BEAST BLOOD   作:ruemtrnmdxxx

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圧倒的な力を持つ王、獅子王レオン。その一撃を受けながらも、凛馬は戦いを“理解”し始める。
そして仲間達の連携によって、戦況は傾き始める。


59話 前哨戦

夕焼けが校門を赤く染めていた。

その前で、凛馬と獅子王レオンが向き合う。

誰も声を出さず、空気だけが重かった。

そしてレオンが静かに言った。

「来い」

次の瞬間。地面が弾けた。

迷いのない踏み込みだった。そして間合いを一気に潰し、拳を振り抜いた。

「――ッ!!」

完璧に捉えた。そう確信した瞬間。

――手応えがなかった。拳が空を切っていた。

「……な」

背後から声が落ちる。

「速いな」

凛馬の瞳が見開かれる。振り向くより先に――

ドォン!!

体に重い衝撃が走る。

(……!?重い!!)

身体が地面を滑っていた。肺の空気が強制的に吐き出される。

息を整える暇もなく、二発目が飛ぶ。

凛馬が身体を捻るが、かすめた風圧だけで頬が裂けた。

「反応は悪くない」

レオンは膝蹴りを繰り出した。凛馬は体勢が悪く、その一撃を躱わせなかった。

ドゴッ!!

腹に衝撃が走る。視界が白く弾ける。

凛馬の身体が地面へ叩きつけられた。レオンがそこに堂々と立っていた。

「だが、経験が浅い」

夕焼けの光が長い影を作る。凛馬が歯を食いしばって起き上がる。

(動きが……全く見えなかった……!)

 

一方その頃——

凛馬の咆哮で実働隊の手が止まっていた。目が揺れ、本能的な恐怖が身体を硬直させる。

「な、なんだ今の……!」

「マズい……足が……!」

その瞬間——

拘束の力が緩んだ。その隙にヒョウカが叫ぶ。

「今だ!全員腕を引け!」

ミケが腕を引き抜く。

「外れたにゃ!」

コハクが肘打ちで距離を作る。

「離れなさいよ!!」

ミナが後退しながら状況を確認する。

「全員、動けます!」

ヒョウカが一瞬で見抜く。

(コイツら、俺らでもやれる……)

「……いける」

敵が踏み込む。

「立て直せ!数で押さえろ!」

それに対しミケが前へ出た。

「来るにゃ!」

拳を躱し、尻尾で足払い。一人が転んだ。

「なっ……速い!?」

コハクが笑う。

「ナイス!」

コハクの回転蹴りで、もう一人がよろめく。

「なんだこれ……!?ガキの動きじゃないぞ!」

ミナが後方から叫ぶ。

「右、死角です!」

ヒョウカが割り込み、肘打ち。連携が噛み合う。

さっきまでとは違う。訓練室で作った“形”が、戦場で動き始めていた。

「押し返されてる……!?」

「隊列を崩すな!」

ミケの目が輝く。

「……やれるにゃ!」

敵は強いが――届かない相手ではなかった。

 

凛馬がゆっくり立ち上がる。

血が頬を伝い、呼吸は荒かった。だが視線だけは、レオンから外れない。

(……速い。でも――)

頭の中で、さっきまでの動きが繰り返される。

踏み込み。肩の入り。拳の軌道。

そして――

振り抜いた後、ほんの一瞬だけ重心が流れていた。

(賭けるしかないな)

レオンが歩み寄る。

「まだ立つか」

拳が構えられる。だが凛馬は動かない。

ヒョウカが叫ぶ。

「避けろ!」

だが凛馬は――前へ出た。レオンの拳が一直線に振り下ろされる。

(……外せば、生き残れる。でも——)

凛馬は避けない。額で受けた。

ドォン!!

鈍い衝撃音。血が弾けた。視界が揺れる。

だが、倒れない。

レオンの拳が振り抜かれた、その瞬間——

確かに重心が僅かに流れる。

その刹那、凛馬の目が光る。

「……見えた」

凛馬も踏み込み、腰を捻る。全身の力を一点へ。

「お前も貰っとけ!!」

渾身の拳。

ドォォン!!

レオンの腹部へ直撃。衝撃が空気を震わせた。

レオンの身体が――

半歩、下がった。夕焼けの光が揺れる。

「……肉切らせて」

凛馬が血を吐きながら笑う。

「骨断つってな……」

レオンが腹に手を当てる。静かに息を吐く。

黄金の瞳が細まる。

「……ようやく、戦士になったか」

その時初めてレオンは、戦士を見る目をした。

 

一方その頃——

実働隊との戦闘は続いていた。だが、それは肉弾戦ではなかった。

「来るにゃ!」

ミケが半歩だけ下がる。振り下ろされた拳を真正面で受けない。手首を添え、軌道を逸らす。

相手の体勢がわずかに崩れるその隙に、横へ抜けた。

「当たらないにゃ」

「こいつちょこまかと!?」

コハクが滑り込む。真正面からは行かない死角へ回り、足元を軽く払う。

倒そうとはせず、バランスだけを崩す。

「はいストップ〜、突っ込みすぎ!」

敵がよろめく。

ヒョウカが静かに前へ出る。最小限の動き。腕を絡め、進行方向だけを封じる。

(押すな。流せ。力で勝てないなら、崩せばいい)

力を使わない制圧。

ミナが後方から声を飛ばす。

「次、左から来ます!」

その声で全員が位置を変える。まるで最初から決まっていたように。

攻撃は当たらない。だが倒しきれもしない。戦場は拮抗していた。

「なんだこいつら……!」

「さっきと動き違うぞ!」

コハクが後退した、その時。

校門脇の地面に黒いケースがある事に気づいた。

訓練室で見た、あの形。

(……あれ)

その瞬間、記憶がよぎる。

“もしもの時はな、校門の脇、見とき”

灰谷の軽い声。

(……先生、そういうことね)

コハクの目が細まる。戦いながら視線を送る。

凛馬はレオンと向き合っている。ボロボロで、それでも立っている。

ほんの一瞬、凛馬と視線が交わる。

言葉はないが、それだけで伝わる気がした。

(いるよね、アレ)

凛馬の目が、ほんの僅かに動いた。

次の瞬間、コハクはわざと派手に吹き飛ばされるフリをした。

「うわーっ!」

転がる勢いのまま、ケース方向へ。実働隊が一人、追う。

「逃がすか!」

コハクが立ち上がり、笑う。

「ついてこないでよ〜!」

蹴りで距離を作る。少しずつ、ケースへ近づく。

ヒョウカが戦況を読む。凛馬は押されている。仲間は善戦しているが、長くは持たない。

(時間が足りないな)

視線がミナへ向く。

「ミナ!」

「はい!」

「警察を呼べ!」

一瞬、動きが止まる。

「で、でも……」

「ここは俺たちで持たせる!」

ミケが頷く。

「ミナ!お願いにゃ!」

ミナの胸が締め付けられる。

(もし、置いていってしまったら——)

だがその時、凛馬が吹き飛ばされるのが見えた。

「……ごめんなさい」

小さく呟く。だが目は強い。

「必ず戻ります!」

踵を返し、走り出す。

実働隊の一人が追おうとするが、ヒョウカが割り込む。

「行かせない」

ミケが前へ出る。

「絶対時間稼ぐにゃ!」

コハクの指先が、ついにケースに触れた。

カチリ。ロックが外れる音。双剣が夕焼けに光る。

コハクが叫ぶ。

「凛馬!」

ケースから双剣を掴み、思いきり投げる。双剣は回転しながら空を裂いた。

実働隊が気づく。

「止めろ!」

ヒョウカが割り込む。

「触んな!」

ミケが滑り込み、足払いで進路を塞ぐ。双剣が空を舞う。

一瞬、世界の音が遠のいた。

レオンの瞳がわずかに動く。凛馬が踏み込む。

片膝をついた状態から跳ぶ。

手を伸ばす。

カシャン――

両手に重く、指に馴染む感触を覚えた。そして、

双剣が握られた。

凛馬が血を垂らしながらゆっくり立ち上がる。

夕焼けがその背を赤く染めた。

レオンが静かに構え直す。

「……ほう」

凛馬が剣を構える。荒い息のまま、笑う。

「今の俺は一味違うぞ」

夕陽が地平線に沈み始め、影が伸びる。

校門は完全に戦場へと変わっていた。




最後まで読んでくださりありがとうございます!
コハクのナイスプレーで、凛馬は双剣を手にしました。ここから巻き返せるのか?要注目です!
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