声を落とした。

「――覚えておきなさい。注目は、時に刃にもなる」

校長が再びデスクに座り、資料を閉じる。

「スピーチの内容は自由だ。お前の思いを、素直に話せばいい」

校長が優しく微笑む。その表情は、厳格な校長ではなく、一人の大人として凛馬を見守るものだった。

「さあ、友達が待っているだろう。戻りなさい」

凛馬が立ち上がり、一礼して校長室を出る。廊下を歩きながら、明日のスピーチについて考え始めた。

 

次の日。

全校生徒が体育館に集まり、ざわめきが響いている。ステージの上には校長と凛馬が立っていた。

「静粛に。今日は特別な紹介がある。皆も知っての通り、我が校に『五種族の力を持つ混血獣人』が誕生した」

体育館が一瞬で静まり返る。数百人の視線が、凛馬の虹色の耳と尻尾に注がれた。

「紅葉凛馬くん。前へ」

凛馬がマイクの前に立つ。

体育館の空気が重く静まり、凛馬は一度だけ目を閉じた。

深呼吸をして、ゆっくりと話し始めた。

「皆さん、おはようございます。紅葉凛馬です」

凛馬の声が体育館に響く。虹色の耳が緊張で少し震えている。

「僕は……元々人間でした。この世界に迷い込んだ時、何も分からなくて……とても怖かった」

体育館がさらに静まり返る。生徒たちが息を呑んで聞き入っている。

「人間の世界では……僕は一人でした。両親はいなくて、友達もいなくて……毎日が辛かった」

凛馬の声が少し震える。その時、客席から――

「凛馬……」

ミケが涙を浮かべて凛馬を見つめていた。アオ、コハク、ヒョウカ、ミナも真剣な表情で聞いている。

「でも……この世界に来て、全てが変わりました」

凛馬の虹色の尻尾が、力強く揺れる。

「ミケが……家族になってくれました。アオ、ミナ、コハク、ヒョウカが……友達になってくれました。そして、獣人になる儀式で、みんなが血を分けてくれて……僕は本当の意味で、この世界の一員になれました」

体育館のあちこちから、すすり泣く声が聞こえ始める。

「今、僕は毎日が楽しいです。学校に行くのが楽しみで、友達と笑い合えることが嬉しくて……こんなに幸せなことはありません」

「にゃあ……凛馬……!」

ミケが涙を拭う。アオも目を潤ませている。

「だから……僕は思います。種族が違っても、出身が違っても……心が繋がれば、本当の家族になれるって」

凛馬が全校生徒を見渡す。

「これから、獣人として、この学校で学び、成長していきます。至らないところもあると思いますが……どうか、よろしくお願いします!」

凛馬が深々とお辞儀をする。その瞬間――

体育館が割れんばかりの拍手と歓声に包まれた。

「にゃああ!凛馬ああああ!」

「凛馬くん!最高だよ!」

「素敵なスピーチだったわ……!」

「……よくやった」

「凛馬くん……感動しました……!」

拍手が鳴り止まない。校長が満足そうに頷き、凛馬の肩を叩いた。

「素晴らしいスピーチだった。お前は、この学校の誇りだ」

凛馬が客席に戻ると――

「にゃあ!凛馬!」

ミケが飛びつき、涙を拭いながらも胸が少し高鳴っている。

アオもすぐ後ろから抱きつき、視線が凛馬の虹色の耳や尻尾に吸い寄せられる。

「凛馬くん……僕、知らなかったよ……」

胸の奥がじんわりと熱くなる。

コハクとミナも手を握る。その手の温もりに、凛馬が心の距離を感じる。

「凛馬くん……私たち、これからもっと一緒に過ごすのよね……」

声に、微かな期待が混ざる。

ヒョウカも、珍しく笑顔を見せるが、その目は少しだけ複雑な光を帯びていた。

体育館が温かい空気に包まれる。凛馬は、本当の意味でこの世界に受け入れられた実感を得た。

孤独で、埃のように小さな存在だった自分が――

今、仲間に囲まれ、笑顔で迎えられ、誇りを持てる存在になった。

「俺には何も無いな」と、元の世界では思っていた。

でも、この世界では――「そんなことも無いな」

そう、自然に思えてしまった。

――それでも、まだ追いついていない気がしていた。

友情と家族の温もり、そして、少しずつ芽生える複雑な感情――

この誇りが、次の冒険へ、次の時間へと続いていく。




最後まで読んでいただきありがとうございます!
凛馬の「居場所」が、言葉として世界に届いた回でした…
さて、ここから怒涛の家巡り編突入です!
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