誰も傷つけたくない想いが、彼自身を追い詰めていく。
凛馬は誰もいない森の奥まで走り続けた。虹色の尻尾が激しく揺れ、虹色の耳が風を切る。
どれだけ走ったのか、自分でも分からなかった。
大きな木の根元に辿り着くと、凛馬はその場に崩れ落ちた。
「くそっ…くそっ…!!」
凛馬の心の中で、様々な感情が渦巻いていた。
会いたいなんて、思っちゃいけない。
そばに居たいなんて、願っちゃいけない。
守りたいなんて――そんな資格、俺にはない。
誰か一人を想うってことは、誰かを切り捨てるってことだ。
アオも、ミナも、コハクも、ヒョウカも、ミケも。みんな、同じくらい大切なのに。
それなのに、胸が勝手に名前を呼ぼうとする。
「やめろ……」
これは恋じゃない。そうであってほしい。ただの勘違いで、一時の感情で、なんでもないものなんだ――
そう思わなきゃ、ここにいられなくなる。
アオへの恋心。
ミケの告白。
ヒョウカとの秘密。
コハクの笑顔。
ミナの優しさ。
誰も傷つけたくない。誰も失いたくない。
だから――誰も選べない。
「……無理だ。俺には……無理なんだ……!」
凛馬が叫ぶ。その声は森に響き渡った。
ミケが震える手でスマホを取り出す。
『凛馬が…走って行っちゃった…私、告白しちゃった…ごめん…』
送信すると、既読が一気についた。
「…ミケから連絡が来た。凛馬が…」
「凛馬…どこ行っちゃったの…!?」
「え…ミケが告白…?ちょっと、どういうこと…!?」
「皆さん、落ち着いてください。まずは凛馬君を探しましょう」
「…くそ。私が…もっと早く何とかしてやれば…」
ヒョウカが唇を噛む。その表情には、後悔と決意が混ざっていた。
「僕…僕、凛馬を見つける..!絶対に…!!」
アオが涙を浮かべながら走り出す。その青緑色の尻尾が激しく揺れていた。
「…凛馬。あんた、一人で抱え込みすぎなのよ…」
コハクが唇を噛みしめる。
「凛馬君…どうか無事でいてください..」
ミナが祈るように呟く。
凛馬は木の根元で膝を抱えていた。虹色の耳が垂れ、虹色の尻尾が力なく地面に横たわっていた。
「…俺は…どうすればいいんだ…」
その時、凛馬の全方位索敵能力が、複数の気配を感知した。5人が、こちらに向かってきている。
「…見つかる…」
凛馬は再び走り出す。豹族の倍の速度で、木々の間を縫うように駆け抜けていく。全方位索敵能力が、5人の位置を正確に捉えていた。
「…アオが一番速い。次にヒョウカとコハク…ミナとミケは少し遅れてる…」
凛馬の頭が冷静に状況を分析する。
――こんな時だけ頭が回る自分が嫌だった。
だが、心は混乱していた。
「恥ずかしいだろ…こんな姿…見られたくない…!!」
虹色の尻尾が激しく揺れる。凛馬は更に森の奥へと走った。
「凛馬…!どこ…!?凛馬…!!」
アオが必死に叫びながら走る。その青緑色の尻尾が激しく揺れ、熊族の力強さで枝を押しのけていく。
「…くそ。速すぎる。凛馬の奴、本気で逃げてやがる…」
ヒョウカが豹族の俊敏性を活かして木々を駆け抜ける。
「ちょっと待ってよ凛馬…!話を聞かせてよ…!!」
コハクが進路を予測する。
「凛馬君…!お願い…止まって…!!」
ミナが跳躍して追う。
「凛馬…ごめん…私のせいで…!!」
ミケが涙を流しながら走る。
森の最深部。凛馬は古い洞窟の前に辿り着いた。
息が切れ、足が震えている。視界の端が暗くなっていく。呼吸が焼けるみたいに痛い。
「…ここまで来れば…さすがに…」
だが、全方位索敵能力が告げる。5人は、確実にこちらに近づいている。
「くそっ…もう…限界だ…」
凛馬の膝が崩れる。虹色の耳が力なく垂れ、虹色の尻尾が地面に倒れ込んだ。
「…もう…逃げられない…」
その時――
「凛馬…!!見つけた…!!」
アオが洞窟の前に飛び出してきた。その顔は涙で濡れ、息が荒い。
「凛馬…!!もう…逃げないで…!!!」
最後まで読んでくださりありがとうございます!
次回、皆が凛馬に追いついてしまいました。そこで凛馬が取った行動は…?