BEAST BLOOD   作:ruemtrnmdxxx

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突如現れた転校生、白雪ツキノ。
どこか距離を感じさせる彼女は、特別な理由を抱えてこの学園にやってきた。
何気ない昼休み、屋上での出会い。その瞬間、ツキノは凛馬の“異質”に気づく。



68話 血が鳴る時

昼休み。屋上へ向かう階段を上がる途中。

「今日も屋上で食べるにゃー!」

ミケが先頭を歩く。その後ろを凛馬たちが続く。

扉を開けた瞬間、風が吹き抜けた。その中に――

すでに一人、立っていた。白銀の髪が揺れる。

「……あ」

ツキノが、屋上の端に立って空を見ていた。一瞬、全員の足が止まる。

ツキノが振り返る。

「……ここ使うん?」

コハクがすぐに笑う。

「使う使う!いつもここだよ!」

ミケがずいっと前に出る。

「一緒に食べるにゃ?」

ツキノは少しだけ考えて――

「……邪魔やなければ」

その言い方は控えめなのに、どこか距離を感じる。

ヒョウカが一歩だけ前に出る。

「好きにしろ」

それが許可の代わりだった。ツキノは小さく頷き、少し離れた場所に腰を下ろす。

風が、間を流れる。

凛馬はその距離を一瞬だけ見て――

何も言わなかった。

 

ミケがパンをかじりながら言う。

「龍族って珍しいにゃ!初めて見たにゃ!」

ツキノは小さく笑う。

「珍しい言われるんは、慣れてるべ」

穏やかだが、どこか距離がある。

ヒョウカが問う。

「里を出た理由は?」

ツキノの視線が遠くなる。

「……襲われた」

空気が止まる。今度はアオが質問する。

「えっ……誰に?」

「分からんべ。ただ……龍族を狙うもんは、昔からおる」

淡々とした声。それが逆に重い。ツキノが凛馬を見る。

「紅葉さん」

凛馬とミケが同時に振り向く。

「え?」

「ん?」

声がハモる。一瞬、沈黙。

コハクが吹き出す。

「あはっ!二人とも同じ苗字だもんね!」

ツキノが固まる。

「……あ」

ヒョウカが腕を組む。

「ややこしいな」

ミナがくすっと笑う。

「確かに、紛らわしいですね」

コハクが悪ノリする。

「どっちの紅葉かな〜?」

ミケも乗る。

「選んでいいにゃ?」

凛馬がため息。

「おい……」

ツキノが凛馬を見る。

「……凛馬さん?」

「「おお!!」」

「私じゃなかったにゃ!」

ツキノは真顔。

「ややこしかったべな……名前は混ぜたらあかん」

そして、ぽつり。

「血が、違うから」

空気が一瞬で締まる。ヒョウカが目を細める。

「どういう意味だ?」

ツキノは凛馬から目を逸らさない。

「あんた混血、だべ」

「ああ」

「龍族は……血の“揺らぎ”が見えるべ」

「揺らぎ?」

「血には色と音がある。普通はひとつや」

ツキノの瞳が静かに光る。

「でも凛馬さんは、重なってるべ」

凛馬の鼓動が跳ねる。

「五つの流れが、混ざらず絡んどる」

風が強まる。ツキノは胸に手を当てる。

「目で見たんやなくて……響いた」

凛馬の胸が、どくりと鳴る。

「初めて目が合った時、血が鳴ってたべ」

少しだけ恥ずかしそうに。

「やから、“あなた”って言うてしもたべ」

コハクがぽかんとする。

「すごい……?」

ツキノは続ける。

「龍族には古い言い伝えがあります」

白銀の髪が風に揺れる。

「“五つの血が交わる時、時代は揺らぐ”」

「それが誰かは分かりません。でも」

凛馬を真っ直ぐ見る。

「うちは、あんたに会う必要があると聞いたべ」

「守るために?」

アオが少し強い声で言う。ツキノは少し考える。

「……守るかどうかは、まだ分からへん」

「え?」

「凛馬さんは、守られる人やない」

鼓動が跳ねる。

「守る側の人やろ?」

その言葉が、凛馬に深く届いた。

「それでも……危うい」

角が、ほんの一瞬だけ光る。凛馬だけが気づく。

「凛馬さんの血は、揺れが大きい。波が荒い」

風が強く吹く。

「普段は抑えとる。でも、守ろうとした時……弾けよる」

全員が息を呑む。

「それは強さや。でも、一歩間違えたら自分も壊す」

凛馬の指先が震える。ツキノは静かに言う。

「せやから、守るというより……止める」

凛馬の目が揺れる。

「血が鳴ったら、分かる」

凛馬は理解する。

(あの時の鼓動……)

ツキノは淡々と言う。

「怖がらんでええ。壊れそうになったら、隣におる」

宣言だった。ヒョウカが問う。

「お前は……戦えるのか?」

ツキノは頷く。

「龍族は元素を操れる。必要なら、凍らせるべ」

ミケが目を輝かせる。

「ほんとに!?見たいにゃ!」

「えー、でも危ないべ?」

コハクも乗る。

「ちょっとだけ!」

ツキノは少し困る。

「……小さいやつだけだべ」

手をかざす。空気が一瞬、冷える。足元に透明な結晶が広がる。

その中心に、小さな氷の花が咲いた。誰もすぐに声を出せない。

ミケが叫ぶ。

「すごーいにゃ!!」

コハクが目を丸くする。

「こんな一瞬で!?」

アオが息を吐く。その息は白かった。

「綺麗……」

ヒョウカが冷静に見る。

「精度が高い」

ミナは氷ではなく、ツキノを見る。

「……優しい氷ですね」

ツキノが首を傾げる。

「優しい?」

「壊すための氷じゃない。守るための力」

角が淡く光る。ツキノは少し視線を逸らす。

「……言われたことないべ」

ミナが微笑む。

「少し、震えてましたよ」

コハクが慌てる。

「寒いから!?」

「絶対違うにゃ」

ツキノは小さく息を吐く。

「……ちょっと緊張してただけ」

「もっと大きいのもできるにゃ!?」

ツキノがほんの少し照れる。

「学校壊れるから、却下だべ」

「照れてる!」

「照れてないべ」

でも、笑っている。凛馬は思う。

(こいつ、強い……)

そして。

(……でも、無理してる)

風が吹き、氷の花がきらりと光った。

 




最後まで読んでくださりありがとうございます!
ツキノの氷の力、そして“血を読む力”。凛馬の中にあるものに、彼女はもう気づいています。
守るのか、止めるのか――
その距離感が、これからどう変わっていくのかも見どころです。
反応いただけるととても励みになります!
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