大切だからこそ傷ついてしまう関係の中で、六人の絆は大きな転機を迎える。
「…凛馬。お前、限界だろ。もう逃げるな」
ヒョウカが静かに凛馬に語りかける。
「凛馬…話そう?ね?」
コハクが優しく声をかける。その金色の尻尾が心配そうに揺れていた。
「凛馬君..お願いです。話を聞かせてください…」
ミナが涙目で凛馬を見つめる。
「凛馬…ごめんね…私、余計なこと言って…」
凛馬の感情が最高潮に達している。足が、地面を踏んでいる感覚がしない。呼吸が、どこかで途切れている気がした。
胸の奥が焼けるみたいに痛かった。頭の中で鼓動だけが暴れていた。
「凛馬…!!」
その声だけは、ハッキリと聞き取れた。
「……ごめん」
それが、凛馬が最後に口にした言葉だった。視界の端に、青緑色の尻尾が揺れるのが見えた気がする。
次の瞬間、膝から力が抜けた。
――もう、走らなくていい。もう、選ばなくていい。
もう、選べないなら、終わればいいのに。
そう思ったところで、意識が途切れた。
「え…凛馬…?」
凛馬の体が、ゆっくりと前に倒れていく。
「凛馬ーーーっ!!」
ミケが叫び、凛馬の体を受け止める。だが、凛馬は既に意識を失っていた。
「…くそっ!凛馬!!」
ヒョウカが駆け寄り、凛馬の脈を確認する。
「…生きてる。だが、脳に負担がかかってる。血管がやられてるかもしれない…」
声は冷静だったが、指先が震えていた。
「凛馬…!凛馬…!!起きて…!!!」
アオが凛馬の頬を叩く。だが、凛馬は反応しない。
「救急車…!早く…!!」
コハクが震える手でスマホを取り出す。
「私が呼びます!皆さん、凛馬君を動かさないでください!」
ミナが冷静に救急車を呼ぶ。
「凛馬…ごめんね…ごめんね…私のせいで…!!」
ミケが凛馬を抱きしめて泣き崩れる。その涙が凛馬の頬に落ちた。
市立中央病院。救急治療室。凛馬は緊急搬送され、脳のMRI検査を受けた。運ばれていくストレッチャーを、5人はただ追うことしかできなかった。
5人は待合室で、不安そうに結果を待っていた。
「…くそ。俺が…もっと早く止めてやれば…」
ヒョウカが壁を殴る。その拳から血が滲んだ。
「僕が…僕が凛馬を追い詰めた…追いかけなきゃ良かった…僕のせいだ…!!」
アオが膝を抱えて泣く。
「違う…私たち皆が…凛馬に重荷を背負わせたのよ…」
コハクが唇を噛む。
「凛馬君…どうか無事でいてください…」
ミナが祈るように呟く。
「凛馬…起きて…お願い…!!」
ミケが顔を手で覆って泣いていた。
その時、治療室のドアが開き、白衣を着た医師が出てきた。
「…凛馬君のご家族の方ですか?」
「はい…!私、凛馬の家族です..!凛馬は…!?」
ミケが医師に駆け寄る。
「…脳の血管に小さな損傷が見られました。過度のストレスによるものです。幸い、大事には至っていませんが…」
医師が5人を見回す。
「凛馬君は、かなりの精神的負担を抱えていたようです。このままでは…再発の恐れがあります」
「…それは…」
「凛馬君に、今必要なのは…安心と休息です。皆さん、凛馬君を支えてあげてください。では」
医師がそう言って、治療室に戻っていった。
「凛馬…私…どうすれば…」
ベッドの向こうで眠る凛馬の姿を、5人はただ、見つめることしかできなかった。
誰も声を出せなかった。誰も正解を知らなかった。
そこにいたのは――
誰も選ばなかった少年と、選ばれなかった想いだけだった。
最後まで読んでくださりありがとうございます!
6人の関係に大きな亀裂が入ってしまいました…次回、凛馬が目を覚まして取った行動とは…?