BEAST BLOOD   作:ruemtrnmdxxx

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仲間たちに背中を押され、凛馬はついに自分の本心を認める。アオへの想いを自覚し、彼は一歩前へ進む決意を固める。


44話 君を選んだ日

凛馬はアオを屋上に呼び出した。夕暮れの光が二人を照らしていた。

「凛馬……考えてくれた……?」

アオが緊張した様子で尋ねる。その青緑色の尻尾が小刻みに揺れていた。

凛馬は深呼吸をして、アオの目を真っ直ぐ見つめた。

――もう逃げない。迷わない。

「アオ……俺、ちゃんと考えた。そして……気づいたんだ」

「……!」

アオの琥珀色の瞳が大きく見開かれる。

「俺、アオのことが好きだ」

「……え……?」

アオが呆然とする。その頬が一気に赤く染まった。

「……最初は分からなかった」

凛馬はゆっくり言葉を探した。

「ただ、一緒にいるのが当たり前で……気づかなかったんだ」

夕焼けの光の中、少しだけ目を細める。

「アオが隣にいると、変に頑張らなくてよくてさ。何もしてなくても、安心できた」

小さく息を吐く。

「笑ってると嬉しくて……落ち込んでると、気づいたら目で追ってて。泣きそうな顔を見ると、理由も分からないのに……守らなきゃって思ってた」

そこで一度、言葉が止まる。

「ずっと、“大切な友達だから”って思ってた。でも……違ったんだ」

凛馬はまっすぐアオを見る。

「アオが誰かと楽しそうにしてるの見た時、少しだけ胸が痛くてさ」

静かに笑う。

「その時やっと分かった。俺、もう友達として見てなかったんだって」

少し照れたように視線を逸らし、そして戻す。

「それが……恋だって、やっと気づいた」

「凛馬……本当……?」

アオの目に涙が浮かぶ。

「……俺は、君といる時の俺が好きだ」

凛馬は初めて、心の底からの本音を話した。

「だから……俺と付き合ってくれ」

その声色は震えていた。だが真っ直ぐだった。

「……! 凛馬……凛馬……!」

アオの涙が溢れ出す。だが、それは悲しみではなく、喜びの涙だった。

「うん……! うん……!僕……凛馬と付き合いたい……!ずっと……ずっと……好きだったから……!」

アオが泣きながら凛馬に抱きつく。その青緑色の尻尾が嬉しそうにぶんぶんと揺れた。

「凛馬……好き……大好き……!ありがとう……!」

アオの温かい体温が、凛馬に伝わってくる。凛馬はアオの背中を優しく撫でた。

「俺も……アオのこと、守るから」

「うん……! 僕も……凛馬を……守るよ……!」

二人は夕暮れの屋上で静かに抱き合っていた。

 

屋上を出たあと、二人は並んで階段を降りていた。さっきまで聞こえていた心臓の音が、まだ胸の奥に残っている。

誰もいない廊下に、足音だけが静かに響いた。

手は――自然と繋がれたままだった。

どちらから握ったのか、もう分からない。ただ、離す理由が見つからなかった。

校舎を出ると、夕焼けはゆっくりと夜へ変わり始めていた。

オレンジ色の空の下、帰り道を二人で歩き出す。

「……なんか、不思議だね」

アオが小さく呟いた。

「何が?」

「昨日までと同じ道なのに……全然違って見える……」

照れたように笑うアオの尻尾が、落ち着かない様子で揺れている。

凛馬も思わず笑った。

「……俺も、同じこと思ってた」

少し沈黙が落ちた。

けれど、それは気まずさじゃなかった。言葉がなくても、隣にいるだけで満たされる静けさだった。

「……恋人なんだね……僕たち」

アオが確認するように呟く。

「……うん」

短く答えると、アオが嬉しそうに笑った。指先が、少し強く握り返される。

「……アオ」

「ん?」

「さっきの……夢じゃないよね?」

凛馬は立ち止まり、アオの方を見る。夕焼けの残り光が、琥珀色の瞳を優しく照らしていた。

「……夢じゃないよ」

凛馬は少しだけ考えるようにアオを見つめた。

「え……?」

次の瞬間――

ぐい、とアオの頬を軽く引っ張った。

「ふにゃっ!?」

「ほら、痛いだろ」

「い、いたいよ凛馬……! もう……!」

アオが慌てて頬を押さえる。その顔は真っ赤だった。

凛馬は思わず笑った。

「夢じゃないって証明」

「……もう……」

アオは恥ずかしそうに視線を逸らしながら、小さく笑う。

「……ほんとに、現実なんだね……」

アオはそう呟きながら、小さく笑った。その笑顔は、今まで凛馬が見てきたどんな表情よりも柔らかくて――

心の底から幸せそうだった。

それを見た瞬間、凛馬の胸の奥が、静かに温かく満たされていく。

 

二人はまた歩き出した。街灯が一つ、また一つと灯り始める。

「明日さ。一緒に登校しよう」

凛馬は照れくさそうに言った。

「……! 本当……?」

「うん」

アオの尻尾が、嬉しそうに大きく揺れた。

「……えへへ……楽しみ……」

その笑顔を見た瞬間、凛馬は思った。

――ああ。この顔を守りたい。そう思えることが、もう答えだったのだと。

分かれ道に差しかかる。足が、少しだけ止まる。

「……じゃあ、また明日」

「うん……また明日」

アオは少し迷ってから、小さな声で言った。

「……大好き」

今度は逃げずに、まっすぐと。

凛馬は少し笑って答える。

「俺もだよ」

アオは何度も振り返りながら帰っていった。その背中は、夕暮れよりも明るく見えた。

 

一人になった帰り道。凛馬は空を見上げる。

胸の奥が、静かに温かかった。もう迷いはなかった。

選択の先にあったのは、失う未来ではなく――

新しく始まる日常だった。

 




最後まで読んでくださりありがとうございます!
次回、変わったのは、2人の関係だけではないようです。
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