BEAST BLOOD   作:ruemtrnmdxxx

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久々に仲間たちと過ごす穏やかな時間。
だがその裏で、凛馬の中に“何か”が芽生え始めていた。


54話 日常の裏で

朝。カーテンの隙間から差し込む光。

アオがゆっくり目を覚ます。

「……ん……」

見慣れた天井。自分の部屋だと理解するまで、数秒かかった。そして視線を横へ向ける。

「……凛馬?」

凛馬は椅子に座ったまま眠っていた。手を、ずっと握ったままで。

アオは小さく笑う。

「……ありがとう」

そっと指を握り返す。その温度が、確かにここにいる証だった。

その時——

ピンポーン。

「アオー!凛馬ー!来たにゃー!」

勢いよく玄関が開き、ミケが大きな紙袋を抱えて飛び込んできた。

「ちょ、ミケちゃん声大きいよ……」

アオが苦笑する。

「元気そうでよかったにゃ!」

後ろからコハク、ミナ、ヒョウカも入ってくる。

「差し入れ持ってきたよー!」

「病人にケーキ五個はどうかと思いますが……」

「糖分は元気出るからにゃ!」

空気は一気にわちゃわちゃする。部屋が賑やかになった。

凛馬はアオの横に座ったまま、少しだけ距離を詰める。

「寒くないか?」

「寒くないよ」

「水いるか?」

「さっき飲んだよ」

「毛布もう一枚――」

「凛馬。ママみたいにゃ」

ミケが即ツッコミを入れた。部屋が笑いに包まれる。

アオも小さく声を上げて笑った。その笑顔を見て、凛馬は少しだけ肩の力を抜く。

「過保護すぎだってー」

コハクが肘でつつく。

「昨日あれだけ暴れた人とは思えないね?」

「まぁ……暴れたけど……」

部屋が少し静かになる。ミケが空気を読まずに笑う。

「もはや独壇場だったにゃね」

凛馬は苦笑する。

「……だから、その言い方やめろって……」

強くはない。でも軽くもない声。

「笑い話にするようなもんじゃないから」

その一言で、場の空気がほんの少しだけ引き締まる。アオがそっと凛馬を見る。

「……でも、守ってくれたんだよ」

凛馬は少しだけ視線を逸らした。

「……ああ」

ヒョウカだけは、ずっと笑っていなかった。凛馬の視線が、一瞬だけ窓の外へ向く。

車のドアが閉まる音。遠くの物音。ほんの些細な音に、反応が速い。

(……警戒してる)

“戦闘後の兵士の様”とヒョウカは思った。

アオが立ち上がろうとして、少しふらついた。

「大丈夫?」

コハクが自然に腕を掴む。その瞬間――

凛馬の視線が跳ねた。空気が、わずかに張り詰める。

瞳の奥に、一瞬だけ赤が滲んだ。ヒョウカの目が細くなる。

(……今のは)

凛馬が一歩踏み出しかけて――止まる。

「……っ」

胸元を押さえた。数秒呼吸が乱れる。

そして——

「……いや、ちょっと待て」

自分で混乱した顔になる。

「なんだ今の……」

赤みが引き、いつもの瞳に戻る。ミケが首を傾げる。

「凛馬?どうしたにゃ?」

「いや……別に……」

言いかけて、コハクとアオの距離を見る。

数秒沈黙してから。勘違いを理解した。

そして——

「……あー……いや違う違う違う!」

急に焦り出した。部屋の全員がきょとんとする。

「今のそういうんじゃないからな!?」

「え、なにが?」

コハクがニヤッと笑う。

「いやだからその……取られるとかそういう話じゃなくて!」

ミケが吹き出す。

「嫉妬にゃ?」

「違う!……いや違わなくもないけどとにかく違う!!」

「どっちなのさ!」

部屋に笑いが広がる。

アオも思わず笑う。

「凛馬、顔真っ赤だよ」

「……うるさい」

凛馬は視線を逸らした。少し黙ってから、小さく呟く。

「……なんか、勝手に体が動きそうになっただけだ」

軽く言ったその一言。ヒョウカだけが反応した。

(……本能、か)

さっきの一瞬。あれは怒りでも嫉妬でもない。

守るための反射だった。

ヒョウカは何も言わず、視線を落とした。

 

夕方。みんなが帰る時間になる。

「無理すんなよ」

ヒョウカが凛馬にだけ聞こえる声で言う。

「……何の話だ」

「自覚ないなら、それが一番厄介だ」

凛馬は眉をひそめる。

「いや、何でもない」

ヒョウカはそれ以上言わなかった。ドアが閉まる。

部屋が静かになる。アオが小さく笑う。

「みんな、優しいね」

「ああ」

凛馬は頷く。その横顔を見ながら、ヒョウカの言葉が胸の奥に残る。

 

――その頃。高層ビルの最上階。窓の外には、夜景が広がっている。

「目標は?」

「確認しました。紅葉凛馬――暴走段階に入っています」

金色の瞳が、静かに細められる。

「やはりな」

獅子王レオンが立ち上がる。

「幹部は無能だったが……少年は違う」

わずかに口元が上がる。

「誇りを賭けるに値する相手だ」

夜景を背に、影が伸びる。

「準備を整えろ」

金色の瞳が、静かに光った。

 

平和と思えたその日常の裏で。確実に、何かが動き始めていた。

 




最後まで読んでくださりありがとうございます!
ほのぼのした空気は良いですね。ですが凛馬の中では何かが引っかかっている様です。何事もないといいですが……
次回、レオン側に動きがありそうです。
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