BEAST BLOOD   作:ruemtrnmdxxx

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戦いを終え、日常へ戻った凛馬たち。だが周囲の視線や自身の記憶は、完全には元に戻らなかった。
それでも少しずつ前へ進む中で、新たな“気配”が静かに近づいていた。



67話 白銀の転校生

凛馬たちがいつも通り教室へ向かうと、担任はどこか深刻そうな顔で教壇に立っていた。

「みんな、席について。今日は特別なお知らせがあります」

ざわめきが、すっと静まる。先生は一度、言葉を選ぶように視線を落とした。

「来週から、この学校に転校生が来ます。彼女は……少し特別な事情を抱えています」

教室の空気が揺れる。

「転校生にゃ?」

コハクが耳をぴくりと動かす。

「ええ。詳しくは来週説明しますが……皆さん、温かく迎えてあげてください」

その“温かく”という言葉に、妙な重みがあった。

「特別な事情……?」

ミナが小さく呟く。

「……また何か起こりそうだな」

ヒョウカが窓の外を見ながら言う。

凛馬は、胸の奥がわずかにざわつくのを感じていた。

不安と、そしてわずかな予感。

――何かが、動く。新たな物語が、静かに近づいていた。

 

ある日の放課後。凛馬は、なぜか校門の前で足を止めた。

誰もいないはずなのに、背中に視線を感じる。

(……守る)

理由のない言葉が、胸に浮かんだ。自分でも意味が分からない。

だが、確かに“何か”が近づいている感覚がある。

 

その夜。灰谷から珍しく連絡が入った。

『来週の転校生の日、少し警戒を強めた方がええかもな』

「警戒って、何かあるんですか」

『まだ断定はでけへん。ただ、妙な動きがありそうってだけや』

電話越しの声は、いつもより低い。

凛馬は空を見上げた。月が、薄く欠けている。

(今度は俺たちが守るって……何をだ?)

まだ会ってもいない誰かなのか、まだ知らない存在なのか。

胸の奥の鼓動は、消えなかった。

 

そして、校舎の屋上。遠くから、ひとつの影が学校を見下ろしていた。

「……保護、か」

低い声。灰谷は携帯端末を閉じる。

「間に合うとええな」

 

一週間が過ぎ、転校生が来る日。教室は朝から落ち着きがなかった。

「わくわくするにゃ! 新しい友達にゃ!」

コハクが尻尾を揺らす。

「でも、“特別な事情”って何だろうね」

ミナは少し心配そうだ。

「……面倒ごとでなければいいが」

ヒョウカは静かに呟く。

「凛馬、大丈夫? 最近また疲れてない?」

アオが心配そうに顔を覗き込む。

「ああ、大丈夫だよ。」

そう答えながらも、凛馬の胸の奥には、理由のわからない鼓動があった。

その時――教室のドアが開く。

「みんな、席について」

担任が入ってくる。その後ろに、一人の少女が立っていた。

白銀の髪。透き通るような白い肌。淡い光を宿した青い瞳。

そして――小さな白い角が二本。

教室が、完全に静まり返る。

「今日から皆さんのクラスメイトになる転校生を紹介します」

少女が一歩前に出た。その動きには、無駄がなかった。

「……初めまして。白雪 ツキノと申します。龍族です」

空気が張りつめる。

「龍族にゃ!?」

コハクが思わず立ち上がる。

「え……龍族って、本当に存在したんだ……」

コハクが興味津々の目で見つめる。

「……珍しいな」

ヒョウカの視線が鋭くなる。

ツキノは静かに頭を下げた。

「龍族は……数が少なくて、普段は人里離れた場所で暮らしています。でも、うちは……事情があって、こちらでお世話になることになりました」

ほんのり柔らかい言い回し。けれど声には、揺るぎない芯があった。

担任が続ける。

「白雪さんは特別な事情で保護対象となっています。皆さん、どうか温かく迎えてあげてください」

“保護対象”。その言葉に、凛馬の指先がわずかに強ばる。かつて自分もそうだった。

「席は……紅葉さんの隣ですね」

月乃が歩いてくる。白銀の髪が光を弾く。

凛馬の隣で止まり、目が合う。

その瞬間——

月乃の青い瞳が、大きく見開かれた。

「……あんた……」

凛馬がわずかに眉を寄せる。

「……?」

月乃は、すぐに表情を整えた。

「……いえ。何でもありません。よろしくお願いします、紅葉さん」

静かに席に座る。だが、その横顔はどこか緊張している。

「凛馬、知り合い……?」

アオが小声で尋ねる。

「いや、初めて会う」

「でも、何か反応してたにゃ?」

コハクが身を乗り出す。凛馬は答えられない。

ただ――

胸の奥で、赤い鼓動が、ほんの一瞬だけ強く脈打った。

(……なんだ、今の)

月乃は窓の外を見ている。遠くを見る目。懐かしむようで、警戒するようで――

まるで、戦場を知っている者の目だった。

龍族、白雪ツキノ。保護対象。

彼女は、一体何者なのか。教室の中に、まだ誰も気づいていない火種がある。

それだけは、はっきりしていた。

 




最後まで読んでくださりありがとうございます!
突如現れた転校生、白雪ツキノ。彼女が来た理由とは?そしてどのように凛馬達と関わるのか?要注目です。
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