人間としての誇りと、新しい生活への適応――凛馬の異世界での夜が、静かに幕を開ける。
凛馬も服を脱ぎ始めるが、やはりミケは女の子だ。凛馬は目をずっと逸らしている。
「にゃ?なんで目をそらすにゃ?」
ミケが不思議そうに首を傾げながら、凛馬の様子を観察する。猫耳がピクピクと動き、しっぽが揺れている。
「もしかして・・・恥ずかしいにゃ?あはは、可愛いにゃ〜でも、ペットなんだから飼い主の体くらい見ても平気にゃ!」
ミケが凛馬の顔を両手で掴み、自分の方を向かせようとする。至近距離でミケの赤い瞳と視線が合う。
「それより、凛馬の体もチェックしないとにゃ。怪我とか病気してないか心配にゃ」
ミケが凛馬の腕や背中を触りながら観察し始める。獣人特有の鋭い感覚で、細かい部分まで確認しているようだ。
「ん〜、特に問題なさそうにゃ。じゃあお風呂入るにゃ!」
ミケが浴室のドアを開け、湯気が一気に広がる。湯船には適温のお湯が張られていた。
「さ、入るにゃ!背中洗ってあげるから、先に座って待ってるにゃ」
凛馬が突然話を切り出す。
「ミケちゃん?でいいんだよな。元の世界への帰り方って知ってる?」
ミケが嬉しそうに耳をピンと立てる。
「ミケでいいにゃ!ミケちゃんって呼ばれるのも嬉しいにゃ」
しかし、次の質問に答えようとした時、表情が少し曇る。
「元の世界・・・か。正直に言うにゃ、私たち獣人も人間の世界のことはほとんど知らないにゃ。たまに凛馬みたいに迷い込んでくる人間がいるって伝説はあるけど・・・帰り方までは分からないにゃ」
ミケが申し訳なさそうに耳を垂らす。
「でも!学校の図書館とか、博物館に行けば何か情報があるかもしれないにゃ!明日、みんなで調べてみるにゃ!」
ミケが前向きに提案する。そして、シャンプ一を手に取りながら凛馬の背中に手を伸ばす。
「それまでは、私がちゃんと面倒見るにゃ。だから・・・安心してにゃ?」
ミケの手が優しく凛馬の背中を洗い始める。器用な指先が丁寧に泡立てながら動く。
「あ、背中…けっこう広いんだね…にゃふふ」
「ごめん。急に難しい質問してしまったみたいで。でも俺が元の世界に帰るのを手伝ってくれるのか?」
「当然にゃ、凛馬が元の世界に帰りたいなら、私も全力で手伝うにゃ!」
ミケが凛馬の肩に手を置き、優しく微笑む。しかし、その笑顔は少しぎこちなく見えた。
「でも・・・ちょっとだけ複雑にゃ。凛馬が帰っちゃったら寂しいけど、それが凛馬の幸せなら仕方ないにゃ」
ミケがシャンプーで凛馬の髪を洗い始める。器用な指先が頭皮を優しくマッサージする。
「だから!帰る方法が見つかるまでは、私がちゃんと凛馬の世話するにゃ。美味しいご飯作って、お風呂も入れて、散歩にも連れて行くにゃ」
「それに・・・もしかしたら、凛馬がこの世界を気に入ってくれるかもしれないにゃ?そしたら、ずっと一緒にいられるにゃ〜、」
ミケが少し照れながら、凛馬の髪を丁寧にすすぐ。温かいお湯が流れ落ち、湯気が二人を包む。
「ありがとう…ミケ。優しい人に拾われて良かったよ。」
「にゃあああ!そんなこと言われたら・・・嬉しすぎて泣いちゃうにゃ!」
ミケの目がうるうると潤み、耳がぺたんと垂れる。獣人の感性は非常に豊かなようだ。
「凛馬・・・ありがとうにゃ。私も、凛馬に出会えて良かったにゃ。こんなに可愛いペットが手に入って、ミケは世界一幸せな飼い主にゃ!」
ミケがしばらく抱きしめた後、顔を上げてニコニコと笑う。その後2人はぎこちないながらも風呂を済ませた。
お風呂を上がった後、ミケの母親が用意してくれた部屋着に着替える。ミケの部屋は猫のぬいぐるみやポスターで飾られ、可愛らしい雰囲気だった。
「今日は私のベッドで一緒に寝るにゃ!ペットは飼い主と一緒に寝るものにゃ。」
「あ、あぁ。分かった…」
凛馬はもうこの世界に慣れるしかないという一心で、ミケの言うことを聞くしかなった。
ミケがベッドに潜り込み、凛馬にも隣に来るよう手招きする。部屋の明かりは少し落とされ、月明かりが窓から差し込んでいる。
「じゃあおやすみにゃ〜。あ、そうだ!明日は朝早く起きて、首輪買いに行くにゃ。それから学校に連れて行くにゃ。」
ミケが凛馬の腕を掴み、自分の方に引き寄せる。
「ペットは飼い主の近くで寝るものにゃ。逃げちゃダメにゃ?」
ミケが凛馬に抱きつきながら、耳を凛馬の胸に当てる。心臓の音を確認するように、しっぽがゆっくりと揺れる。
「凛馬の心臓、ドキドキしてるにゃ・・・.にゃふふ」
ミケが小さく笑った。やがてミケの呼吸が穏やかになり、小さな寝息が聞こえ始める。こうして凛馬の異世界での初日が終わろうとしていた。
最後まで見てくださりありがとうございます!
次回、凛馬の学校生活が始まります、、、!
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