凛馬は退院手続きを終え、病院の玄関前に立っていた。1週間ぶりの外の空気が、少し冷たく感じられた。
虹色の耳が朝の風に揺れる。制服に着替え、鞄を肩にかけた凛馬の表情には、期待と不安が混ざっていた。
「……久しぶりの学校か。皆、どんな顔で迎えてくれるんだろう……」
その時――
「凛馬ーーーーっ!!」
病院の門の前に、5人の少女たちが待っていた。
「退院おめでとうにゃ!待ってたんだよ!」
ミケが満面の笑みで手を振る。だが、その笑顔はどこかぎこちなかった。
「凛馬……!よかった……本当に元気になって……!」
アオが駆け寄ろうとして――止まる。
その一瞬だけ、凛馬の胸がわずかにざわついた。
「……退院か。よかったな」
ヒョウカが腕を組んで、いつもの無表情で立っている。だが、その目には安堵が滲んでいた。
「やっと戻ってきたね〜。寂しかったんだから〜」
コハクが笑顔を作る。だが、その金色の尻尾は落ち着きなく揺れていた。
「凛馬君、お帰りなさい。体調は大丈夫ですか?」
ミナが優しく微笑む。だが、その表情には心配が隠せなかった。
5人は凛馬との距離感に戸惑っているのが明らかだった。
「あ、あのね!一緒に学校行こう!ね?」
ミケが明るく提案する。だが、以前のように抱きつくことはしなかった。
「うん……!一緒に行こう……凛馬……」
アオも頷く。だが、以前のように凛馬の袖を掴むことはしなかった。
6人は並んで、学校へと歩き出した。
だが、その距離感は以前なら肩が触れる距離なのに、今日は少しだけ間が空いていた。
通学路。6人は並んで歩いているが、会話が続かない。以前のような賑やかさはなく、どこか気まずい空気が流れていた。
「あ、あのさ〜。凛馬、入院中どうだった〜?退屈だった〜?」
コハクが無理に話題を振る。
「あ、うん……まあ、本とか読んでたよ……」
「そうですか。勉強の遅れは大丈夫ですか?必要ならノート見せますよ」
ミナが真面目に提案する。
「ありがとう、ミナ……」
「……お前ら、また無理してるぞ」
ヒョウカがため息をつく。
(まぁ、俺もだけどな)
「そ、そんなことないよ……?私たち、普通に……」
ミケの声が小さくなる。沈黙が流れる。
「……ごめん、凛馬。僕たち……まだ上手く普通に戻れなくて……」
分かってた。こうなることぐらい。それでも――
「……そうだよな。でも少しずつでいい。大丈夫、俺たちなら。」
――本当は、前みたいに笑いたかった。でも、今はこれが精一杯だ。
「……うん。少しずつ……だね」
ミケの赤い猫耳が小さく揺れる。凛馬の言葉に、少しだけ表情が柔らかくなった。
「そうだね……焦らなくていいんだよね……」
アオが安堵したように息を吐く。その青緑色の尻尾が、ゆっくりと揺れ始めた。
「……そうだな。お前の言う通りだ」
ヒョウカが小さく頷く。その表情には、少しだけ笑みが浮かんでいた。
「ふふ、凛馬らしいね。前向きで」
コハクが優しく微笑む。その金色の瞳に、温かさが戻ってきた。
「そうですね。私たちなら、きっと大丈夫です」
ミナが眼鏡を直しながら、穏やかに笑う。
6人の間に流れる空気が、少しだけ軽くなった。
6人が学校に到着すると、クラスメイトたちが凛馬を出迎えた。
「おお、凛馬!退院したんだな!よかったよかった!」
「心配してたんだよ〜。もう大丈夫なの?」
凛馬が頷くと、クラスメイトたちが安堵の表情を浮かべる。
「ほら、凛馬!みんな待ってたんだよ!」
ミケが嬉しそうに凛馬の肩を叩く。その仕草は、以前のように自然だった。
「よかった……みんな、凛馬のこと心配してたんだね……」
アオがほっとした表情で周りを見回す。
「まあ、凛馬は人気者だからね〜」
コハクがからかうように笑う。
「……お前、調子に乗るなよ」
ヒョウカが毒舌を放つ。だが、その表情は穏やかだった。
「さあ、教室に行きましょう。授業が始まりますよ」
ミナが皆を促す。6人は教室へと向かった。その足取りは、少しずつ以前のリズムを取り戻しつつあった。
最後まで読んでくださりありがとうございます!
日常が少しずつ戻りつつあります。しかし、心だけはまだ同じ場所に戻れずにいるようです。