BEAST BLOOD   作:ruemtrnmdxxx

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仲間たちとの時間を重ねる中、凛馬の存在は学校の外にも広がり始めていた。
そしてついに研究機関から声がかかる。



24話 世界が動く

「ちょっと2人とも!俺の腕が取れたらどうすんだ?」

凛馬は笑いながら冗談を飛ばす。

「にゃはは!ごめんにゃ!でも凛馬が可愛いから仕方ないにゃ!」

「あ、ごめんね凛馬くん!でも……えへへ……」

アオは少しだけ力を緩めるが、まだ凛馬の腕を離さない。

「あら?凛馬くん、冗談言う余裕あるじゃない。じゃあ、私も混ぜてもらおうかしら?」

コハクがにやりと笑いながら、凛馬の虹色の尻尾を後ろから軽く掴んだ。

「ふふ、この尻尾、本当にふわふわで気持ちいいわね〜♫」

尻尾がぴくんと跳ねる。

「にゃ!?コハク、ずるいにゃ!」

「……お前ら、学校着く前に凛馬が潰れるぞ」

ヒョウカがため息をつく。

「みんな!凛馬くんが困ってますよ!少し離れてあげてください!」

ミナが注意するが、三人は聞く耳を持たない。

周囲の視線が集まる中、凛馬は五人に囲まれたまま学校へ到着した。

 

凛馬が席に着くと、担任が教室に入ってきた。

「はい、席につけー。今日も一日頑張ろう。あ、凛馬くん、この後また校長室に来るように」

「にゃ?また校長先生にゃ?」

「何かあったのかな?」

「ふふ、また表彰でもされるんじゃない?」

凛馬の頭の中では、昨夜のことが時折よぎった。

――アオの笑顔。温かい家庭。優しい性格。

無意識に虹色の耳が動く。

「にゃ?凛馬、どうしたにゃ?耳がぴくぴくしてるにゃ!?」

ミケが覗き込む。心臓が一拍だけ強く鳴る。

「……なんでもないよ」

 

凛馬は教室を出て校長室へ向かった。ノックをする。

「入りなさい」

扉を開けると、校長の隣に見慣れない獣人が立っていた。灰色の毛並みと鋭い目つきの狼族の男性だった。

「凛馬くん、紹介しよう。市教育委員会・獣人文化研究部部長、灰谷リョウ先生だ」

男が一歩前に出る。

「初めまして。君の噂はよう聞いとるで」

――関西弁?凛馬は一瞬、思考が止まった。人間の世界で聞いたことのある、独特の訛りだった。

(え……関西弁……!?思ってたのと違う!!!)

だが灰谷の鋭い視線は冗談の欠片もなく、完全に“本物の研究者”だった。視線には好奇心と、強い関心が混ざっている。

「君の存在な、市全体でかなり話題になっとるんや」

資料には、『五種族混血獣人の誕生とその意義』

と書かれていた。

「君は歴史を変える可能性を持っとる」

灰谷は一度言葉を区切る。

「君は“例外”やない。“始まり”や」

校長が資料を広げる。

「単刀直入に言おう。能力測定実験への協力、お願いしたい。」

ページには多数の測定項目。

「理論上、君は全種族の特性を併せ持っとるはずや」

灰谷の目は純粋な研究者のそれだった。

「週末に研究施設でやる。三時間ほどや。負担は極力かけへん」

「断ってくれても構わない。だが――将来、同じ存在が現れた時、大きな助けになる」

不安で尻尾が揺れる。灰谷は少し声を柔らかくした。

「不安か?せやったら友人たちの同伴も許可する。安心してええ。大人はな、子ども守るためにおるんや」

凛馬は匂いで感じ取った。獣人の感覚が、嘘の匂いを拾わなかった。

「分かりました!やらせてください!」

二人の表情が明るくなる。

「よし。ほな説明するで。実験は今週土曜、朝九時から市立獣人研究センターや。友人たちには正式に学校通して連絡入れとく」

校長が資料を手渡す。

「これが実験内容の概要だ。目を通しておきなさい。質問があればいつでも聞いてくれ」

資料には、

『走力測定』『筋力測定』『知能テスト』『感覚能力測定』『特殊能力テスト』

などの項目が並んでいた。

「無理はさせへん。体調最優先や。心配せんでええ」

灰谷が穏やかに言ったところで、チャイムが鳴る。

「ああ、もう休み時間か。教室に戻りなさい。友人たちが心配しているだろう」

凛馬は一礼して校長室を出た。

(……凄い関西弁だったな……)

頭の中で小さく呟きながら廊下を歩いていると

「にゃ!凛馬!」

ミケが待っていた。その後ろにアオ、コハク、ヒョウカ、ミナもいる。

「どうだった?」

「大事な話だったの?」

「……顔色、少し変わってるぞ」

「大丈夫ですか?」

五人に囲まれる。そして資料を見せる。

「にゃ!?能力測定実験!?」

「えっと……これって……」

「あら、面白そうじゃない」

「……本当に大丈夫なのか?」

「私たちも同伴できるんですね……!」

皆が資料を覗き込む中、凛馬はふと固まった。

(……あれ?)

紙に書かれた文字を目で追う。走力測定。筋力測定。感覚検査。――内容は理解できる。

なのに、

(……何言ってたっけ、あの人)

頭の中に浮かぶのは説明内容ではなく、

『君は始まりや』『負担はかけへん』

『安心してええ』

やけに流暢な関西弁だけだった。

(いや待て、内容よりイントネーションの印象強すぎるだろ……)

思い出そうとすればするほど、灰谷の声の抑揚だけが鮮明に蘇る。

「……凛馬?どうしたにゃ?」

ミケが顔を覗き込む。

「いや……なんか……説明ちゃんと聞いてたはずなんだけど……」

少しだけ困ったように笑う。

「イントネーションの印象強すぎて、内容ちょっと飛んだ」

一瞬の沈黙。

「え?」

誰もが同じ反応をした。

「ふふっ」

コハクが吹き出した。

「そこなの?普通逆じゃない?」

「にゃはは!あの人そんなクセ強だったにゃ!?」

「……確かに朝先生がクセが強い先生が来るぞと言っていたな」

ヒョウカが小さく頷く。

「でも大事な話ですよ!ちゃんと後でもう一度確認しましょう!」

ミナが資料を指差す。凛馬は苦笑しながら頷いた。

けれど胸の奥では、少しだけ安心していた。

――難しい話のはずなのに。

皆といると、怖さが少し薄れていく気がした。

 




最後まで読んでいただきありがとうございます!
ここから少しずつ外の世界へ広がっていきそうですね、、、
その前に次はミナの家に行きます。
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