凛馬が席に座ると、5人がそれぞれの席に着く。以前のように凛馬の周りに集まることはなかったが、それでも視線は時折凛馬に向けられていた。
「……凛馬、ちゃんと授業聞くんだよ?」
ミケが小声で囁く。その赤い瞳には、心配と優しさが混ざっていた。
「ああ、大丈夫」
「もし分からないことあったら……僕に聞いてね……」
アオが恥ずかしそうに俯く。
「私も教えてあげるよ〜。まあ、凛馬なら大丈夫だと思うけど〜」
コハクがウインクする。
「……無理はするな」
ヒョウカが短く言う。
「体調が悪くなったら、すぐに保健室に行くんですよ?」
ミナが優しく気遣う。
そんな皆を見て、凛馬の心は温かくなっていった。皆が自分に気を遣っているのが分かった。
言葉を選び、距離を測り、無理に笑っているのも。
――このままじゃ、駄目だ。
そう思った瞬間、気づけば声が出ていた。
「ありがとう、皆!」
少しだけ、声が大きすぎた気がした。その声に、教室の空気がふっと軽くなる。
けれど――
ミケは一瞬だけ笑顔を作るのが遅れた。
アオは嬉しそうに笑いながらも、どこか戸惑ったように視線を揺らした。
コハクは明るく笑いながら、そっと息を吐いた。ヒョウカは何も言わず視線を逸らした。
ミナは小さく微笑みながら、指先をぎゅっと握りしめていた。
誰もが前に進もうとしていた。
――少しずつでいいと、言い聞かせながら。
「もう!凛馬ったら急に大きな声出すからびっくりしたにゃ!」
「え、えへへ……凛馬、元気になったね……」
「あらら〜、凛馬が元気だと私たちも元気になるね〜」
「……うるさい。授業まだ終わってないぞ」
「ふふ、凛馬君らしいですね」
ミナが優しく微笑む。6人の日常は、少しずつ、元の形に戻りつつあった。
――けれど、まだ同じではなかった。
昼休み。6人は屋上で昼食を取っていた。以前のように、自然と集まっていた。
「はい、凛馬!今日のお弁当、私が作ったんだよ!食べてみて!」
ミケが嬉しそうに弁当箱を開ける。中には色とりどりのおかずが詰まっていた。
「あ、僕も!僕も作ってきたよ!凛馬、どっちから食べる?」
アオも弁当箱を差し出す。その表情は期待に満ちていた。
「あら〜?二人とも張り切ってるね〜。じゃあ私も〜」
コハクがニヤニヤしながら自分の弁当を取り出す。
「……お前ら、取り合いはやめろ」
ヒョウカがため息をつく。だが、その表情はどこか楽しそうだった。
「皆さん、落ち着いてください。凛馬君が困っていますよ」
ミナが苦笑しながら皆を制止する。その空気は――温かく、自然だった。笑い声の合間に、ふとした沈黙が混じることもあった。けれど誰も、それを口にはしなかった。
「友情」という絆が、6人を再び結びつけていた。
それでもアオが笑うたび、
なぜか少しだけ目を逸らしてしまう自分に、凛馬は気づかなかった。
5人の心の奥には、まだ凛馬への「想い」が残っている。だが、今は――この瞬間を、大切にしようと思っていた。
「……ねえ、凛馬。やっぱり、こうやってみんなでいるのが一番だにゃ」
ミケが穏やかに微笑む。
「うん……僕も……こうやってみんなで笑ってる方が……好きだよ……」
アオが幸せそうに笑う。
「そうだね〜。この時間、大切にしたいね〜」
コハクが空を見上げる。
「……まあ、悪くないな」
ヒョウカが小さく笑う。
「ええ。私たちは、ずっと友達ですから」
ミナが優しく微笑む。凛馬の心の中にも、温かいものが広がっていた。
「少しずつ、戻っていける」
そう確信できる、穏やかな昼休みだ。
三人のおかずが次々と差し出され、凛馬は思わず笑った。
「……お前ら、凛馬が食べられないだろ」
ヒョウカが呆れたように自分の弁当を食べる。
「皆さん、順番に差し出してください。凛馬君が困っていますよ」
ミナが苦笑しながら注意する。だが、その表情も楽しそうだった。
「あはは……ありがとう、みんな……」
凛馬が笑いながら、順番におかずを受け取る。その表情には、心からの幸せが滲んでいた。
「えへへ……凛馬が喜んでくれて嬉しいにゃ……」
ミケが照れたように頬を赤らめる。
「僕も……凛馬が元気だと……僕も嬉しいよ……」
アオがもじもじしながら笑う。屋上には、笑い声と温かい空気が満ちていた。
こうやって、少しずつ――6人の関係は、新しい形で再構築されていく。
1ヶ月後。その時何が起こるのか。それは、まだ誰にも分からない。
だが、今は――この瞬間を、楽しもう。
最後まで読んでくださりありがとうございます!
戻れたはずの関係。それでも、心だけは前に進み始めています。