BEAST BLOOD   作:ruemtrnmdxxx

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灰谷から呼び出された凛馬は、自分が過激組織「純血主義者」に狙われている事実を知らされる。
平穏な学園生活の裏で、新たな戦いの気配が動き始める。


48話 警告

6人は昼食を終え、教室へ戻ってきた。凛馬とアオが並んで歩く姿に、クラスメイトたちが気づき始める。

「あれ?紅葉の弟君と森下さん……なんか雰囲気違くない?」

「マジだ。手とか繋いでるし……もしかして付き合ってんの?」

ざわざわと教室内に噂が広がり始める。視線が二人に集まった。

「あ……み、みんな見てる……恥ずかしい……」

アオが凛馬の袖を掴み、俯く。

「あはは、もう噂広まってるね〜。まあ、隠すつもりもないでしょ?」

コハクが肩をすくめる。

「凛馬とアオはちゃんと付き合ってるんだから、堂々としてていいにゃ!」

ミケが胸を張る。

「……まあ、どうせすぐ全校に広まるだろうな」

ヒョウカが静かに言った。

「お二人とも、周りの目は気にしなくて大丈夫ですよ」

ミナが優しく微笑む。

その時――

「失礼します。紅葉凛馬君、おるか?」

教室の空気が、わずかに変わった。

灰谷が、扉の前に立っていた。

「……灰谷さん?」

凛馬が立ち上がる。

「ああ。少し話ある。今、時間ええか?」

普段より低い声だった。

「……はい」

「凛馬……?」

アオが不安そうに見上げる。

「大丈夫。すぐ戻るよ」

凛馬はアオの頭を軽く撫でてから、灰谷の後を追った。

 

廊下。昼休みの喧騒が遠ざかり、静けさが落ちる。

灰谷はしばらく黙ったまま歩き、人気のない場所で足を止めた。

「……単刀直入に言うで」

振り返った灰色の瞳は、真剣そのものだった。

「君の能力測定結果についてなんやけどな、組織から連絡が来た」

「組織……?」

「ああ。君の規格外の数値と――五種族混血いう特異性や」

一度、周囲を確認する。そして声を落とした。

「『純血主義者』いう組織、聞いたことあるか?」

凛馬は首を振る。

「混血を否定してな。純血種族だけが正しい世界や言うてる過激派や。……まあ、簡単に言えば危ない連中やな」

空気が冷える。

「君の存在はな、あいつらにとって――」

灰谷は一瞬言葉を選び、

「脅威であり、利用価値でもある」

と言った。

凛馬の表情が引き締まる。

「接触してくる可能性が高い。警告や。気ぃつけや」

凛馬は静かに息を吸った。そして――

「もし俺の大切な仲間や家族に手を出すなら」

視線をまっすぐ上げる。

「俺の全存在を賭けて戦います」

灰谷の目が、わずかに見開かれた。

「……本気やな」

小さく息を吐く。

「せっかく今、ええところやろうに……気の毒やな」

ぼそりと漏れたその言葉は、教師ではなく大人の声だった。

「でもな。一人で背負うな。相手は組織や」

「……はい」

「お前には仲間おるやろ。あの五人も含めてな」

灰色の狼耳がわずかに揺れる。

「これ、俺の連絡先や。何かあったらすぐ連絡しいや」

連絡先が書かれた紙片を渡す。そして少しだけ声を落とした。

「それと……森下くんのことなんやけどな」

凛馬が息を止める。

「混血の君と関わっとる時点で、彼女も標的になる可能性ある」

凛馬の拳が静かに握られた。

「……絶対に、守ります」

灰谷は小さく頷いた。

「ええ顔や。ほな戻り。……大事にしいや」

凛馬は静かに頭を下げ、教室へ戻っていった。

――その背中を、灰谷はしばらく見送っていた。

「……ほんま、ほぼ普通の学生やってんぞ」

誰にも聞こえない声だった。

 

その頃――

純血主義者のアジトでは壁一面に並ぶモニターが、青白い光を放っていた。

画面には――学園の廊下、教室、屋上、校門。

複数の監視映像が同時に映し出されている。

端末を操作していた獣人が、淡々と報告した。

「学園内部ネットワーク、侵入完了しました」

別の研究員が笑う。

「王立学園の防壁も、この程度か。監視カメラのハッキングなど容易いな」

映像が切り替わる。

そこに映ったのは――

灰谷と凛馬の会話。

『俺の全存在を賭けて戦います』

音声が部屋に響く。

そして、低い声。

「……全存在、か」

巨大な椅子に座る男が、ゆっくりと顔を上げた。

それは、純血主義者の長だった。

「感情で動く個体か。予測通りだな」

部下が資料を差し出す。

「対象コード《R-01》。混血安定率、理論値を逸脱しています」

男は映像を見つめたまま言う。

「恐怖ではなく、守護本能で力が伸びるタイプ……厄介だ」

指が机を軽く叩く。

「排除しますか?」

「いや、観察する」

即答だった。

画面に凛馬のデータが次々表示される。

「壊すには惜しい」

男の瞳が細まる。

「下位執行員を派遣しろ。接触任務だ」

「了解」

通信が走る。その横で別の画面が表示される。

《監察官:灰谷》

《位置情報:取得失敗》

研究員が眉をひそめる。

「灰谷の追跡が不可能です。位置が固定されません」

男は興味なさそうに言った。

「放置しろ」

「ですが――」

「奴は“消える側”の人間だ。時間の無駄だ」

そして再び凛馬の映像を見る。教室へ戻る背中。

「幸福の直後が、人は最も脆い」

静かに命じる。

「試してみろ。混血がどこまで壊れずにいられるか」

モニターが暗転した。




最後まで読んでくださりありがとうございます!
次回、六人は初めて“脅威”と向き合うことになります。
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