BEAST BLOOD   作:ruemtrnmdxxx

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お泊まりウィークの時間を重ねる中で、少しずつ心が揺れ始めた凛馬。
昼休み、その変化に気づく者が現れる。



26話 昼休みの一波乱

昼休み。屋上。

「にゃ……凛馬、また今日もぼーっとしてるにゃ」

ミケが顔を覗き込む。

凛馬は弁当を半分ほど残したまま、空を見上げていた。胸の奥に溜まっている感情が、言葉にならない。

会いたい、とか。

そばにいたい、とか。

何かあったら守りたい、とか。

そんな気持ちが、いつの間にか当たり前のようにそこにあった。

でも――それが誰に向いているのか、自分でもはっきりしない。

アオの笑顔が浮かぶ。胸の奥が、少しだけ熱くなる。

続いてミナの真面目な横顔。隣にいるだけで、背筋が伸びるような安心感。

からかうように笑うコハクの表情。距離が近くて、心をかき回される感じ。

そして――ヒョウカ。無表情のまま隣に立って、「無理するな」とだけ言う声。静かなのに、不思議と一番深く残る。

……そこで、思考が止まった。

ミケのことを思い浮かべようとして――なぜか、顔だけがうまく浮かばない。

声も、仕草も、ぬくもりも分かるのに、像だけがぼやける。

まるで近すぎて、輪郭が見えないみたいに。

「……なんだよ、それ」

小さく自分にツッコミを入れる。

友情だけでは片付かない。でも、恋だと言い切るにはまだ怖い。

「凛馬くん……どうしたの? 最近、少し変だよ?」

アオが隣に座る。声が近い。それだけで、意識がそちらに引っ張られた。

コハクがにやりと笑う。

「あらあら?もしかして……気になる子でもできたのかしら?」

虹色の耳がぴくっと動く。昨夜のミナの笑顔がよぎる。

――でも同時に、今ここにいるアオの声も、胸の奥に残る。

「にゃ!?き、気になる子!?誰にゃ!?」

「え……?そ、そんな……」

アオの顔色が変わる。ミナも真剣な視線を向けた。

「それは……本当ですか?」

「……決めつけるな。凛馬はまだ何も言ってない」

ヒョウカが冷静に止めるが、視線は集まったままだった。

「にゃ……凛馬……教えてにゃ……誰なのにゃ……?」

ミケの声が少し震えている。無意識に、袖を強く掴んでいた。

アオも不安そうに反対側の袖に触れる。

「凛馬くん……僕たち、仲間だよね……?」

2人の言葉には、隠しきれない焦りが見えた。逃げ場がないほど近い距離で囲まれてしまう。胸の鼓動が速くなる。

――傷つけたくない。誰も、変な顔をさせたくない。

「……なんでもないよ。最近いろいろあっただろ? その余韻がまだ抜けてないだけ」

凛馬はできるだけ軽く言った。

「にゃあ……そうなのかにゃ…」

ミケはほっと息を吐く。だが手は、まだ離れていなかった。

アオも笑う。

「そっか……良かった……」

安心した笑顔。でもどこか、少しだけ弱い。その表情が、妙に気になった。

「ふうん? でも耳、さっき反応してたわよ?」

コハクが面白そうに覗き込む。

「……言いたくないなら、無理に聞かない」

ヒョウカが言う。

視線だけが、少し長く残った。

「無理はしないでくださいね。話したくなったら、いつでも聞きますから」

ミナが優しく微笑む。それは支えようとする笑顔だった。

チャイムが鳴る。

「にゃ……午後の授業にゃ。戻るにゃ」

屋上を後にする。胸の奥で、言葉にならない感情が渦を巻いていた。

――言えない。変に思われたくない。

誰かを選ぶみたいな形に、したくなかった。まだこの気持ちに名前をつけたくなかった。

虹色の耳が、風に揺れた。

 




最後まで読んでいただきありがとうございます!
まだ名前のない感情が、少しずつ形になり始めています…次はコハクの家ですね。どうなりますことやら…
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