凛馬とアオの関係は仲間たちにも祝福され、六人の絆は新しい形へと変わっていく。
変わったのは関係だけ。けれどその空気は、確かに少しだけ優しくなっていた。
昼休み。
学食はいつもより少しだけ賑やかだった。窓から差し込む光がテーブルを明るく照らし、昼のざわめきが心地よく広がっている。
「皆、昼ごはんさ、久しぶりに学食行きたいな……」
アオが少し遠慮がちに言う。
「お、いいね〜!じゃあ学食行こうよ!」
コハクが即座に立ち上がる。金色の尻尾が楽しそうに揺れた。
「賛成にゃ!お腹空いたし、みんなで食べたいにゃ!」
ミケも元気よく手を挙げる。
「……まあ、悪くない」
ヒョウカが小さく頷く。
「ふふ、それでは皆さんでご一緒しましょう」
ミナが穏やかに微笑んだ。
「じゃあ……行こう……!」
アオが嬉しそうに凛馬の袖を軽く引っ張る。六人は並んで学食へ向かった。
学食でそれぞれ料理を選び、テーブルを囲む。
「凛馬は何食べるの〜?」
「私はサンドイッチにゃ!」
「僕は……おにぎりと味噌汁……」
「……シンプルだな」
「健康的でいいですね」
笑い声が自然に重なる。
その時、凛馬がふとアオの味噌汁を見た。
「それ、美味そうだな」
何気なく言いながら、自然な動きで椀を手に取り、一口飲んだ。
「……ん、うま」
一瞬空気が静まり返った。そして、凛馬の思考が遅れて追いつく。
――これって……
一方でアオの頭の中は一瞬で真っ白になった。
――間接……キス!?!?
二人の動きが同時に止まる。ゆっくり顔を見合わせた。
「…………」
「…………」
次の瞬間――
「「……あっ」」
声が重なった。アオの顔が一気に真っ赤になり、凛馬も慌てて視線を逸らす。
「り、凛馬……それ……僕の……!」
「いや、違っ……いや違くないけど!」
完全に動揺する凛馬。
「あははは!今気づいたの!?遅すぎでしょそれ!」
コハクが机を叩いて笑う。
「間接キスにゃ〜!!昼から甘すぎにゃ!!」
ミケが尻尾を揺らして笑う。
「……お前ら、周り見ろ。ここ学食だぞ」
ヒョウカが呆れながらも口元を緩めた。
「ふふ……とても仲がよろしいですね」
ミナが静かに微笑む。
「も、もう……凛馬……!」
アオがあまりの恥ずかしさに顔を隠す。それでも尻尾は嬉しそうに揺れていた。
凛馬は頭をかきながら、小さく笑う。
「あぁ、いや、……なんかさ」
少し照れながら続ける。
「こういうの、自然にやっちゃうくらい一緒にいたいなって。」
アオがそっと顔を上げる。
「……うん」
「前なら……こんな普通の昼、想像できなかった気がして」
アオがゆっくり笑った。
「えへ……僕も……凛馬が嬉しそうだと嬉しい……」
その言葉に、凛馬も自然に笑った。
「うわ〜、完全にイチャイチャモードじゃん。昼休みこれなら放課後どうなるの〜?」
コハクがにやにやする。
「でも凛馬がこんな顔できるようになったの、いいことにゃ」
ミケが満足そうに頷く。
「……まあ、悪くないか」
ヒョウカが短く言う。
「凛馬君、アオさんを大切にしてくださいね」
ミナが静かに続けた。
「……うん」
凛馬は素直に頷いた。前なら、照れて誤魔化していた言葉だった。今は違った。
アオが小さく手を差し出す。
「……凛馬……おにぎりも……一口、食べる?」
「いいの?」
「う、うん……!」
また笑いが起きる。
「あ〜あ!もう完全にカップルにゃ!」
「青春だねぇ〜!」
賑やかな声が学食に溶けていく。
「僕……凛馬と出会えて……本当に幸せだよ……」
アオがそっと手を握る。
「私もにゃ。今はもう家族にゃ!」
ミケが肩を寄せる。
「これからもずっと一緒だからね!」
コハクが笑う。
「……親友として、支える」
ヒョウカが静かに言う。
「私たちは皆の味方です」
ミナが微笑んだ。
朝でも特別な日でもない、ただの昼休み。
けれど――それは確かに、守りたかった日常だった。
窓から差し込む光が六人を包む。
恋になった想いも。届かなかった想いも。全部を抱えたまま。
六人の物語は、ここで終わりではない。
――ここから、始まっていく。
第二章最後まで読んでくださりありがとうございました!
この幸せムードは、長くは続かないようです。第三章始まります!