「凛馬……!おかえり……大丈夫……?」
アオが心配そうに凛馬を見上げる。
「ああ、大丈夫」
凛馬は安心させるように、アオの頭を優しく撫でた。
「……何の話だったんだ?」
ヒョウカが小声で尋ねる。凛馬は少し周囲を見渡してから答えた。
「……後で、みんなに話す。放課後、屋上に来てくれないか?」
「……凛馬?何かあったのにゃ?」
ミケが不安そうに耳を伏せる。
「大丈夫。ちゃんと説明する」
「……わかった。放課後ね」
「私たちも一緒です」
五人が静かに頷いた。
凛馬は――自分の大切な人たちを守るため、覚悟を決めていた。
放課後。六人は屋上に集まっていた。夕日が校舎を赤く染め、風が静かに吹き抜ける。
凛馬は一度深呼吸し、灰谷から聞いた話をすべて伝えた。
「どうやら俺の存在が、『純血主義者』っていう組織に狙われてるらしい」
空気が静まり返る。
「……純血主義者……」
アオの表情が曇る。琥珀色の瞳に不安が浮かんだ。
「凛馬……それって……危ないってことにゃ……?」
ミケの猫耳が心配そうに下がる。
「俺一人の問題ならいい。でも……あいつらは手段を選ばないらしい。もう俺の周りも調べられてる可能性がある」
凛馬は少しだけ言葉を選んだ。
「……つまり、アオが恋人だってことも、もう知られてるかもしれない」
「……!」
アオの手がわずかに震える。
ヒョウカが腕を組み、冷静に口を開いた。
「……標的はお前だけじゃないってことか」
「ああ、そうかもしれない」
短く答える。
コハクが真剣な顔になる。
「じゃあさ、私たちも危ないってこと?」
「可能性はある……」
屋上に重い沈黙が落ちた。
その時――
アオがそっと凛馬の手を握った。
「……僕は……大丈夫だよ」
震えながらも、笑おうとする。
「凛馬が守ってくれるって……信じてるから……」
凛馬の胸が痛んだ。
「でも……無理だけはしないでね……?」
凛馬は小さく頷き、アオを軽く抱き寄せた。
「……ごめんな」
「謝らないで……」
そのやり取りを見て、ミケが一歩前に出た。
「凛馬、勘違いしちゃダメにゃ」
強い声だった。
「守るのは一人じゃないにゃ。私たちも一緒にやる」
「そうそう!親友でしょ?一人で背負うの禁止だからね!」
コハクが肩を叩く。
「……俺も同意見だ」
ヒョウカが静かに言う。
「お前一人に任せるつもりはない」
ミナも穏やかに微笑んだ。
「私たちは皆さんの味方です。どんな時でも」
アオが涙目になりながら皆を見る。
「……ありがとう……」
夕日が六人を包む。
笑い合う声。変わらない距離。守りたかった日常が、確かにここにあった。
「……ありがとう、みんな」
凛馬は静かに言った。
五人は当たり前のように笑った。
けれど――
凛馬はほんの少しだけ視線を伏せる。
(でも。)
胸の奥で、別の声が響く。
(絶対に……巻き込ませない。)
純血主義者。組織。迫り来る戦い。
全部、自分が背負えばいい。
この五人には、これまで通り笑っていてほしい。
危険なんて知らないまま、日常を過ごしていてほしい。
(俺が全部、止める。)
誰にも聞こえない誓いを、胸の奥で静かに結ぶ。夕焼けの光が、その決意を優しく隠した。
覚悟は――もう決まっていた。
最後まで読んでくださりありがとうございます!
日常は何も変わらないように続いていきます。けれど影はすでにすぐそこまで来ています。